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151.王宮、只今改装中?

事後処理のターン開始。

同時更新中ですので新着からの方は一つ前からどうぞ。

 帰り道は特に大きな問題もなく、行きの倍くらいの時間をかけて王都まで戻って参りました。

 途中で一泊したけど、これといってイベント風の動きもなく。まああっても困るけど。

 行きがけに吹っ飛ばした人たち以外の、もと暴徒勢も、概ね大人しくなった、というか、神だったもののバフ(と呼ぶにはマイナス効果が大きすぎるけど、彼らの気力を支えてたのは確かだ)が切れて気力切れ、で、元から足りてなかった体力も尽きたので、あらかたぶっ倒れているという。まあそのまま死んじゃったりまでは、まだしてないっぽいので、軍団の一部を入れ替えついでに振り分けて、順次救助している。

 何せ現段階で、主に蛇のせいで物凄い人数が死んでいるので、これ以上死なれては、国が立ちゆかない。正直、今の人数でも人員それぞれの状態を考えると、絶対足りてない。


「しかし、食糧問題はかなり深刻ですね……流石にランディ師にいつまでも頼るわけにもいきませんし……」

 グレンマール王太子が眉を顰める。

 何せ、国庫の備蓄から市井の食品から、それどころか獣も王都の民も役人たちも。何もかも、蛇が喰い尽くしてしまったのよね。力の不足を補おうとしてのこと、という説が今の所有力なんだけど、それにしては、喰らい始めたのが、早い気がする。どうせライゼルのちょっかい、なんだろうけどねえ……


「蛇の奴が無茶苦茶したからなあ……多分どこかの段階から、魔力不足のせいで常時飢餓状態だったみたいなんだけど。よくあんなんで幻影を操ったりとかできてたよな……俺だったら多分無理……」

 黒鳥がそう言うと、ぶるる、と震える仕草。そういえば、この子基本的に食べる事に関しては一切遠慮しないのよねえ。がっついてる、って訳ではないんだけど。


「お前食いしん坊だもんなあ……」

 カル君がちょっと呆れたように言うと、タンデムしてる黒鳥の頭をくしゃっと撫でるようにかき混ぜる。カル君、親しい人の髪の毛をくしゃくしゃにする癖あるのね……ノーティスさんも何回かやられて縺れる!って悲鳴上げてたっけ。黒鳥は特に気にしてない様子ね。化身だから絡まらないのかしら。

 と思ってたら、休憩地点で、ねーちゃんブラシ持ってたよね……と、しょんぼり顔でこっちに寄ってきた。見たら、鳥の頭に見事な鳥の巣が出来てたよね……指の感触が心地よくてついほったらかしてたら、絡まってどうにもならなくなった、そうだ。

 幸いブラシで根気よく梳かしたら直った。やった奴は走鳥に凭れてニヤニヤしてた。全くこのでかいガキンチョは!


 例の術式も、このくらい素直に解けてくれるといいんだけど、どうかなあ。

 現状では、どっちにどう転ぶかすら、微妙に判らない。



 王都に戻って、そのまま真っすぐ王宮に向かう。

 例によって王宮の入り口の門の所で、国王夫妻が待ち構えておられた。

 顔色はだいぶましになってきたかな、まだまだやつれているけど。それにしても、随分服装が簡素、というかほぼ普通の街場の庶民状態だけど、なんかあったんだろうか。


「陛下!グレンマール、及び麾下軍団と黒鳥様、白狼様、それに客人方も含め、只今帰参致しました」

 略式の礼を取り、シンプルに、それだけ告げるグレンマール王太子。


「うむ、そなたも、皆も、よくぞ無事で戻った。簡単な速報はそなたの手の者より受け取っておる故、皆の者、まずはしばし休むがよかろう。詳しい話は、後ほど頼むよ」

 返す国王陛下も、簡単にそう述べると、王妃様共々、門の横に張られた天幕に戻っていく。王宮の中じゃないんだ?


「陛下、何故そのような場所に?」

 息子的にもそこは気になったようで、グレンマール王太子がそう尋ねる。


「いやなに、そなたたちを送り出しておいて、儂らだけ屋根の下というのも、何やら気が引けてなあ。それに兵に大工の心得のある者がいたので、ちと改装を依頼しておってな。

 何より、どうもあの王宮の中にいると、色々考え過ぎてしまって、気が塞ぐのだよ。ならば軍部と共にここらに居るほうが、まだ気楽かとね。

 儂の話に付き合わせておる、そなたの部下や近衛の者たちには、迷惑をかけているかも知れんがなあ」

 王様はそういうとははは、と、笑う。周囲の兵士さんは穏やかな表情でその姿を見守っている。

 元々気さくな王様だし、色々話をしたりして、距離が縮まっている感じかしら?


「二十年以上王様やってて、いまだにそれですか、父上……」

 ちょっと呆れた様子で、それでもふふ、と笑いながら王太子が答える。どうやら、父王が何をしていたかは、把握している様子に感じるわね?それにしても、この状況からの、改装?


 王宮に近付くと、成程、結構あちらこちらで物音がする。なんていうか、いかにも改装中、みたいな。王様がああ仰ったのだから、修理じゃなくて改装、のはずよね、と音のする方を見ると、大仰な彫刻や、金箔の貼られた彫像を、中々の手際の良さで取り外しているのが見える。

 床のあたりで作業をしている兵士さんを捕まえて聞いてみたら、手っ取り早く外せる金目のものを外して、マッサイト経由で売り払い、食料を確保する計画なのだという。床も一部は剥がすそうで、利用に困る部分以外は、ほぼ全てを売り払う勢いなのだそうだ。

 マッサイト側との連絡も既に取れていて、近日目利きの商人が来訪予定になっているそうな。


 来賓用の客室は最後まで置いておくとのことで、あたしたちは今日は取りあえずそこに滞在することになるらしい。

 歴史の長い国ですから、宝物庫も当然存在するのだけど、その中身は、ここ二年の飢饉や、ライゼル勢の暗躍で、かなり目減りしていて、それこそ門外不出の何か、くらいしか残っていない、というかそれらすら半分くらいライゼルの手の者に盗まれていて、まともに換金できる物がないという事態だそうだ。

 おいおい、アスガイアが百年かかって陥った状態を、神罰から、いや先代麒麟の死がスタートだから、一年半か二年弱で、殆どの意味で辿り切ってないかい、これ?


「……神罰が超速でなかったとしたら、この国、今頃は確実に跡形もないですね、これは……」

 王太子殿下の困惑の声。ライゼル勢がまさか盗人までやってるとは思わなかった、という呆れの混ざった呟き。


「あの速度でギリギリって、綱渡りってレベルじゃねえぞ……速攻でスタンピードに気付けた嬢ちゃんが居なかったら、確定で詰んでたってことじゃん……」

 陛下と会う時から仮面は外しているカル君が、極めて嫌そうな顔をしてから、あたしを見る。


「でもあたしが居なかったら、あの段階でサンファンの侵攻はなかったような気もするんですけど……黒鳥は、麒麟くんの事はこっそり取り戻すつもりでいたんでしょ?」

 取りあえずそこら辺の機微を知ってそうなのは黒鳥だろうけど、まだ覚えているかしらねえ?


「あー……でも、俺自身は隠してたつもりでいたけど、多分蛇がライゼルの連中に坊ちゃんの居場所も全部ばらしてた、と今は確信できちまうからなあ、多分無理だったと思うぜ……スタンピードの発生を考えても、時期がせいぜい半月くらいずれる程度の話だよ、きっと」

 幸いそこらへんはまだ覚えていた?ようで、黒鳥からはそんな返事がきた。

 つまり、ライゼル勢は最初から麒麟くんも抹殺するつもりだった、という事か。

 まあ半月ずれてたら、ハルマナート国の被害はあそこまで……いや今度は普通にイードさんに命の危機かあ……それはそれで、とてつもなくまずいのよね、きっと……


「ああ、多分奴ら、蛇にこの国のリソース全部喰らわせて、纏めて横取りしてから国としても潰しておしまいにするつもりだったんじゃねえかな。流石に本国から管理できるような位置じゃねえだろうし」

 カル君の推測は、まあそこまで間違ってないんじゃないか、という気はする。ランガンドは多分呪詛が神殿に蔓延した頃には、もう神としての力は揮えもしない、ほぼ堕ちた状態だった可能性が高いのよねえ、あの触手もろもろの使いこなし加減からすると。

 そして、流石にあのズボラ創世神も、既に堕ちた神は食えないだろう。自分(というか、それも奪った他神のものだけど)の状態が確定で悪化するもんね、きっと。


「まあ、嬢ちゃんはいたほうが良かったってことさ」

 そう言うと手を伸ばして、あたしの前髪辺りをくしゃっとかき混ぜるカル君。いや待てあたしにもそれ、やるんかい!?

やるんですよ?……やっと、やるようになった、が正しいのかな。

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