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141.暴徒と行き倒れ。

食い物問題どうするかなあ(まだ言ってる)

同時更新中ですので新着からの方は一つ前からどうぞ。

「いやあ、裁定者系の称号があるのは見えていたのですが、ここまでとは」

 グレンマール王太子が感心した顔でそんなことを言い出す。そういや貴方巫覡の才あって称号も見えるんでしたね……というか、なんで裁定者称号、隠してなかったんだっけ?


《最初に隠すものを設定した時に、まだ存在してなかったからですねえ……》

 なんかもう、魔力称号は出してそっち隠した方が良い気がしてきた。


《かもしれな……あれえ隠蔽不可ァ!?》

 シエラが、らしくもないひっくり返った声をあげている。くっそ、隠し事禁止とか、ライゼリオン神(本物)絡みの称号なの、確定じゃんそれ!

 あとなんか、[通りすがりの医療従事者]とかいう称号が生えてた。巫女で医療従事者とかお前それ巫女みこナ……いやなんでもないです。あ、いえ、ネットミームの早口言葉とかいうやつで聞いたことあるだけです。元ネタが何かまでは知らないなあ、そういえば。

 ちなみに出身国以外の場所で、契約なしで百人以上に治癒系魔法使用、が解除条件でした。思ったより普通?まああたしの場合、この世界に実質的な出身国はないので、時間の問題だった奴ですね。なお現地民だと百人じゃなく千人になるらしい。一気に厳しいね?


《いえ、計算したんですけど、ハルマナート国内での使用がカウントされてないです。戸籍があるせいですかね?》

 成程、そういや戸籍、ハルマナート国で作ったうえに、一応非常勤の従軍治癒師だったわね、あたし。

 マッサイト入国時の審査がクッソ簡単だったのも、それが理由だったっけ。従軍治癒師って地味に位階が高いのよ、非常勤でもね。そして従軍、の時点で、他国からの勧誘もシャットアウトできるのです。あたし的には、とってもお得な地位ですね?


 ともあれ、討滅宣言はしてしまったので、あとは行動するだけだ。

 軍団を、王都封鎖警備及び国王と麒麟くんの警備勢と、神殿攻略勢に分けて、進軍することになる。

 王都を出たところで、近衛連隊の皆様が綺麗に整列していて、グレンマール王太子殿下に敬礼する。メテオの岩の片付け、終わったんですね……


「ああ、陛下がご無事だったので、例の件は一旦棚上げだよ。王太子の座には就いたけれどね。今日はこれから、元国神ランガンド討滅戦だよ。君たちも来れる者は来ると良い」

 挨拶代わりにそう声を掛けるグレンマール王太子。まあでも元国神討滅が終わったら、その引率指揮の功績で譲位、までの筋書きはもうできているんだけどね。

 そんな訳で、近衛連隊も半数が王都警備、半数が神殿に、と人数を分割した。指揮はともかく、連絡系統は多くても困らないので、まあ妥当なんだと思う。ええ、軍事は判りません。

 むしろ、元とはいえ、神を討滅するという話なのに、判断が早いなあ、近衛連隊も。

 なお、周辺の暴徒は随分と数を減らしているらしい。どうも、神殿に向かったものがそれなりにいるようだ。


 王都から神殿までは、ほぼ昼間ずっと休みなく歩き続けて、ようやっと神殿の巨大な建物がちらっと見える、くらいの距離、つまり実質まるっと一日分、離れている。

 そして、その行程上に、結構な人数の行き倒れがいて、次々に拘束されていく。見事なまでに全員栄養失調だ。食えてないのに、ランガンドに煽られて暴れていたんだから、まあそうなるよねえ、としか言いようがない。水も飲み忘れた奴もちょいちょいいて、流石に給水と治癒はかけてやったのだけど、治癒が飛んだ瞬間に、なんか憑き物が落ちたみたいな顔になって、さめざめ泣きだしたり、大人しくなったりしだしたんだけど?

 シンプルに栄養失調なだけの、まだバリバリに反抗的な連中に、試しに光属性だけ乗せた魔力をぶつけてみる。わあこっちも大人しくなった、だと?!


「なんてこと、まさか治癒掛けて回るのが正解だったなんて」

 流石にそこまでする気は微塵もなかったから、なんか意図せずして裏をかかれた、そんな気持ちになってしまうのは、許して欲しい。


「とはいえ、奴に接近すれば、そちらの影響の方が強くなる可能性はありますし、これも一時的なものかもしれません。行き倒れ勢はこの辺りに集積した方が良さそうですね」

 王太子殿下がそう判断したので、それに従うことにする。実際この先もこうだなんて、楽観視なんかしませんよ、あたし。

 軍団の一部をこの任務に振り分けて、再度進軍、ただ暴徒拘束に時間を取られちゃって、もう時間も時間、といった感じなので、神殿が見える場所に野営せざるを得ない。野営予定地にも行き倒れが結構いて、これもしかして誰も神殿に辿り着けてないんじゃないか疑惑。

 まあ、治癒を掛けて事情聴取したら、そんなこともなかった。田舎から出てきたばかりで、ある程度体力の残っている連中が、既に神殿に入った頃だろうという。


「我々より多少最近まで食えていたようですからね、あいつら。ここいらはもうずっと食べる物なんて何一つないし、王都に向かった者も、誰一人戻ってこないし……」

 王都周辺に人が居なかったのは、どうも蛇に誘い込まれて食われたということのようだ。正門は閉まったままなんだけど、実はどこぞに人ひとりなら入り込める場所があるんだって。

 近衛勢がああ、あそこか!という顔をしていた。聞いてみたら、人ひとりずつしか入れないから、普段は普通に二人組の警備を置いていて、流石に出入りはさせていないそうだ。

 どういう場所なんだろうと思ったら、聖獣の化身の方々専用の出入り口です、という返答だった。黒鳥は例によって存在を忘れていた、という顔をしている。というか、今朝くらいから妙に喋らなくなってきてるんだけど、ほんとに大丈夫か君?



「ねえカル君、あのアホ鳥大丈夫なの、あれ?」

 夕食後のちょっとした空き時間で、カル君を捕まえて尋ねる。グレンマール王太子と元から知り合いで、仲も良かったということで、カル君は顧問だか参謀だか、みたいな位置づけで動いていて、案外忙しいのだ。あたしも昼間は治癒ぶん回し作業で途中からクソ忙しかったし。


「正直あんま大丈夫じゃねえな。麒麟の語彙が増えると、その分あいつが記憶どころか、言葉まで忘れて行ってる感じがする。蛇が横取りしてた分だけはあいつの討滅時に一旦そこそこ戻ったらしいんだが、今度は白狼の記憶か何かが混ざったらしくて、たまに混乱してる気配がする」

 ……予想以上に、状態が宜しくなかった。そういや、今日は無言であたしが抱えてる白狼さんの子に寄ってきて、なでなでしてからはっとして戻る、なんて謎行動を数回してたっけ。麒麟くんのことは良く撫でてたから、その延長だと思ってたんだけど。


【実の所、妾も少し混乱気味だ。黒鳥め、他国で割とえぐい真似をしておったな……案件が終わったら、もう一回説教じゃ……】

 久し振りに出てきた白狼さんも、しんどそうな口調でそう言う。でもお説教は確定なのね。何やったのがバレたか知らんけど、黒鳥乙。


「あー、まああれは予想以上に被害が大きくなったから、しょうがないな……余計な欲かいたのが主原因だし……」

 カル君も何の話かは知っているようで、諦めの表情だ。


【王の為という理由は判らんでもないが、かといって他国に余計な被害を出すなど、論外である故な。しかしそなた、よくその状態に甘んじておるな?】

 白狼さんの矛先が、今度はカル君に向く。といってもその口調は、相手を案じるものだ。


「甘んじているつもりもないが、まああれこれ世話にもなったからな。それに、俺にとっては、趣味の合ういい友人なんだよ、あいつは」

 空仲間を庇うように発言して、にやりと笑うカル君。


【だからといって、その人生までくれてやるほどの相手ではないと思うがのう】

 気になることを白狼さんが言いだした。え、それほどのおおごとに……いや、既になってる、わね。黒鳥との契約の結果、空を諦め、国を追われたんだった。まあ入国禁止のほうは年限付きだから、生きていれば、そのうち帰れるんだけれど。


 ……いや待て、今あたし、なんで生きていれば、なんて酷いことを、いえ、その言葉を酷いと考えながら、想起したの?なんか、やばいフラグが、立ってる?


「そんなこともないさ。あいつが飛べるなら、俺もまだ飛べるんだよ」

 良く判らないことを言いつつ、カル君が例の仮面を取り出す。何故かそこで、さっきの嫌な感じが、すっと薄くなった。


 ああダメだ、その意味が、今のあたしには、判らない。

主人公の修行不足が露呈した回。

あと巫女み(略)は作者もミームとしてしか存じません。

元ネタの作品の存在は流石に主人公と違って知ってはいますが。

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