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169.魔の森の産物。

またカレーがない話してる……

「そういえば、最初に此処に来た時に、胡椒がどうとか言ってた気がするんだけど」

 ふと思い出したので、夕飯の席で聞いてみる。


「おう!胡椒とバナナとマンゴーっぽい奴拾ってきたぜ!簡易鑑定しかしてねえけど、スキルはちゃんと動いてたから多分イケる奴のはず!」

 にかっと笑ってそう返事をしてくれるサーシャちゃん。

 そして、実際に食後にテーブルに並べられた品は、ランディさんの鑑定でも完全に胡椒とバナナとマンゴーでした。バナナを一本ずつ皆で分けたけど、甘くておいしゅうございました。


「成程、魔の森に存在していたんだな、胡椒……まさかターメリックやカルダモンも存在するのだろうか……」

 一応カレーパウダーのレシピだけは知っているというランディさんが胡椒を凝視している。

 ちなみにカレーパウダーのレシピ自体はあたしも何故か知っている。いやほんとになんで知ってるのか謎なうえに、シエラ曰く、この世界に伝来してるレシピと、恐らく配合が同じだという謎。スパイスの固有名詞の翻訳違いがどちらかにあるらしく、完全に一緒かどうかは現物がないと判らない、とのことだけどね。

 唐辛子はあまり辛くない種類のものだけ、ハルマナート国にあるそうだけど、他のスパイス類が軒並みないんだという話は、前にカレーの話題になった時にランディさんが教えてくれた。コリアンダーとか熱帯系じゃないから、ありそうなものだけどなあ、でもあれだけじゃどうしようもないか……

 なお唐辛子、存在はしてるんだけどハルマナート国の人の口に合わんそうで、殆どがフラマリアとメリサイトに輸出されているそうな。どうしてそうなったし?

 まあカレーに関しては、恐らくもっと大きな、多分この三人にとっては違う意味で致命的な問題がありますけどね。


「いやでもどうせこの世界、お米がないでしょ」

 そうすっぱり言ってやったら、案の定、三人組が一瞬で絶望顔になってこっちを見た。


「え、あの本に書いてあった、カレーもコメもないって、実話、なんですかあ?!」

 真っ先に悲鳴を上げたのはワカバちゃんだ。そうか、君カレー好きなんだ。


「お米、ないんだ……」

 カレーには反応しなかったけど、カナデ君もしょんぼり顔だ。


「ねえのか……ちと難儀だな……ねーちゃんは大丈夫なのか?」

 サーシャちゃんは、何故かあたしの心配をしてくれる。


「ああ、あたしの元の世界にはカレーそのものがなかったからね……」

 そして、東の果てに住んでたおじいちゃんたちより上の世代とは違って、実は米飯がメジャーじゃない国で育ったあたしは、コメに特に思い入れはないので、そちらも然程気にはならない。まあそこは言わなくてもいいか。


「ちなみに蕎麦はあるわよ」

 と言ったら、今度はサーシャちゃんが蕎麦アレルギーなんだよなあ、と凹んだ。


「あー、アレルギーの類はどうだろうね。召喚だとそこらへんは病気扱いで、修正が掛かってなくなるみたいだけど。状態異常回復系の魔法がないから、じゃあ試すかって訳にいかないのが厄介ねえ」

 アレルギーはあたしの出身世界でもどうにもならない、対症療法でしか対応できない病だ。

 まあ原因物質にある程度触れてると確率で発症する、ってシロモノに対処はねえ……

 あたしの場合、アレルギーだけは一切発症したことがないから、今まで気にもしていなかったけど、そう言えば周囲の医療関係者はかなり神経質に気を遣ってくれてたなあ。

 なおこの世界の現地民の場合、あたしたちとはどうやら免疫のシステム自体が微妙に違うのか、アレルギー自体が存在しないらしい。花粉症の人とか羨ましがりそうな話ね。


「あー、どうだろな。そういや僕、この世界に来てから花粉症出てないけど……単に原因の植物がないだけ、の可能性はあるよね」

 カナデ君は花粉症だったのか。植物の種類を聞いたランディさんが、それは知らないなあ、と言ってたので、原因物質が存在しなくて出てないだけ、の可能性も捨てきれない。

 ランディさんの鑑定スキルは、異世界の物や名称に対しても、この世界に該当する同一の物がある場合は鑑定可能という、大概なチートだから、それがないと判定したなら、現在のこの世界には存在しない可能性が極めて高いのであります。

 普通の人もたまに鑑定技能を持ってることはあるけど、知ってるものしか判らないんだって。

 鑑定技能ってどうやったら生えるんですかねー?ちょっと気になるぞ。


《貴方の場合、書庫魔法の機能で鑑定もできてますから、今更技能は出ないと思います》

 あ!あー!そうだった!ティーシロップとか毒物とか検索ベース君が鑑定してくれてたわ!

 あの頃はいろいろそれどころじゃなかったからなあ……!

 でも検索ベース君の挙動は鑑定というより分析のほうが近いんだよねえ。正規の名称までは出てこないことが多いもん。そういう意味では真龍の鑑定スキル、割とガチヤバチートだと思います。


「しかしこの分量だと、個人で楽しんで終わりくらいだよなー。流石にあそこにそう何度もホイホイ出掛ける気にはならんぞ、俺でも」

 流石にサーシャちゃんも、魔の森はヤバい所、という認識にはなっているようだ。あそこホントに下手に入ると、最悪の場合瘴気汚染で自分が魔物化しますからね……


「育てるというのは無理なんですかね。胡椒って確か種子部分ですよね」

 ワカバちゃんがそう言うと首を傾げる。


「ん-、白胡椒が種子部分、あとは果実丸ごと処理で変わる感じだねえ、確か。ただ育てるにはそれなりの気温がないといけないから、どうだろうな」

 サーシャちゃんはそういう知識もあるのか、さらっと答えている。ちなみに持ち帰ったのは完熟果実で、赤い。


「残念ながら、この世界だと大半のエリアで温度が足りないわね。メリサイトの南部なら温度は足りるけど、今度は水がなくて、胡椒は育たないと思う。砂漠なのよねえ」

 これは以前調べたことがあるので、一応確定情報だ。胡椒って意外と水というか湿度が必要な植物らしいよ。


「おうふ、地味に厳しいなそれ……あーそうか、熱帯湿潤気候であるべきエリアが丸ごとあの魔の森なんだな……」

 サーシャちゃんが諦めの顔になる。ええその通りですよ。だから君が確保してきた植物が育つ場所が、恐らくはあのエリアの本来の気候なんでしょうね。


「そういうことだな。人間が住めるのはハルマナート国までだ。あそこは最南端でもせいぜい亜熱帯よりやや涼しい程度だからな。まあ雪は降らんから、加温栽培を試みるのはアリかもしれないな……?」

 あ、ランディさんが胡椒の誘惑に負けてる……加温栽培かー、でっかい温室を作る感じなのかしらね。いくら魔法で何とかなるとはいえ、コストがやばそう……


「まあ今後の検討課題だな!取りあえず収納の時間経過なしにしといてっと」

 そう言いつつ、出してあったあれこれを自分の収納魔法でしまうサーシャちゃん。


「正直、カレーよりお米がない方がショックだわ、僕……」

 カナデ君がすっかりしょんぼりしている。おにぎりー、なんて呟いてるから、もとからお米派だったようだ。


「そ れ な。って言いたくなっちゃうよねえ。うう、チキンライス食べたーい」

 ワカバちゃんも自分が食べたいものの話を始めた。危険な傾向ですよそれは!


「ってーとなにか、スシもねえんだな?!」

 サーシャちゃんも何かこだわりの食べ物があったようで、うへえ、という顔になった。


「残念ながら全部ないねえ!なお刺身は旨いのがあるぞ。成人したら酒のアテにするのもよかろうね、まあ君らが言うところのポン酒とやらもないんだがね!」

 ランディさんが煽りよる……多分自称勇者様の頃に仕入れた知識だろうなあこれ。


「やだよこの龍、的確に俺らの弱いとこ突いてきやがるよ……」

 更にげっそりした顔でサーシャちゃんがぼやく。


「ランディさん、未成年に酒の話振るのはやめましょうか!」

 にっこり笑ってランディさんのほっぺたをつまむ。流石にちょっとやりすぎだと思うんですよね!


「えぇ、だってこの世界的には君も含めて人族の十七歳って大体成人だろう?」

 ランディさんがほっぺをつままれたまま、普通に回答してくる。


「一番反応してるのが十二歳なんでアウトですねー」

 言葉と共に、むにっとほっぺたを引っ張る。意外と良く伸びますねあなたのほっぺ?知らなかったわ。


「カーラねーちゃん、つええ……」

 サーシャちゃんが呆れた顔になったので、程々でやめておくことにしました。まあ所詮じゃれてるようなものなので?

実はカーラさん所謂日本人じゃないんですよねえ。強いて言えば日系人かな?日本って名称自体がないんだけどね、元の世界。

あと正直に言うと鑑定より分析のほうがチートとしてはヤバい気がしないでもない。

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