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119.現状確認とお説教。

割とタイトルそのまんまである。

同時更新中ですので新着からの方は一つ前からどうぞ。

【いやはや、助かった。我が子共々、危うく飢え死にするところであったわ……】

 お腹いっぱい食べて、お水も呑んで、子狼さんが寝落ちたところで、白狼さんが再び言葉を発した。子狼さんが寝てても喋れるのか。


「およそ半年くらい、あんたの身体だけで保たせてたのか?俺よりでかいとはいえ、よく生きていられたなあ……」

 干からびた白狼さんの毛皮を軽く撫でながら、黒鳥がそんな風に言う。


【気力と意地で、どうにかな。魔力も生命維持に回して、どうにかここまで来たが、正直、あと数日遅ければ、危うかったと思う。真に、感謝する】

 予想以上にギリギリの状態だったらしい。多分此処に来たのがレイクさんだけだったら、少しやばかったかな、とは思う。うん、子狼さん、食べてる途中で咽て、〈治癒〉と〈回復〉のセットを掛けなきゃいけなかった程度には、弱っていたものね。


【我が弟の遺児、ということになるのか……】

 眠る子狼を見つめて、ぽつりと呟くレイクさん。


【うむ。身籠っているのに気付いたのが、あやつが逝った半年ばかり後でな、そなたに連絡をしそびれてしまった。伝えていれば、この様な無様は晒さずに済んだであろうかのう】

 しょんぼりとした声の白狼さん。

 この世界の狼は家族愛が強いという。どうやらフェンリルのレイクさんや、白狼さんにもそれは適用されるようだ。そういや砦によく来てた賢い狼さんズもいつも家族単位の群れで行動してるっぽかったな。


 白狼さんによれば、丁度、子を産んでいる時に、外に転がる頭蓋骨の主たちが襲ってきたのだそうだ。そして、四頭生まれるはずだった子狼の三頭と、白狼さんが死んでしまい、生き残った一頭に白狼さんが意識を辛うじて移して、子に自らの身体や、死んだ兄弟を食わせ、何とか生き延びてきたのだという。氷属性を持っていたので、腐らないよう、ある程度死体を凍らせておけたのが幸いした、と言っていた。


【ただでさえ出産で身動きが取れぬうえに、何やら儀式魔法の拘束まであってはな。辛うじて、相討ちにはしてやったが……無念なことよ】

 襲ってきた人間の方は食わなかったそうだ。瘴気の気配があった故、という話だから、食わなくて正解だったんでしょうね。

 バラバラになっていたから、多分外の野生の生き物が食べたようではあるのだけど、ただ、それらしき生き物の気配は既にないらしい。


「その儀式魔法、今俺に飛んできててさ……どうにかならね?」

 黒鳥が困り顔でそう無茶振りをしてるけど、既に本狼死んでて、子供に辛うじてくっついてる状態なのに、白狼さんにはどうにもできないんじゃないですかね。


【そもそも、妾の番ではなかったはずであろう。蛇めはどうしたのじゃ】

 不機嫌そうに、白狼さんが答える。でーすよねー。


「……判んね。神罰以降一回しか連絡取れてないし、そんときもあっちが幻影だったから、正確なところが判らないんだよな」

 まあ俺もあん時はこの姿を見られるのが嫌で幻影被ってたけども、と黒鳥。


【……つまり、儀式魔法が妾からそなたに跳ねた事は、蛇は知らぬのだな?】

 確認する白狼さんに、黒鳥が頷く。


「あの時には少なくともボロは出してねえから、そこはバレてないと思う。あと一応、王都や北領には近づいてないから、麒麟の現状もばれてはいない、はず。いや、麒麟の復活自体は、流石にあっちでも観測してるはずだよなあ」

 麒麟くんがマッサイトとの国境をぴょこぴょこ縄跳びのように跳ねて越えたり戻ったりしていたのは、土地を少しだけ活性化するための儀式のようなものだそうなので、これだけ広範囲にそれをしていれば、王都側でも気が付く可能性はあるのだそうだ。

 でもそれにしちゃ、追手とか捜索隊っぽいもの、さっぱり見ませんよね?


「それだがね、王都に今いる者たちで、そういったものを感知できる者が、どのくらいいるか、判るかね?」

 ふと思い出した、とでもいうような口ぶりで、ランディさんが口を挟む。


【この国の神殿は、王族出身者が過半を占めて居ったせいか、呪詛で倒れた者が多かったからのう……それに、ここ半年ばかりの状況は、此処から動けぬ妾には判らぬな】

「数人いたらいい方だろうなあ。ただ、蛇は流石に知ってないとおかしいけど……いや、あいつも下手すっと守護の資格は失ってる?のか?だとしたら、恐らく気が付かないな?」

 白狼さんと黒鳥がそれぞれの答えを寄越す。


【へびは……もうつながってない】

 そこで麒麟くんが語ったのは新事実。やはり碧蛇は守護聖獣の資格を喪っているようね。


「マジか。いつからか覚えてるか?」

 黒鳥が麒麟くんに質問を追加。


【もうずっとまえだよ。あとねー、つるととらは、まだだいじょうぶだよ?】

 おおっとまさかの大逆転。黒鳥と朱虎氏、セーフ!?元、って付けなくてもよかった!?

 いやでもよく考えたら、麒麟絡みの儀式魔法、かかったままなんだから、黒鳥はセーフじゃないと辻褄が合わないのか……盲点だったね……


「へ?外でほっつき歩いてたのに?朱虎なんて外出たまんまだぞ?」

 朱虎氏はともかく、自分が食らってる麒麟くん絡みの儀式魔法の話をしてるのに、その事が頭からすっぽ抜けてる黒鳥。ほんとこの子すっかり頭のネジが抜けてるわねえ、どうしてこうなった?もしかして、微妙に儀式魔法の方が、進行してる?


「何言ってるの、少なくとも君は、今話題にしてる儀式魔法の繋がりがあるんでしょ?」

 指摘したら、あ、と口だけ開けて固まった。あたしも見落としてたからあんまり人の事言えないけど、当事者だってのに、ほんとこのアホの子、世話が焼けるわねえ。


【お主、もちっと悪賢いというか、賢しい所があったと思ったのじゃが……?】

 白狼さんがついに呆れた。デスヨネー。


「儀式魔法の弊害で子供返りしてるとは言っても、ちょっと頭のネジが飛び過ぎてる気がするわね……?」

 そう言ったら、ほぼ全員に同意されて、黒鳥ががっくりしてしまった。すまぬ、ちょっと言い過ぎた。


【だがそうすると、儀式魔法が妾に飛んだのは、そもそも蛇が資格を喪っていた故、か?】

 白狼さんが唸るようにそう呟く。まあ今の話だと、その可能性が高そうよね。


「そう言うことになるな?そもそも捻じ曲げる以前に、資格がないものには、飛ぶわけないからな、あの魔法。それでも朱虎に行かずに俺に来たのには、なんか悪意がある気がしないでもない……二連続供出とか、完全に発動完了してると俺、存在も怪しいレベルになっちまうぞ?」

 今でも割と色々不具合出てるのにさあ、と黒鳥がぼやく。


【その件も問題だが、お主、そこの男と何をやらかしたんじゃ?混ざってしまっておるではないか】

 白狼さんが、今度はカル君の方を見ながら黒鳥にツッコミを入れている。というか、その言い方はどうかと思います。いや、あたしは白狼さんに他意はないと思うんだけど、ランディさんがなんかにやにやしだしたので……


「言い方ァ……情報交換と、あと今のこの顔借りる契約してたら、なんか儀式魔法と神罰とでこんがらがっちゃったんだよ……」

 あれ、黒鳥はそんな認識でいたのか。あたしが前に説教した話覚えてないのか?


「そうじゃなくて、元々の契約に無理と不備があったんだってば。君、人系種族と聖獣の属性力差、考えてなかったでしょ?」

 しょうがないので、再度説明するか、と口を挟む。途端に白狼さんとレイクさんが同時に唸った。ちょっとびっくりするから唸るときは予告して頂けませんかね!?


「あ、うっ、そ、そうだった。説明、されてた、な?」

 あ、だめだ、これ黒鳥、完全に言われるまで忘れてた奴だわ。しどろもどろになってる。


「いやまあ、それは俺も考えが甘かったし、同意したのは確かだからさ、あんまり責めてやるなよ、嬢ちゃん」

 カル君がそんな事を言い出したけど、今宥めるべきはあたしじゃないと思うんだなあ!


【黒鳥よ、他国の人間にそのようなちょっかいをだすとは、それこそ守護聖獣の名折れ、元の姿であったならひと齧りでは済まぬぞ?】

 白狼さんが怒りを込めてお説教モードに入った。レイクさんはうむ、とだけ言って、黒鳥を威圧するように睨んでいる。白狼さんが要請したらがぶり、くらいはやりかねない。


 結局そのまま、まるっと一時間くらい、白狼さんの正論、もといお説教は続いた。あたしたちも拝聴させていただいたけど、正直あたしたちにも、ちょっと耳が痛い話だったとだけ、言っておく。

ランディさん……?

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