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121.次の目的地は?

まだ出発しない。

同時更新中ですので新着からの方は一つ前からどうぞ。

 ごはんの後、寝る前に、次の行動についてちょっと話し合いをしておく。

 白狼さんは、子狼にくっついた状態であれば、移動もできるというので、一緒に来ることになった。レイクさんはとにかく大きすぎて目立つので、当面の塒の安全確保をしておく、と言っていた。

 白狼さんが従えていた狼の群れのいくつかが、まだこの近隣にいるそうなので、彼らを保護したいのだそうだ。大規模な飢饉こそ発生していないけど、国内で凶作が二年ほど続いているそうなので、食料不足から、普通なら食肉扱いされない狼まで狙われる可能性があるんだとか。


「そういえば途中で会った村人も、都の方から来た連中が全部狩って持って行った、みたいなことを言っていたけど……でもあのおばあさんが狩りをするようには思えなかったのだけど」

 ふと気になったので口にしてみる。


【ああ、海辺の方の連中か。あいつらは奴隷に浜仕事も狩りもやらせていたようだからな。狩って持って行ったというなら、獲物そのものもだが、奴隷も連れ去られたのであろうよ】

 白狼さんが口にするのも嫌だ、と言わんばかりの低い声で答えをくれた。むう、契約で縛ってる間は狩りなどさせても契約主は安全だったわけか……


「そういやあの小屋も大分長い事無人だった感じだったな。奴隷の徴発があったの、下手すると神罰前じゃないかな?」

 それなら、どの小屋も無人だった説明はつくよね、と黒鳥。成程?


「神罰の前、か。なんか嫌な感じだな逆に」

 カル君が眉を顰める。確かに、なんでそのタイミングの徴発なのか、という謎が発生するし、うん、なんだろう、とても、碌でもない事になっている気がしてならない。


「海軍絡みで徴発、いや違うな、ここの海軍は水風魔導船で、人力じゃないもんな……」

 そうね、船旅で出会った幽霊船、じゃなかった元海軍船もそうだったし、見るからに人族のひとしか乗って居なかったと思うし。


「この地域に入る辺りで保護した、エルフの子を連れた狐獣人も、獣人奴隷が姿を消してエルフばかりになっていた、と言っていたな?」

 ランディさんの指摘に、頷く。そうね、確かにそんな事を言っていたわ。


「王都に乗り込むべきか、その前に調査をすべきか……いや、多分調査は無駄かなあ……」

 徴発されたんなら、そういう答えしか返ってきそうにないもんな、と黒鳥がぼやく。

 うーん、どうにもこの国の国民性が良く判らんなー?

 守護聖獣の事は割とナメてるけど、政府とかからの命令には従順で、気性自体は穏やかで変化を好まず、奴隷は完全に自分達より下位の存在で、便利な道具程度の扱い?くらいしか、見えてこない。

 此処までの感想として、そう述べてみたら、全員が凄く嫌そうな顔をして、大体そうだ。と返事をしてくれたわけですが。いや待って、追加情報、ないんですかい?


「実際無気力一歩手前の感じはあるよな、王族からしてそうだったし」

 黒鳥曰く、現王以外は正直王族の出来も今一つ、だったんだそうだ。あらかた死んじゃったみたいだけど、とも言っていた。


「そのくせプライドは山のように高かったよなあいつら。一般民や役人はそこまででもなかったけど」

 カル君は、二、三度ばかりこの国に仕事で来ていたそうで、これまたあまりいい印象はないんだそうだ。黒鳥と契約したのはここでじゃなかったらしいけど。


「飛び越える以外では四百年ばかり前に一度来たきりだが、当時もまあそんなものだったよ」

 ランディさんだけ話のタイムスケールが大分違うような、いや黒鳥や白狼さんもそのくらいの期間の話をしている可能性?


【変わらぬ、というのは悪い事ばかりではないのだが、どうにもこの国のそれは、停滞、としか呼びようがないのだよなあ】

 レイクさんですら、思うところがあるようで、言葉のキレが宜しくない。


【かみさまが、かわるのをのぞんでないからねー。ひとは、それにひっぱられる】

 麒麟くんが、かわいい溜息をついて、そう言う。麒麟くんにまで溜息つかせるだなんて、あーやっぱここの国神は一発シメないとだめかーそっかー。


「嬢ちゃんがなんかすごく不穏で不遜な事を考えてる気がするんだが」

 何故か真っ先に反応したのがカル君な件。解せぬ。


「不穏じゃないですよーオシゴトの事を考えてただけでー」

 まあその推定仕事内容が不遜オブ不遜だけどね!


「不遜は否定しない、だと……?」

 黒鳥が引いている。ハハハ、その場の勢いで一応レベルとはいえ、聖獣あんたをグーパンする女ですよあたし?忘れた?


【それにしても、なんとも面妖、いや不思議な娘じゃの】

 白狼さんが口を滑らせたわけですが。面妖?面妖って言った?

 ……いや、面倒って言われるよりはいいか……


《なんでそこで妥協するんですか……?》

 シエラからツッコミ。いやだって、実際この世界の普通からはだいぶ遠いですし、あたし……


「面妖……?流石にそこまで思ったことはないな……」

 カル君が何故か白狼さんの言葉に引いている。でも変な女くらいは絶対思ってるでしょ君。


「でも変な女とか前にいやなんでもない」

「ちょおま」

 馬鹿鳥が見事にばらしました。そうかそうよね!知ってた!

 慌てるカル君に、冷たそうな視線だけ投げておく。まあ君に関しては!今更なので!!


【……仲のいいことだな】

 レイクさーん?!そうじゃないと!思うんですが!いや黒鳥とカル君のことならまあそうだけど!あたしは!違う!多分!


「……ごほん。あたしのことは置いといてですね、次の目的地ってもう王都でいいわけ?」

 もうぐだぐだが過ぎるから、無理やりにでも路線修正してやる!

 ニヤニヤして見物人に徹していたランディさんがやっと真顔になったよ……


「なんか足りない気もするけど、多分そうなるかなあ」

 何やら思案顔の黒鳥。なんか足りないって何がだ?朱虎氏は国内立ち入りできないままだから除外として、なんか、あったっけ?あたしの勘センサーには特になにもないなあ?


【儀式魔法をどうにかせんと、不具合が増えていくような気がしないでもないな……】

 白狼さんも考え込む。でもそこは、サンファンにいる今は特に弄りたくないのよねえ。


「嬢ちゃん、その儀式魔法ってやつ、消せねえの?」

 カル君の疑問はまあもっともだ。〈消去〉の消せるものの範囲は、割合広い。でもねえ。


「できないとは言わない。でも消すと神罰が完全バージョンで降ってきて、ほぼ確定で君も巻き込まれますが、それでもやる?」

 と聞き返したら、ぐ、と詰まった。そういやこれ本人たちには説明してなかった気が、そこはかとなく?アスガイア行きの前の段階だと、黒鳥は判ってるぽかったし。今は、だめっぽいけど。

 ……うん、やっぱり、徐々にだけど、儀式魔法の方が、進行しているわね……


「それは……困る。カル君をこれ以上俺の罰に巻き込むのは、ダメだ」

 何時になく真面目な顔でそう呟く黒鳥。

 そういや黒鳥って、前からカルセスト君のことカル君って呼んでるっぽいけど、何時頃からの知り合いなのかしらね?


「いや、巻き込まれるの自体はもう今更だけど、流石に神罰完全バージョンはちょっと困る、かな……?どうなるのか、見当もつかねえけど」

 カル君のほうは、純粋に神罰が降ってきた場合の方を気にしている様子。


「どうなるかはあたしにも何とも言えないわねえ。どうなるか試してハイ戻しますよ、って訳にはいかないからね……」

 生憎、〈消去〉の効果は基本的に不可逆だ。消したけどマズいから戻す、なんて器用な事は、できない。というか、多分だけど、そんな効果だったらきっと魔法としてはお取り上げ、抹消食らうわよ?

 呪詛の形式を覚えることで呪詛スキルへの道が開けるのを回避する、それがこの魔法を作った、本当の目的なんだし。割と想定外使用とかしてるけど。


 ともあれ明日の朝から王都に向かって出発する事だけは決めて、森の手前にいる軍絡みは、できれば此処に来た時同様ランディさんの隠蔽で、それが無理ならもう行き当たりばったりで、という大変雑な方針が決まった。

 それというのも、軍の現状がいまいちよく判らないからだ。集団で疲弊した状態で駐留しているのは間違いないのだけど、疲弊しすぎているのか、ここ数日、大きな動きがないんだそうだ。


 うーん?なんだかスルー出来ない予感がするな、なぜだろう。

次回出発、できるんだろうな?

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