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128.再び東山脈方面へ。

国内の地名は割とシンプルな事が多い世界。

 兵糧担当になるランディさんが快諾してくれたので、軍の一団餌付け作戦は決行されることになった。

 そういやフレオネールさんはどうしてるんだろう、と思ったら、逃げてきた獣人やエルフの子供たちに懐かれてしまって、一時的に、すっかり保育士さんみたいになっているそうだ。

 だもんで、行先の振り分けや聞き込み調査が終わるまで、そちらの手伝いをすることになったんですって。まあ安全な場所にいてくれるなら、それに越したことはないわね。


 今回は、南部エリアから森伝いに東部エリアに抜けて、軍団の傍まで直行する。流石に海岸沿いルートは遠まわりが過ぎるのよね。例によって王都エリアには近づかない。

 ランディさんの転移はというと、どうもサンファン国内には転移ポイントを置けないらしい。むう。

 それというのも、どうも、王都エリアと、他エリアとの境界も、分断されている気配があるみたいでね。朱虎氏の南部エリアは、王都方面からの神力が完全に途切れてしまっているそうだ。

 南部の現状としては、東部エリア同様、奴隷のいない暮らしに耐えられない人は王都方面に流れて、自力で耕作などができる人がちらほら残っている程度の状況らしい。あとは奴隷だったものを追いかけてきた奴隷商人の類ね。まあそちらはこないだ黒鳥が数人お仕置きしてたから、まだ居るかどうか?

 取りあえず神力の件は、ライゼルが噛んでいるにせよ、蛇がメインでやらかしているにせよ、正直あまりいい状況とは、言えないわね。

 そして、神力の断絶に気付いた辺りで、例のカウントダウンが、何故か再開された。しかも一か月分くらい、数字が一気にすっ飛んだ。恐らく、王都で、何かが起こった、もしくは、起ころうとしている?

 ただ、そのカウントゼロの内容は、恐らく前のそれとは、結果が違う。前のは、多くの人が、呪詛に斃れるイメージだった。でも、今度は、その結果が、いまいち見えない。死が迫っている事には違いない、気はしているのだけど。

 多分これはあたしの心境の変化も影響しているんじゃないかしら。

 前回のカウントの時は、ある程度あたしの中に、無関係なのに呪詛に斃れる人びとへの、同情心みたいなものが、一応あったように思う。今そんなものは、あたしの何処を探しても、ない。

 それほどに、この地の人びと、特に王都方面の人には、ひたすら辟易させられたのよね……


 さて、あの軍の人たちは、あたしにどんな心象をくれるのかしら。



 森や林にできるだけ沿うように、ルートを選び、空から目立たないタイプの召喚獣たちに確認してもらい、できるだけ道を急ぐ。もう完全にランディさんにおんぶにだっこ状態だけど、正直、この旅に出てからだいたいそうだから、今更ね。

 二度ほどうっかりで住民に接触したけど、どちらも置いてきぼりを喰らったお年寄りで、まあ死にたくはないから、できることをするしかないさ、と、小さな畑と共に生きていくと決めた、この国で出会った中では、まともなほうの人だった。

 ここでも、家畜や野生の生き物はこれも王都から来た連中が東エリアと同じ頃に全部持って行ったそうなので、神罰以降魔法の発現が弱まっていることもあって、結構厳しげな様子ではあったけども。


「なんか、畑仕事をまた自分でやるようになったら、健康になってきた気がするよ」

 なんて言ってるおじいちゃんがいたけど、腰には気を付けて頂きたい感じ。

 うん、おじいちゃんたちには、王都方面の民ほどに、嫌悪感とかはないみたい。多分、こうなった事の結果を、ただ受け入れているから、なのかな。なにより穏やかで、喧嘩腰じゃないし。

 王都方面の人たち、マジでこちらの言い分を微塵も聞く気なかったからなあ。今思い返すと、流石にあれはちょっと異常な気がする。


 東部エリア、白狼さんの塒の麓には、初回の半分くらいの時間で無事に到着した。

 途中からほんとに人の全くいないエリアがあって、そこを全力で突っ切ったからね……

 元々あまり人が住んでいない場所だったらしい。この国、人口が元々そう多いほうじゃなかったっぽい。それでも、地上には食品として使えそうなものは何一つなかったけど。


 軍隊さんは、まだ元の場所にいた。只、以前見た時より、明らかに疲弊しきっているし、気のせいでなければ、人数が減っている?元がかなり多くて、判りづらいけど。

 どこか遠くで、狼の遠吠えが聞こえる。ぎょっとしたように軍人さん達がそちらを見やりながら立ち上がりかけ、近くには何もいないと知ると、げっそりした顔で、また座り込んでいる。


(む、どうした、王都に向かったのではなかったのかね)

 此方に気付いたレイクさんが念話をくれる。

 いや、諸事情でそこの軍隊を飴と鞭大作戦で取り込んでからじゃないと、王都に入るの自体が難しくなっちゃいまして。と返事をする。


 暫くすると、森の側から、レイクさんの気配。


【小娘よ、我に鞭の役をやれというのかね?】

 再会の挨拶もなしに、おもむろにそう問いかけて来るレイクさん。話がちょっぱやだわね?


「それをやると、薬が効きすぎて、貴方に守護を求めそうで、ちょっと思案中」

 まあ、此処に来るまでの間にもいろいろ考えたけど、多分それしかないんだけどねえ。


【ふむ。あいつらを保護するのは御免だな、確かに。だが、白狼のは、その子に後を継がせるのだろう?なれば、その後見程度の事なら、してやっても良いと思っておるよ。何せ我はこの体躯だ、番える相手が居らぬ故な、その子は唯一の我らの血筋、放ってはおけぬ】

 やっぱりか。肉親の子だから、きっとそう言うと思ってた。というかレイクさん、そんな悩み?があったのか。


「そういえば君はサイズ変更も化身もできないんだったっけ……」

 ランディさんが、そういえば、という風に呟く。


【化身は元々天狼族にはないな。大きさは、本来なら変更可能だったのだが、我も弟も、この世界に落ちてからは出来ぬようになってしまった。奴は普段の大きさだったからまだしも、我は戦闘用の大きさであった故なあ、些か、不便ではある】

 食べる量が大きさと連動してないのは幸いだったがね、とレイクさんはお茶目にウィンクなどして見せる。確かに、この見た目のサイズに見合った食事量だと、住める場所自体が限られてきそうよね。


 レイクさんとも無事合流したので、改めて飴と鞭作戦の詳細を相談する。

 黒鳥の最初言っていた、あたしがレイクさんに乗って、は、残念ながら?却下された。

 ええ、頭の上にでも乗るんじゃないと、レイクさんがでかくて、下から見えないことが判明しまして。で、流石に頭の上に乗るのは、あたしが無理だった。アンダーコートも、頭は薄いので、動くと滑り落ちそうになるというオチが。


【まあそうだな、〈畏敬〉を使うか……あやつらに、というのは些か気に染まんが、甥の配下になるものだと思えば良いのだし】

 おう?レイクさん謎スキル持ってた。名称的に、支配系スキルの予感?


《〈畏敬〉は、威圧のスキル版の、上位スキルにあたりますね。カルセスト様達の使う威圧は技能ですけれど、スキル版もありまして、そちらの上位スキルという扱いになります》

 スキルにもランク分けがあるのか。技能の上位互換がスキルって認識でいたけど。


《その認識自体も間違いではないですね。上位スキルなんてそうそう存在していませんので、今まで特に説明する必要がなかったといいますか、わたしも上位スキル持ちの方は初見ですよ》

 そういや、スキル持ち自体が基本的にレアだった。今の集団割とスキル持ちいるけど、異世界人と真龍と聖獣ともと龍の王族、とかいうチート編成だからだわね……

 うん、詳細は知らないけど、カル君もスキル持ちなんだ。龍の王族って、異界の龍の血のせいらしいけど、普通の人より、技能やスキル、それに称号が出やすいんですって。旅の途中で、ちょっとスキルの事を話題に出したときに、教えてもらったんだけど。


 その日はレイクさんの結界内、軍からは近くもなく、遠すぎもしない辺りでテントを張ってキャンプしました。例のBBQセットで謎のいろんなお肉を焼いて皆で食べた。お魚も食べた。多分、匂いだけ軍隊のとこ、最低でも斥候さんの所までは届いたんじゃないかな?


 ええ、作戦は、始まっているのです。

 黒鳥がまた、姉ちゃんおっかねえ、って言ってたけど、作戦ですから!

 あ、この謎の鶏肉っぽいやつ、美味しい。もうひと切れ貰おう。

多分元は四聖の称号で呼びならわしてるとは思うんだけど<地形

Q:で、カル君のスキルって?

A:本編にも普段の彼の行動にも一切無関係な、完全無欠の死にスキルなので下手すっとこのまま出てこないんだなこれが。

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