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122.鱗が齎したもの。

前半は鱗と麒麟くんの話。

【ねえ、ぼくらしきのなおすまほうをつかえるこ、よんで?】

 さて寝るかと思ったら、麒麟くんから謎要請が。特に手間でもないのでジャッキーを呼び出す。


(どーしたマスター?もう寝る時間じゃね?)

 ぴょこんと魔法陣から現れた白い二角兎が、首を傾げる。


【おや、随分可愛らしい兎じゃな】

 白狼さんが少し眠そうな声で感想を述べる。そうでしょそうでしょ、かわいいでしょ。

 ジャッキーは前回呼んだ時もそうだったのだけど、ちょっとだけ育った。角も指先の関節一つ分、くらいの感じで伸びている。


【ごめんねえ、ぼくが、たのんだの。まほうをつかってもらっていい?】

 麒麟くんがぺこんとジャッキーに頭を下げてそう言う。でもなんでだろうね。


(あれ?ああ、これが君の元の姿なのか!可愛いね!で、魔法?治癒でいいのかな、誰にかけたらいい?)

 どうやってか、麒麟くんが、時々一緒に遊んでいた白狼獣人の子だったことに早々に気付いたジャッキーは特に疑問を持たずにその頼みを引き受けている。今日もいい子だねえ。


「そうね、そこの子狼さんでいいと思う」

 あたしの治癒と回復をかけてあるけど、まだまだ本調子じゃないからね。


(おっけー、じゃあ使うよ)

 言葉と共に、くるりといつもの唐草模様めいた魔法陣を展開して治癒を発動させるジャッキー。麒麟くんはその魔法陣をじっと見ている。


(随分長い事ご飯食べてなかったみたいだねえ、マスターが継続回復かけてるから当面は大丈夫そうだけど)

 ジャッキーもそういう診断系は割と正確よね。技能のアシストが幻獣系統でもあるみたい?


【んー、こうか!】

 突然、麒麟くんがくるりと魔法陣を構成した。え、これ治癒の魔法陣?


(うぉ、初見で正解出してる!才能あんな?)

 初回は混成で事故るから消せ、と言われたジャッキーがびっくりしている。

 ちなみに聖獣式の場合、最初は失敗するのがデフォ、だそうだ。あたしたちと違って、紙に記録して覚えるってことはしないものね。


【麒麟に、治癒じゃと?いや、確かに光属性はふんだんに持っておるはずだが……】

 麒麟くんの初治癒魔法を受けた白狼さんもびっくりしている。

 詳しく聞いたら歴代麒麟でも、治癒持ちは初の事態だそうだ。

 ……うん、これもサクシュカさんの鱗のせいな可能性、高いですね?


「サク姉の鱗の影響だよなあそれ……」

 カル君も原因はそれだろうなあって顔になった。

 それにしても、鱗半分でこれか。他者の一部を取り込めるというのも驚きだけど。

 いや、元々四聖から記憶と経験を分けてもらう仕様だからこそ、か。今の姿も耳や尻尾には白狼さんの影響があるものねえ……あれ?だとすると、前回って黒鳥だったと言ったわよね?


「……先代の麒麟って黒鳥の影響があった、んですよね?どこに影響が出たんです?」

 流石にこの生き物に鳥っぽい何かが反映されるというイメージがどうしても持てない。


「あー、そういえば前脚に俺の本体と同じ鱗があった気がする?殆ど毛で隠れてたけど」

 あー、鳥の脚、そうね、鱗っぽさあるわよね。そういや、今の後ろ脚も、微妙に鳥っぽさがあるなあ?てっきり龍のそれだと思ってたけど、指の感じが、鳥のような気もする。


【あと先代の尾にも、少々尾羽のようなものが混ざっておったね】

 白狼さんが付け足す。そっちの方が目立つんじゃないですかねえ?と思ったけど鶴の尾ってあんまりイメージないなあ?あたしの世界で一番有名な鶴の絵は、ふっさりとした黒い尾のようなものがあったけど、解説文にあれは尾じゃなくて翼の一部って書いてあったのよね。


「……クチバシが似なくてよかったな?」

 カル君がまた地味に酷いことを言う。いやまあ確かにそこにいくと見た目大惨事なのは事実だけど。


【顔は普通そこまで変わらんのじゃ。今回の変わり方が不思議なくらいじゃよ?】

 白狼さんは首を傾げる。


「お守りとして鱗を首から下げていたはずなんで、そのせいじゃないかな……」

 首から上に影響が出てるって感じだから、そんなに間違った感想ではないはず。


「そういえば、初回が蛇だったと思うんだけど、その時はもっと鱗がいっぱいあったな?」

 初回っていうか、最初に生まれた時、と黒鳥が言い直す。


「そうだねえ、初めの麒麟は、確かに鱗が胴を殆ど覆っていたし、顔ももっと龍に近い姿であったと。うちの爺さん連中が最近の麒麟は随分ふかふかじゃなあと言うので質問したことがあるだけで、我は流石に生まれておらん頃だが」

 約五百年で入れ替わるものが四人分で一周だから二千年くらい前の話か。ランディさん千歳くらいと言っていたから、確かに直接見てない頃ね。というか黒鳥、お前さん二千歳越えてんですか。まさかの、ランディさんより年上。

 ああでも五百年ぶんは供出してそのぶん若返ったらしいから実質千五百、で、今儀式魔法でさっぴかれてるぶんで千とちょっとくらい?

 ……やっぱちょっとガキンチョすぎないか?引かれ過ぎてるし、おまけに、その引かれ過ぎた分が麒麟側に反映されてないな?


「何かここまでの話で不審点でもあるって顔だな?」

 黙ってたらカル君に突っ込まれた。不審点しかない話してますけどね、今。


「五百年分くらいしか引かれない計算のはずなのに、アホ鳥がガキンチョすぎるなと」

 考えながらしゃべったら、うっかり久し振りにアホ鳥と口に出してしまいました。すまぬ。

 なお聞いた瞬間、黒鳥は怒るんじゃなくてガチ凹みしました。いやごめん、マジで、すまぬ。


【身も蓋もないことを……まあ現状そう言いたくなる気持ちは判らぬではないが】

 レイクさんまで賛同してしまったので、いよいよ本格的に凹む鳥小僧。


「そうだねえ、黒鶴族自体そこまで成長の遅い種族じゃないから、下手するとこれ千年分くらい一気に引かれていないかい?」

 ランディさんは冷静に種族特性の話に持っていく。そして概算してくれた結果が酷い。


「や、やっぱそうだよな……魔力とかそう言うところはそこまで減ってないから、気のせいか、見た目だけの問題かと思わなくもなかったんだけど」

 ああ成程、黒鳥本人は自分の属性力や魔力を参照して判断してたのか。でも魔力も属性力も、成長しきったら余程の事がない限りそうは減らないのよね、それこそカル君みたいなケースでもない限りは。そしてそのカル君でも、魔力は全然減ってない、むしろちょっと増えてるらしい。あたしは他人の魔力は測れないんで、シエラの計測と算定だけど。


【そもそも供出されるのは記憶の中核とそれまでの経験、まあ経験の部分を差し出す故、多少身体的に巻き戻りはするが……前回の黒鳥は、それを二百年ほどで取り戻して居ったぞ?】

 白狼さんの情報に、ちょっと驚く。鳥小僧、意外と努力家?


「あの頃くらいから、神力が減ってきてて、早めに復調しないとやばいんじゃないかって思って、それで出稼ぎ始めた記憶がなんとなくあるから、経験の溜まりはそのせいで早かったんじゃないかな」

 具体的にどういうことをしてたのかとかは、地味に覚えてないらしい。


「そもそもその出稼ぎとやら、何をしていたんだ」

 ランディさんが根本的な疑問を口にする。


「他国が絡んじゃって他所の国神とかが手を出しにくい案件とか請け負って片付けてた。朱虎がマッサイトの厄介ごとを二つみっつ片付けてやってたのも、実はそう。あいつ前からマッサイトの国神に気に入られてんだよね」

 話だけ聞くと思ってたより大分と真っ当なバイト感がある。ただまあやってるのが守護聖獣で依頼者が国神、更に二国またはそれ以上絡む案件とか、ガチめにめんどくさい奴の匂いしかしないけど。


「まあだから、終わった案件に関してはあんまり語れないんだ。だいたい受注時に情報開示に制約がかかってるから。でもそうだ、最終の報酬が貰えてない案件が一つ、あるな?」

 貰いに行く前にこんなことになったから、と呟く黒鳥。


「あれほんとに貰えるかね?」

 なぜかカル君が口を挟む。情報共有範囲だったらしい?


「……判んね。まあ俺もいろいろ欲かいて失敗した感じのやつだし、一応依頼自体は終了判定にはなってるけど、もうこれ、なかったことで、いいかな……」

 しょんぼり顔の黒鳥。何処の何をどうしたかは、どうやら聞けそうにないらしい。

 それにしても失敗した感じなのに依頼自体はちゃんと終了って、どういうやらかし方をしたんですかね?

やらかしたのは主に主人公、君だよ!!!(第二部のSide:???参照)。

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