164.久し振りの人、来襲!
はぁーい、皆のサクシュカお姉さんだよ!
同時更新強調月間最終日ですので新着からの方は一つ前からどうぞ。
ランディさんが来られない、という事態になったので、滞在は引き延ばし気味になっている。
まあフレオネールさん達が新しい家族になる為のお話し合いや、カナデ君の事もあるので、特に困りはしないのだけど。
とかのんびりしてましたらですねえ。
「カーラちゃあああああああああああああああん!待ってらんなくて会いに来た!!わ!!!」
サクシュカさんがやってきました。テンション高いなおい!?
「はい??サクシュカさん、なんでここに???」
流石に挨拶がすっ飛んだのは許して欲しい。あまりにも、唐突だったんですよ。アポなしだしさあ!取りあえず世話しないといけない子供もいないので、そのまま呼び出された応接用の部屋で話をすることにする。四人組は朝からフレオネールさんの手伝いをしようと纏わりついてたし、隠れ里エルフっ子達は今日はカナデ君と遊んでるので問題ない。
「言葉の通りよー!というかここから動いてない期間が流石に長いし、ランディ師からの報告も途絶えたしで、流石に様子見に来ないとダメかなって。カル君の後任もまだ決まらないから、私が来るしかないのよねえ」
そう一息に答えると、肩を竦めるサクシュカさん。
「ああ、まだなんですね……でしょうねえ……」
正直その任に向いてる人が、あのダンスィずの中にいる気がしません!
「カル君あれでも相当苦心と努力はしてたんだな、って思い知っちゃったわ……ラン君がああじゃなかったら、多分性格的には一番マシなんだけどなあ、今でも殆ど話せないから、どだい無理なのよねえ」
なんでも、ラングレイさんが異様に無口なのは、目の前で自然現象による事故で兄弟をロストしたショックがいまだに尾を引いてるせいなんだそうだ。ランディさんが以前教えてくれたレイクランさんの件ですね。
そして、恐らく今回のカル君の件で、またちょっと悪化してしまったらしい。いや待ってそういう繊細な人に情報系の仕事はさせちゃだめでしょう、胃に穴開くわよ!
「ラングレイさんの胃の健康の為にはその選択はどっちみちないと思います」
思わず結論だけ口からポロリしましたけど、あたしわるくない。
「うっ、そう、よね……」
サクシュカさんも思い至ったようで、がっくりした。もう外交官希望だという一番上の王女様育てたほうがいいと思うんだよね……気持ち色目が派手だけど……
「それにしても、報告は一応受けているけど、どうしてカル君をサンファンにあげちゃったの」
拗ねた顔を作って、サクシュカさんが突っ込んでくる。う、今来るか、それ。
「サンファンにあげたんじゃなくて、新王陛下個人に、ですかね……詳細は知らないんですけど、元々仲の良いご友人だったそうなので、カル君本人が手伝いたいって」
端的に、黒鳥の件は完全にすっ飛ばして話す。だってその情報は今要らないし。
正直、カル君は黒鳥には一切縛られてないと思う。むしろ縛られてるのは、黒鳥の方だ。気が付いたら、完全に立場が逆転?してた。どうやったらそうなるのかは、さっぱり判らんけど。
「あー、レガリアーナ育ちの人だって言ったっけ。王位に就いたのに神罰受けてないとかも聞いたけど、マジ?」
流石にそこは想定してないわ、とサクシュカさん。まあそうよね。
「マジです。あの人、どこまでもただの義務としてしか王位を見てません……まあそもそも宣誓する国神がいないので、追加懲罰は不可能、という理由もあるようですが」
アスガイアの場合、国神は存在していたので、王位に就く際には国神に宣誓することになり、そうすると、外国育ちの人でも容赦なく神罰の楔が付く、という状態だったそうだ。
今はサンファンには国神はいないし、宣誓は麒麟に対して行われたし、そして麒麟くんは、これまた神罰を受けてはいないから、追加で神罰を受ける要素は、よく考えたら、ほぼどこにもないという訳ね。
……まあ正直、そのくらいのボーナスはくれてやらないと、スタートラインが酷すぎるからねえ、あの国再建は……
「あー、国神、滅ぼしちゃったんだっけ……できるんだ、そんな真似……」
サクシュカさんが今度は何やらげっそりした顔になる。まあ普通はそうよね。
「いろんな要素が噛み合って、辛うじてってところですよ。そもそも討伐時には既に国神どころか、神ですらありませんでしたし、とどめを刺したのはレイクさんですからね」
あたしゃアシストしかしとりませんよ、という顔をしておく。別に間違ってはいない、はずだ。
「ああ、堕ちたって言ってたっけ。二例目とか誰かに聞いた気がするけど、最初はどこだったんだろうね」
サクシュカさんもその初回案件は知らないようで、首を傾げる。
「さあ?そちらはあたしも例の自称勇者様の本でしか、知らないので。その時代だから、八百年ほど前ということになるんですかね」
実際、ホントに今はそのくらいしか、情報がないのよねえ。
「あーあの本か。冒険物語版は、割とフィクションも混ざってるというけど」
半信半疑、といった面持ちのサクシュカさん。
「ああ、黒鳥が何故か各国版読み比べしてて、カレーの話は全部の版にあるからマジ話だよねって言ってたっけ……」
ランディさんもあのセリフはほんとだって太鼓判押してたけど、それはサクシュカさんに話してもいい事なのかどうか、ちょっと判らない。まあ横道に逸れてる話だから、いいか。
「えー、あの小僧まさかの読書家?そういえばあれもサンファンの聖獣?だったはずだけど、今どうなってるの?ちっこいまま?」
ちょっと考えてから、サクシュカさんが今度は黒鳥の事を聞いてくる。まあ黒鳥とはレメレでちょっと会っただけだもんね。あとは報告書絡みでしか知らないはずね。
「普通の大人サイズに戻って、神罰の楔の仮面で目元が隠れたけど、後は変わりなし、ですね。というか化身状態で固定されちゃって、普通の人と変わらない、ってぼやいてましたね」
カル君が仮面をつけた話はしないほうがいいかなあ。なんでか知らないけど、あれの有無自体は凄く重要らしいんだけど、何がどう重要なのかが判らない。
「朱虎には此処に来る途中に遭遇したけど、彼は完全にマッサイトの所属に変わったのね。その辺も出来たら教えてくれる?他にもいたよね、サンファンの守護聖獣って」
巫女の才のあるサクシュカさんは、神殿や神との契約にも敏感だ。朱虎氏の鞍替えには、そりゃ会えば気付くわね。
「現在の四聖は全部空座ですね。黒鳥は王宮で普通の人と同じような仕事、というかカル君の補佐をしてるみたい。蛇は遭遇時にはほぼ堕ちてたんで討滅しました。白狼さんはあたしたちの入国前に死亡していて、次代を育成中、朱虎氏はサクシュカさんもご覧になった通りですね。こちらの国神様と正規契約して、鞍替え済み、サンファン側からも認められてますね。で、麒麟くんは元気いっぱいで守護を頑張ってます」
特に隠蔽する情報ではないので、これは教えてしまう。
というか、サクシュカさん、麒麟くんの情報は持ってるんじゃないんですかね、あなた。
「成程。蛇討滅は貴方の仕業?あと、私に麒麟くんが元気、なのがダイレクトに感知できるのはどうしてかしら?」
サクシュカさん??鱗の件もう忘れたのか!
「蛇は主にあたしですね、先王陛下とか現王陛下とかにもお手伝いして頂きましたけど。
あと麒麟くんに関しては、鱗の御守りの半分ですよ。あれを持ったまま隠蔽解除しちゃったせいで、鱗を取りこんじゃったんですよ。
顔がサクシュカさんの龍の姿にちょっと似ちゃってますよ?相変わらず子供なのでかわいいが先に立つ感じで、ある程度龍を見慣れてないと判らない感じですが。変更不可だとも聞いています」
これは皆の龍の姿を見慣れてて、確実に判別可能なカル君にも断言されたから、間違いないはずだ。
「え?あ、あー!あれか!そういえば、返してもらうの、忘れてたわね……じゃあもうこの妙な繋がりは解除不可能かあ……いや、別にこっちは困らないから、いいのか……」
え?返却希望だったとは、今の今まで知らなかったわよ?
そしてその思考が顔に出たようで、サクシュカさんががっくりした。
「全然、思いもしなかったって顔された……はいはい、伝え忘れた私が悪いですね……」
多分そうだと思います。確かに、冷静に考えると又貸し状態だから、返してもらいたくなる気持ち自体は、判らなくはないのだけどね。
ほっときすぎたら向こうからすっ飛んできましたよねって。
そして明日から一日一話更新に戻ります!