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167.黒髪がいっぱい。

ひとり、ふたり、いっぱい!

「えー?清楚系美少女がユー君でとっぽいボーイがシングなの?逆じゃね?」

「「君が言うなー!ガチムチおっさんドワーフだったじゃん!」」

 ネカマネナベ疑惑に突っ込んだサーシャ嬢が、速攻で二人にツッコミ返されている。

 というか、ガチムチおっさんドワーフて。まあディギングマシンなんてキャラ名の時点で想定はすべきだった気はする。


「まあ言われてみれば身長だけはそのまんま?」

 カナデ君が自分達を見比べて、そう評する。カナデ君とワカバちゃんはほぼ同じくらいの身長だ。あたしより二人ともやや低いので、カナデ君が小柄なんだとは思う。

 サーシャちゃんはそれより頭ふたつ低い。年齢的にも多分だいぶんと下?


「俺まだ十二だからな!これから伸びるんだよこれから!」

 おおう、ガチのキッズだった!VRってあたしの世界だと、病人とかの特例事項以外は十五歳以下オコトワリだったんだけどなあ。


「えっ十二?年齢ガードどうしたんだよ、ディッギ」

「それを言うならシングも微妙じゃない?見た感じ同年代っぽいけど、VR履歴十年くらいって聞いたよね?」

「俺プロジェクト系の特例プログラム組だからー!で、シングはどうなんだよ」

「僕は病院からだから、まあ察して」

 わいのわいのと好き放題喋ってるあたり、うん、お子様っぽくていいねえ。あたしたち置いてきぼりだけど!


 まあ後で話を個別に聞いたら、カナデ君はあたし同様病弱で学習目的で早期VR許可、サーシャちゃんは逆に英才プログラムの一環、かつ早期段階からのVR環境順化の影響を調べる被験者、ということだったようだ。うん、ワカバちゃんが一番普通の子だった。


 そして全員で相談した結果、今後は本名側で呼ぶという流れになったそうだ。まあゲーム内の呼び方でも、皆それぞれ意外と違和感はなさそうなんだけど。


「しかしまあ、これだけ黒髪の方がいるのも壮観ですねえ」

 フレオネールさんが感心したように言う。これだけといっても三人だけどね、サーシャちゃんは赤毛だもん。

 と思ったら、近年の異世界召喚自粛の流れの結果、黒髪の人間って、存在自体がかなり稀になってきてるんだそうだ。異世界勢の黒髪も、この世界だとあんま遺伝しないんですって。そういや、あたし悪目立ちするからって、旅の前半、髪粉振ってたっけ……

 それに、今も異世界召喚を行う可能性のあるのは、最早ライゼルだけだ。アスガイアもサンファンも、召喚禁止以前に、その儀式の技術を持つ者が、死に絶えてしまったので、もう儀式魔法の再現すらできないのだという。そういやめっちゃ中央の人間が死んでたっけね、どっちも。

 旧アスガイアの生き残りって、結局神殿に居た人達のうちの二割くらい、百人弱と、王都に二、三百名くらいで、後はほぼ伝染病で落命したんだとか。対症療法くらいしかできない上に、飢餓で弱った人が多かったのが拍車をかけたということのようだ。

 生き残りの人数が少なすぎて、どうやら最終的には全員他国に難民として流出する形になりそうなんだって。まあ旧アスガイアの土地ってホントにまともに植物が育ちかねてる状態になってたし、土壌の汚染問題とかもあるから、生活はほぼ無理だよねえ。

 サンファンの方は、神殿にいた儀式魔法関係者は呪詛で全員死亡、残りはというと、王都にいたのでみーんな蛇に喰われた、そうな。なのでこちらも、もうどうしようもない。まあ流石にまたやれと提言されても許可なんてしないよ、とはグレンマール王の言だけど。


「魔王級でも黒髪になるとは限らない、という事は、異世界人の染まる基準も、現地の人族とは別だね?」

 ランディさんが三人とあたしを見比べつつ言う。そういえば種族ごとに閾値が違う可能性の話はランディさんにはしましたっけね、ある意味当事者だし。


「うーん、そちらの二人に関しては、どちらとも判断がつかないですね……」

 異世界人の黒は特別、だそうなので、断言はしづらいものがある。あたしの現状に関しては魔力の黒だと断言できるけど、そっちのほうがむしろ例外だ。


「髪の色?そういえば、本来の色より濃いような気はするな?」

 元々も、黒っちゃ黒って言える色だから、気にしてもいなかった、とカナデ君。そういえば彼の魔力称号はサーシャちゃんと違ってプラスが三つほどついてたから、そのせいか?


「私は元々こんな色でした」

 ワカバちゃんはそれが素の色だという。


「そういや、目立つからってブラウンに染めてたのに、戻ってるな?」

 逆に色が落ちた、というのはサーシャちゃんだ。そして、お互いの顔を見てから、あたしを見る三人。


「あたしのは魔力で染まってる色よ。多分、貴方たちより魔力が多いからね……」

 今のこの身体の本来の髪色は亜麻色だからね。まあそれを知っているのはイードさんとハイウィンさんだけだし、今後は他の誰に教える予定もないけれど。


「というか、おねーさん誰?そっちの白いにーちゃんが人間じゃないのは判ってるけど」

 サーシャちゃんがそう言うけど、ランディさん、目の前で化身でもしたんです?


(いや、流石に魔の森を化身で歩くのは無理があってな、小僧回収後速攻龍に戻って飛んだのだよ。話すなと言ってあったんだがなあ?)

 念話で言い訳キター。まあ今いる中で注意すべきフレオネールさんは、ほー、と興味があるのかないのか判りかねる相槌を一つ打っただけだ。子供たちはまあ今は、問題ないだろう。あとでこの三人組には、そもそもの、この世界の常識から順番に教えないとだめっぽいけどね!


「あたしまで人間じゃないみたいに言わないで貰えますかねー。貴方たちと出処が違うだけで、あたしもただの異世界人ですよ!」

 そう返事をしたら、え?という顔でフレオネールさんに見られたのですが、何故だ。


「カーラさん、異世界の方だったんですっけ、そういえば、聞いた、ような?」

 まさかの:出自を忘れられてた。確かライゼルの召喚被害者だって聞いてびっくり半分で二度見しまくってたじゃないですかー!!


「むしろフレオネールさんがそれを忘れてたのにびっくりですよ、あたしは」

 記録と記憶の魔法、超警戒してた頃が嘘のようですね!


「あ、あー!そんな話を、お伺いしましたね?!旅の間にすっかり忘れていましたが!」

 ああ、うん。旅の間にそれだけ距離が縮まったんだと思うことにしようか、うん。


「まあそれだけ君がこの世界によく馴染んだってことだよ、多分」

 ランディさん、そこで多分って付けないでくれますかねえ?絶対他に何か要らん事考えてそう。


「帰れないならこれを目標にする、のか……?」

 カナデ君がひとのことをこれとか言い出した!んもう!


「これを目標、は流石に如何なものかと思うが……いや、異世界人なんて大体トンデモなんだから、平常時がこのくらい、を目指すなら、むしろちょうどいい……?」

 そしてそれを聞いたランディさんがナチュラルに失礼な事を言い出している。

 とはいえ異世界人がだいたいトンデモ、の基準は彼の場合絶対あたしだけじゃないから、まあ許されるかな……功績を見る限り、自称勇者様も大概ヤバいレベルのトンデモだったに、違いないんだから。


「えぇ、俺らのっけからトンデモなんだ……」

 サーシャちゃんがうへえ、と顔に出ているけれど。


「その[真・トレジャーハンター]って称号、ワールドファースト系の中でも、充分トンデモですよ。隠せるなら隠すの推奨ですね。……あ、そういえば胡椒がどうって言ってた?」

 魔の森は熱帯系エリアになら、胡椒はあってもおかしくはないよね、実際には気候が滅茶苦茶だから、きちんと育ってるか怪しい疑惑とかあったけども。


「え?あ、ほんとだ、なんかそれ以外にも、いくつか称号が増えてるな。おねーさん他人の称号見えるんだ?チート?」

 サーシャちゃんが推定UIを見る仕草をしつつ、地味に失礼かましてくださる。あたしはゲームは健全プレイしかしたことないよ!


「いえ、この世界の仕様のほうよ。巫女系の素養がある程度あると、時々称号を見る技能が生えるんで、あたしのはそっち。地元民の方が今のあたしより得意な人が多いと思うわ」

 あたし自身のチートといえる物は、それとは無関係だからねえ。

 なおランディさんが称号を見るのは、巫覡系とは無関係に、真龍としての素養のひとつらしい。まあ素養としての出どころが違うだけで、できることは同じだと言ってたけど。


「えー。あれ、じゃあこれマジの異世界転移ってやつ?俺さっきのあれ、マジのガチで一つヘマったら死ぬとこだったの?」

 おおう、ゲームじゃない自覚がまだなかったよこの子!

 まあ確かにカナデ君はエルフの里である程度学んだあとだろうし、ワカバちゃんは龍の人たちから多少なりとも教わってそうだけど、サーシャちゃんが居たのは、人間なんて居ない魔の森だったんだもんね、しょうがないか。

冗談はさておき、レアはレアなんですよ、異世界召喚二百年以上やってない国の方が多いんだし。

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