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160.黒髪の行き倒れ?!

ちらっと前話に出てきたよね。

同時更新中ですので新着からの方は一つ前からどうぞ。

 フィリスさんとの思わぬ遭遇があってから、十日ほどが過ぎた。

 難民保護施設にいた子供たちも、あらかた引き取り先が決まって、残っているのはエルフの子が四人と、獣人の子が二人、といったところだ。

 最初にあたしたちが拾った四人組がそのまま残っているのと、例の狐獣人の人と一緒に黒鳥が拾ってきたエルフの子が二人、なんだけど。

 この六人が、何故か、どうしてもあたしたちに付いていきたい、とごねるのであります。

 なお狐獣人のケルナックさんは、数日前にフレオネールさんに告白して見事に玉砕してから、新しい仕事先に旅立って行きました。強く生きろ、礼儀正しいし割とイケメンだからきっとちゃんとした彼女も見つかるよ……


 で、すっぱりきっぱり狐さんを振ったフレオネールさんはというと、どうも気のせいか、視線がノーティスさんに行きがち、な気がする。

 子供たちも、なんとなくそんな気がする、というので、あたしの勘違いだという訳ではないみたいなんだけど。

 まあアリといえばアリですよね。ノーティスさんもいい人だし。

 二人で並ぶと明らかにフレオネールさんのほうがイケメンに見えてしまうバグはあるけど、多分誤差だ誤差。

 ちなみに四人組はあたしに、というよりフレオネールさんと一緒にいたい、らしく、残りのエルフっ子二人が、あたしにべったりなわけです。正直、前者はともかく、後者の理由が判らないんだけど。本人たちも教えてくれないし。


 なお法的には、あたしたちが彼らをハルマナート国に連れ帰る事自体は、特に問題ないんだそうだ。その場合は手続きだけちゃんとしてから連れていってね、と言われている。

 とは言ってもなあ、フレオネールさんがどうかは判らないけど、あたしは流石にそこまで手を伸ばすつもりは、今の所ないのよねえ。自分の事で、やらなきゃいけないことがまだまだたくさんあるから、子供の世話とか、今は難しいと思うんだ。良くて人任せ、最悪ほったらかしにしなくちゃならない可能性の方が高いのに、小さい子を連れて帰るとか、絶対ナシよね。


 例によって寝る前のひと時にフレオネールさんとお話し合いだ。


「そうですよねえ、カーラさんが連れ帰るのはちょっと厳しいですよね」

 うんうん、とあたしの意見を聞いたフレオネールさんが頷く。あれでも、あたしが、と限定したって事は、フレオネールさんはそのつもりがあるってこと?


「私はあの子達を引き取ってもいいかな、と考えています。私にべったりすぎるのが多少気になりますが、それは恐らく時間が解決してくれる類の問題ではないかと思うので……ただ、それとは別にちょっと、考えなくちゃいけないことがありまして」

 そう続けるフレオネールさん。


「何かあったんです?確かケルナックさんは綺麗に振ってましたよね」

 あれ、何で今あたし、ケルナックさんを引き合いに出したんだ?そういう話の流れだった?


「あら、御存知だったんですね。ええ、彼には申し訳ないんですけどもね。

 実をいうと、その前の日に、ノーティスさんに同様のお申し出を戴いて、そちらをお受けしてしまったものですから」

 わあ、ノーティスさんがアタック大成功してたよ!やりおる!


「わあ、おめでとうございます!……あ、じゃあこちらに住む感じになるんです?」

 ノーティスさんとフレオネールさんがくっつくのは、目出度い事と言えるけど、そうすると、ハルマナート国に帰るの、あたしだけ、ってことでしょうか?


「いえ、実はその辺もまだこれから相談することになってるんです。彼もどちらに住むのでも構わないと言ってくれているので……」

 強いて言えば、ハルマナート国では彼の巫覡の才が勿体ないかしら、とは思うのですけど、と言って、フレオネールさんがはにかんだような微笑みを見せる。

 あー、確かにそうね、国神が居らず、神殿も全くないあの国だと、巫覡や巫女の才は基本的に持ち腐れる。サクシュカさんなんて、他国だったら絶対神殿がほっとかないレベルの才があるってのに、本人の自覚すら薄いものね。


「ただ、親にも報告と、あとやはり挨拶はしなくちゃいけませんから、一旦国元に帰るのは決まっていますよ。カーラさんひとりで帰すなんてしませんとも」

 今度はイケメンスマイルで、フレオネールさんがそう断言してくれる。ああ、そう言われてみればそうよね。ああ、よかった……


 多分だけど、フレオネールさんは、マッサイトの人になるんじゃないかなあ、そんな気がする。

 そして、多分あの四人組も、素直に引き取って育てるんだろう。ノーティスさんも、そこらへんはとっくに織り込み済み、そんな気がしている。

 ということはだ、後はあたしにべったりなエルフっ子二人、あの子達をどうするか、ね。

 なんて思ってその日は床に就いた。


 翌日。


「治癒師どの、済まないが急患だ、人族だから、難民じゃないとは思うんだが、行き倒れを拾った!」

 マッサイトの国境警備のおじさんが、ぼろぼろの服の、推定男性を拾ってきました。

 難民の流出も止まって、保護施設の稼働規模も縮小した今、ここいらで治癒師がいるのはここだけだそうですよ?あたしの事ですね!


「はいはーい、ってあら?」

 取り急ぎ出ていって、汚れが酷いから、と、床に毛布を敷いた上にころりと転がされた人を見る。あれ、黒髪だ。

 まだ若い男性、黒髪短髪めでくせっ毛、顔立ちはなんとなく大人しい感じ、童顔、いや種族的にはまだ未成年かもね?彫りの深くない顔だから、年齢が判りづらいけど。

 身体状態は、負傷、骨折が一か所、感染症、軽度の栄養失調、脱水。うーむ、感染症の種類がどうかなこれは?


「んー、〈回復〉」

 取りあえず即命に係わる感じの怪我や飢餓状態ではないから、感染症の加減がはっきりしない今は〈治癒〉はやめとこう。骨折も解放じゃなくて、肋骨にヒビってる程度、って感じだから、無理に治癒で治さないと、という訳ではないからねえ。


「あ!!カナデにいちゃんだ!!いきてたんだ!!」

 あたしにくっついてきたいというエルフっ子のひとり、シェミルちゃんが、寝かされた人の顔を見るなり、声を上げる。

 って、なんだと?エルフの村にいたっていう異世界人なの、この子?!


「ほんとだ、カナデにいちゃんだ」

 もう一人のエルフっ子、ティスレ君も同様に声を上げる。どうやら、カナデという名の異世界人で、間違いなさげねえ。

 ちなみに四人組の方のエルフっ子達は、この二人とは違う出身地の子だそうで、お互い面識がなかった。四人組はもっと幼い頃から同じ家で働いていた、幼馴染なんだって。


 意識が暫く戻りそうにない推定カナデ少年をもう少し観察する。

 新しい傷はあらかた擦り傷切り傷といった様子で、致命傷になり得る怪我はない。古傷っぽいのに二つくらい、やばげなのがあるけど、一応それは塞がっている。

 属性力はというと、混沌系で、良く見えない。


《わあ、この方の魔力、魔王級ですよ。髪色は魔力で染まってる可能性もありますね》

 なんと、歴史上二人目の魔王級魔力保持者?しかも魔力称号に+が三つもついてる。

 そして、気になる称号がもう一つ。なんだろうこの『[     ]』って。空白?

 それ以外には、[行き倒れマスター]とかいう酷いのも見える。そして、[漂流者]。これはレンビュールさんも持ってたから、彼同様召喚されたのではなく、漂流して辿り着いたタイプの人らしい。属性力の混沌を考慮すると、同じ世界の人の可能性も、微レ存?


「サイ君、ランディさん呼んできて。子供が苦手ったって、今の人数ならまあ問題ないでしょ」

 そう告げてサイレンティ君を送還する。彼は任意の『自分が良く知っている場所』に送還地点を決められるので、今はランディさんの頭の上に出る設定にして、あたしからの連絡を受け持って貰っているのだ。こういう時はランディさんにも情報を共有したほうがいい。直感だけど。

 あたし自身が召喚できるようになってから、サイ君は隠蔽はしないで、普通にランディさんの元とあたしのところを行ったり来たりするようにもなっている。本鳥曰く、真面目に魔力を使用することでダイエットするんだ、だそうだけど。

 今日は朝イチで召喚して、そのまま頭の上に乗せてたんですけどね。

 肩でもいいのよ、と言ったけど、肩はシル先輩のシマなんで遠慮します、という返事だった。

 うーむ、シルマック君、塒指定どころか、縄張りにしてるのか、あたしの肩……


 そして、召喚獣同士の上下関係が、謎だ。まさか先任主義だとは思わなかったよあたしゃ。

異世界人は基本しぶとい。

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