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13.王都直行便。

お空を飛んでまたもや移動の巻。

【殲滅完了を宣言。報告の為一旦王都に戻る。そこなお嬢さんもご一緒頂きたい】

 周囲の視線の向きを気にもしない様子で、マグナスレイン様が重々しく宣言する。


 イードさんもそっち行くみたいだし、一人で城塞お留守番はだめらしいから、特に否やはないですね……


「はあい。取り合えずこのまま移動でいいのかしら?」

【まあ、やむを得んな。モイも行くだろうし、一人で留守番はさせられぬ】

 ハイウィンさんが頷く。



 そんなわけで、海から直接王都とやらに行くことになりました。正直想定外だけど、まあしょうがないね。やらかしちゃった自覚はありまーす。


【お嬢さんさっきは治癒ありがとうねー。ついうっかり癖でやらかして、落っこちるかと思ったわ】

 サクシュカさんがするりと寄ってきて、そう言うとてへへ、と笑った。龍だけど、可愛い……だと……?


【私はサクシュカ、陛下の末の妹だけど、軍人だからあんま血筋とかは気にしなくていいからねー様付けとかしないでねー】

「私はカーラです。よろしくお願いしますね」

 ここは当たり障りなく答えておく。気にしなくていいと言われて、本当に気にしなくていい案件は、あんまり多くないからなあ。


 移動中には色々話を聞いた。流石に今回の遠征は女性はサクシュカさんだけだそうだ。

 まあ元々、女性の王族自体が数が少ないので、比率的にはそんなにおかしくもないらしい。


 女系相続なので、女性が生まれるまでは女王様も頑張るけど、基本女性が生まれた時点で打ち止めなんだって。

 なので、ふた腹目で女性が生まれたマグナスレイン様やサクシュカさんの代は、王族自体が凄く少ないのだそうだ。

 で、全然女子が生まれなかったイードさんの代は男子二十人女子三人。といっても男子全員存命なわけでもないそうなので、今居るのは十六人と言ったかな?二人はスタンピード処理の際に戦死、ふたりは墜落事故だそうだ。龍の正面衝突とかあるんだろうか?いや、同時とは限らないね。

 一見末子相続っぽいけど、実際には女子も複数いっぺんに生まれるから、誰が継ぐかは純粋に能力と本人の希望で決まるそうな。

 サクシュカさんは結婚しなきゃいけないのがめんどくさいから軍に入ったとか言ってる。

 マジか、と思ったけど、現女王様が後継ぎ産むまでとにかく大変だった話を聞くと、まあそんなこともあるわねって……


 なお様付けとさん付けの違いは原則本人の希望です。サクシュカさんが様付けをめっちゃ嫌がった。はい。

 ちなみにイードさんもそうだ。カルセスト王子?なんとなく王子って付けたくなるのよあの人。流石にそんな呼び方はしない、というか名前で呼んだことないけど。ぶっちゃけ考える時の癖になっちゃってます。

 マグナスレイン様はシエラが様付けしてるので、右に倣えであります。この国唯一の将軍職なんですって。


 王族にして軍人相手にふんわりした対応してる自覚はあるけど、まあそういうのに縁がある人生送ってなかったしね。



 海から陸に戻り、田園地帯を整然と進む龍の群れの一番後ろに、ハイウィンさんに乗って付いていく。隣にはイードさんの青鷺。

 最初はもうちょっと前の方にいたんだけど、あたしにもイードさんにも、入れ代わり立ち代わり龍の皆さんが挨拶にくるので、隊列が乱れる!と、一番後ろに下げられて、接触禁止令が出たという次第。


【海は長期戦になりがちだし、先ほども聞いたように、損耗も出るからな、そなたのお陰でうまくいった故、皆浮かれて居るわ】

 ハイウィンさんは相変わらず辛辣風味。というか、つまり、戦死したというふたりは、どちらも海で死んでしまったのかしら。


「……陸で彼等に敵うものはそういないよ。海は、まあ残念ながら見ての通りだが。恐らく、君がいなければ、戦死者が増えていたろうな」

 イードさんが静かな声でそう言って、前方を見る。

 確かに、サクシュカさんの傷は、大分深そうに見えた。しかも彼女は数少ない治癒持ち。あの後もちょいちょい狙われていたしなあ。

 スタンピードと言いつつ、あの敵割と理性的よね。そこが地味に怖い。

 なおあたしの所には、流石に敵の手は届かなかった。ハイウィンさん容赦なく龍たちよりも上空に陣取ってたし。おかげで戦況も良く見えたから丁度良かった。


 いや、そもそも、敵の眼がこっちに向く前に大打撃喰らわせちゃったんでしたね……



 やがて、進行方向に、大きな街が見えてきた。その端っこに、これまた大きなお城……これも城塞だねえ……

 時計塔が一つと、推定見張り塔が二つある大きなお城は、丘の上に建っている。

 夕方の、そろそろ日没が近い頃。三つある塔の上に、赤や白の灯が灯る。なんか、色のせいで、航空障害灯みたいだな?


「あの灯は衝突防止のための仕組みだな。これも異界の民の考案だそうだが」

 ……ですよねー、知ってた。


 皆でお城の敷地内に飛んでいく。着地と同時に人型に戻る龍の軍隊御一行様。

 だいたい皆マントに上半身裸でってええええええ!?

 思い切り、乙女的に見てはならないものを見てしまって、がばっとハイウィンさんの背に伏せるあたし。


 マントすらなしの全裸はやめましょう全裸は!!!

 あ、いえ、見えたのは横顔と背中とおしりなので、多分、せーふ。


【こらファガットルース、人前ぞ!マントはともかく、下着くらいつけんか!】

 見とがめて、全裸君を叱った渋い声は、マグナスレイン様。ですよねええええ?!


「うわごめんなさいごめんなさい、今朝うっかり全部洗濯しちゃってて!忘れてた!」

 ファガットルースと呼ばれた人は、赤毛に銀色のメッシュが入った、割と見るからにやんちゃそうな横顔の男性だったわけですが。うん、一見の印象通りの人っぽいですね?


「何やってるんだ、あいつは……」

 あいつ呼ばわりしてるってことは、イードさんと同い年くらいなのかしら。顔立ちも割と似ているし。


 マグナスレイン様以外の龍のみなさんが全員降りたので、あたしとイードさんも降りる。あたしが降りたらハイウィンさんもヒト型になった。青鷺さんは送還されていった。

 降りなかったマグナスレイン様はそのままくるりと方向転換して、お城裏手の森の方に飛んで行った。あれ、こっち来ないんだ。


 そういえばイードさん、水蛇さんたち送還してなかった気がするけど平気なのかしら。


「モイよ、長物どもは送還しておらなんだが良いのか?」

 ハイウィンさんが同じ疑問を持ったようで、訊ねている。


「ああ、見回りついでに北海で食事をしていくというのでそのままだ。どうせ住処から然程離れてもいないし、勝手に帰ると言っていた」

 自分で帰ることもできるんだ、そっか。

 ジャッキーは今回は召喚じゃなくてそのまま城塞から連れてきたから、そうはいかないんだけどね、多分。

 兎を王都から国境まで一人旅なんて無茶させられません。


(それは無理だなー!狼辺りにべろんごっくんで終わりそう)

 デスヨネー。そんなことはしないから、安心してね?


 水色のメッシュの入った長い銀髪をなびかせて、ほっそりした綺麗なお姉さんが走ってくる。

 身体のラインに合わせたボディスとタイツに、腰にふわっとしたサッシュなぞ巻いている。まあどう見てもサクシュカさんだね?


「うふふー、目線同じ!野郎どもは置いといて、こちらで一緒に支度しましょ?」

「ああ、そうじゃな、我はともかく、この子には衣装を貸して貰えるとありがたい」

 嬉しそうなサクシュカさんに、ハイウィンさんが頷いてそんなことを言い出した。

 二人並んでると本当に対照的。ハイウィンさんはばいんぼいんですのでね?


 ……ってはい?衣装?


 あ、そういえば今日の恰好、普段着用に村のおばさんから買った(代金はイードさんが出してくれた)古着と、イードさんのコート、でしたね……いや、もし何かあって濡れたらやだなって……


 確かにまあいくらざっくばらんなお国柄らしくても、お城に上がるのに、古着とメンズのコートは、いかんよな、うん……


 というわけで、おとなしくサクシュカさんにドナドナされるあたしです。

 ジャッキーも一緒のままだけどまあ別にいいか、兎だし。

ここまで男女比がおかしいのはハルマナートの王族だけです、多分。


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