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ロケット・バカ・ランチャー

俺は塗装が落ちた扉の鍵穴に鍵を入れた。

「はぁー帰ったぞ」


もちろん、返ってくる声はーない。

俺の声は部屋の殺風景の暑さに吸いこまれるはずだ。はずだった。

「きたない」

手から声が聞こえた。いや、手の中からか。

俺は手を開く。

その中には、夕日で輝く100円玉があった。

「うるさい!えー名前は?」

「円々姫です」

俺は扉を閉めた。

・・・

「で、お前があの「ひつじ」が言っていた、100円玉か。俺をトラックから

救ってくれた角生やし女とお前は、同一人物なんだな。姿を変えられるのだな。」

俺は机に置いてある100円玉に話しかける。

しかし、話しかけているのが

100円だとして、

夕日を浴びて机の上に倒れているのはどうかと思う。

ーこいつ、話を聞いているか。

「お前、自力で立てるか」

「100円玉をなめないてください」


しかし、100円玉は立ち上がることなく、

オレンジに染まった机てぽつんと倒れているままだった。

「無理・・・」

「分かったよ」


俺は机に置いてあった筆箱を壁にして、100円玉を立たせる。

これで、やっと、まともに話せる。

「なあ、100円玉・・・」

「円々姫です」

「お前、えんえんと泣くのか。泣くやつは嫌いだ」

「えん」は金の「円」です。それに私は泣きません。」

正直、100円玉に名前をつけて呼ぶのは、はずかしい。

それに相手は女だぞ。あの見た目と声からして、たぶん。

たが、それはすべて、100億円のため。恥を捨てろ、由。

「早く本題に入りましょう。カンニング様」

そうだ。俺はと数争いを止めないとな。だが

「カンニング様って、誰だ」

「あなた様の異名です。この計画がばれたら、あなたは終わりです」

夕日は深くしずみ、日は深い闇に飲みこまれる。

いやな寒さが俺の体に走る。

ー点数争いだけなのに、名前だけで終わる?

「その恐怖からあなたのようなくそ人間を守るため、僕、

円々姫がいる。カンニングが言う「ひつじ」は、僕の生みの親、知識の神だ」

「あいつ、知識の神なのか。ひつじすぎるだろ。」

100円玉ー円々姫は笑うことなく、俺をみつめるばかりだ。100円玉だからか。

「カンニング様はバディーを組むのでしょ」

ふいに円々姫が言う。


「は、バディーは、お前だろ」

「私はカンニング様の守護神のようなものです。でも、やめたい。カンニング様は、くそ人間そのものだから」

「何!」

たしかに、高校入学寸前にこのアパートを借りて、そうじもろくにせず、金もまともにないが、くそくそうるさいような気がする。

人間を下に見るな!上に見ろよ!

が、神は気にしなず、言い放つ。

「そんな人間様に、今日の午後7時にバティーの面談がありまーす」

「うそだろ!」

こんなよれよれ制服でバディーと会うわけには、いかない。

くそは後にし、見た目はなんとかしなければ。

3秒後、俺は後悔をする。まともな服がないことに。

時間は、6時50分を切った。

・・・

俺は二人さびしく、路地裏を歩いていた。

真夏の夜は、不愉快だ。この服だと、一層そうだ。

風通しは悪く、俺ら生徒を汁地獄へと落とし入れる。

純黒な厚手の布、そして、5つの釜のボタン。

学ランだ。

「暑くないのですか」

円々が俺の学ラン姿を見る。

「何だよ!」

俺は円円姫から一歩離れる。

今、円円姫は、シャツ一枚角生やし女の姿だった。

額の100と

あざわらうような目の視線に負けたのではない、

男と女の関係だからだ。

奥に行くにつれ、人が減り、建物が減り人口的な光が減る。俺たちの視界は月というチーズの固まりが現れた。

チーズの固まりの下、その悲しい一家があった。

「これか」

「そうですね」

背後から円々姫が声を投げる。

「うきゃ!怖いじゃないか」

「いいものですね。人間って」

「うるせぇ!」

俺は一家に向かってかけ出した。

・・・

この先に運命のバディーがいる。あほな人間は、嫌だが。

円々姫を後ろに、俺は扉の寺をにぎる。

開けた瞬間、高揚した気持ちは一瞬にして萎み、

邪悪が俺に押しよせる。

「由様~!」

妖怪のような 邪悪な目、

ばか殿のちょんまげのように もさもさ

とした髪から伸びる一房。

今、俺の体に抱きついているたまついているこの男は、

へいよ ようき。

カンニング中、これは間違いだと思った解答用紙の主人本人だ。

そう、あほを通りこおして、ばかなやつだ。

「なんで ようきがここに!」

俺はようきをつき飛ばす。

ようきは、ひょろひょろと俺から離れる。

「ようきは別名です。 僕は誇り高き潜入スパイ、0点男だ!」

「・・・」

高々と手を上げ、ばか笑いするこいつとは真逆に

俺は夜と同様、冷々とした目でこいつを睨んでいた。

「やっぱり、この神は、あなたのバディーにぴったりですね」

「う、へ、こいつ。神なのか」

整理すると、俺の目の前で笑うこいつは、無天男という名が本名で、神様で、俺のバディーで、なんかの潜入スパイでー、まず、なんのスパイだ!

なんで、ここにいる!

「まずは、あがってください。我がかくれ家へ!」俺は、自分の頭をおさえながら、真っ暗な部屋に歩み出した。

・・・

俺と円々姫はようきに捉された席に座っていた。

「なんで、お前が俺の隣にいるんだよ」

「いいじゃないですか。人間観察」

「由様、コーヒーいります?」

ようきが月光に照らされるテーブルの上に、2つティーカップを置く。

ティーカップの中身は、コーヒーというよりも魔女スープ

のようにへどろだった。

「おい、これコーヒーか?」

「そうですよ、愛のカエル入りで」

へどろの水面から、あわをふき出したカエルの顔面が浮き出る。

こいつ、本気なのか?まあ、いい。

聞きたいことは、ただ一つだ。

ようきが、俺の正面に座る。

「ようき、お前が俺のバディーになることは、本当なんだな」

「ようきではなく、無天男です 。でも、はい。僕があなたのバディーになります。」

ようきが、胸張って言う。

「元々、こいつは、私たちの世界から送りこまれた。神の一族の潜人スパイなのです。

カンニング様と同じ計画の」

円々姫の説明に、ようきがこくこくとうなずく。

「同じって、悪魔と悪魔と天使の点数争いのことか」

「そう、こいつは前から、行方不明の天使と悪魔をこの地で探す スパイなのです。見つからないが」

円々姫が俺の隣で、深いため息をつき、

カエルコーヒーをじゅるじゅると飲み始めた。

「そう、見つからないんです。高校だとは、見当ついているのですが」

「なぜ、俺らの高校なんだ」

「なぜって、そこで情報交換が行われているからです」

「うそだろ!」

あんな学校で、そんな邪悪そうな取り引きが行われているのか。点数争いだけで、大げさすぎないか。

突如、円々姫が、はき出した。

「ぐへぐへ、知らないで、悠々とカンニングしてたのですか。ぐへ、ぐへ」

コーヒーをじゅるじゅると飲む、

それと同時に、はき出しているのか

ふき出しているのか分からないが、ぐへぐへと出している。

ーこいつ、大丈夫か。

すると、突然ようきに手をにぎられる。

「おい!」

「もう、時間がないんです!世界が動き出しているんです!

僕と組んで、情報屋をとっつかまえて、天使と悪魔を見つけましょう!」

たしかに、天使と悪魔の情報をどんどん積み重ねれば、

本人たちを見つけれるかもしれない。

その後、点数をちょちょいのちょいすれば、

俺は金持ちになれる!

ようきとバディーになるのは、100億円のためだ。

「お前のバディーに、なってやる」

「ありがとうごさいます!」

ようきが俺の腕をぶんぶん振る。

円々姫は、コーヒーをかかげながら、ぐへぐへと笑っている。

直後、ようきが振る手は止まった。

「どうした」

「見つかっちゃった」

その時、俺が見たようきの顔は、ようきではなく、本名の0点男の顔だった。真っ赤の目、口から出るよだれ、武者ぶるいする一房の髪。

0点男の視線の先、そこには、うす汚れた窓に映る

俺らを見る、人影があった。

0点男、スパイに見つかった。やってしまえ!」

俺は目を疑った。0点男の背中と服の間から

ロケットランチャー級の武器がめりめりと現れる。

いや、構成された。

「待て、やめろ!」

ロケットランチャーを構えた無天男は、神でも止められない。

「さらば、僕の家!消えろーーッ!」

証拠隠滅のつもりか!


ある一夜に、ある一角で、神と人間を含めた

爆発事故が起きたことは、犯人とそこにいたスパイ

以外誰も知らない。

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