表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
23/27

金は逆心。

5日目後章


俺は誰もいなくなった部屋で座っていた。

日が暮れ始め、暗くなる頃だった。

「・・・・・・」

目が腫れていた。泣いたからだ。父が消え、円々

姫が去った数秒後に泣いたからだ。

泣いたのは母が撃たれてから一度もなかったのに。

心が痛い。化け物になっている証拠だ。きっと。

「レイの言った通り、俺は信じすぎていた。

裏切り者がいたのに」

裏切り者は、円々姫だ。親殺しの円々姫。

でも、それが本音だとしても、信じたくない。

「だけど、裏切り者なのかもしれない。」

その本音が答えのなかった行動に答えを出したから。そして、真実もつくった。

ーーひつじの壁ドンの問題ーー

答え、死神との友交関係をつくるため。

ーー大統領を誘招した理由ーー

答え、死神に殺させるため。

ーー正方形が『・・・ぷっ』と笑った理由ーー

答え、裏切り者がいるというすごい真実ではなく、

好きというどうでも良い真実を言ったから。

ーー鬼じゃんけんの問題ーー

答え、使い者にならなくなった鬼を捨てるため。

真実、円々姫が所属するひつじが率いる

団体が俺の裏切り者だった。

「ああああああ、あ! なんだったんだよ!

答えがこれか!」

俺はあお向けの状態になるように倒れる。

消えてゆく夕日が、俺を刺す。起きろと言わ

れている気分だ。

「でも、もうどうでもいい。悪魔絶滅戦争

なんて、俺には関係ない。父も消えた。俺に

残っているのは、この紙ーーテストだ。」

円々姫に押し付けられた紙はテストだった。

そこには「長崎由」と「100点」が記入されていた。

それに、日付を見ると、俺がカンニングをし始めた

頃のものだった。これは、俺が初めて百金した時のテストだ。

「ん、裏に何か書いてある」

テストを裏返す。そこには、こんな文章があった。

『200億円の豪邸はここ→』と地図。

「200億円の豪邸、それは、戦争がまだぼっぱつ

していない「領土問題」という平和な頃にできた

ワイロで買った豪邸のことか。まあ、そのワイロ

の大半は父の仲間のものだけど。

「父の形見ぐらいはもらいにいくか」

俺は身支度を始める。


ここは、ひつじの会議室。

そこでは、デスクに座るひつじに対して、つるき

が見ていた。

「何の用ですか、ひつじ。私はとっくの昔に

心を入れ替えました」

つるきはこの場所にいるのが苦痛だった。

つるき一匹に対して、何千匹の視線の中

にいる感じがするからだ。

「その良心で、カンニングにこの情報を届けてほしい」

「何ですか、これは」

ひつじが渡したのは 二枚の名刺サイズの

紙だった。そこには、電話番号が記入され

ていた。

「これ、誰の電話番号ですか?」

「我のと、0点男のものだ。これは、カン

ニングがいつか必要となるものだ。」

「これは立派な情報漏洩ですよ」

「大夫丈だ。我の意思だからな。 そして、

お前を人間の生きる世界に落とすことも

私の意思だ」

つるきの足元を震源に、床が一枚一枚落ち始める。

「・・・!」

床の下から現れたのは、雲の群像だった。

ひつじは上目づかいで、つるきに言う。

もう、つるきは恐怖を感じることはなかった。

「落ちろ、つるき」

「頑張ります」

つるきは人間の生きる世界に落ちていった。

ひつじはつるきを見下し、安堵の吐息ついた。

「まず、一つは終わったな。後は・・」

「僕たちだ」

会議室の壁から死神たちが現れた。

その団体で、一匹だけひつじと面と向かう死神

がいた。

赤いマントに、赤いマスク。権力を求めた、バン・ドルクだ。

ひつじはデスクから立ち上がる。

「いや、バン・ドルク。久しぶり。他の死神たちも」

「裏切り者のひつじ。お前を殺しにきた」

ドルクは大鎌の刃をひつじに向ける。

それでも、ひつじは動じなかった。

「いつ、我が天使のボス様に逆った。 カンニングを

誘導し、悪魔のボスの情報屋を捕獲し、鬼を

退治し、死神と同盟を結んで、カンニングと天使の

ボス様を接触され、悪魔のボスを誘拐し、必要

がなくなったレイをくびにしたぞ」

「あきらめが悪いぞ。悪魔のボスを誘拐って、

僕たちがするつもりだったのに、先にお前の団体

の二人がやりやがってよ。」

「なら、二人も裏切り者だろ」

「いや、円々姫は僕ら天使の団体に戻った。

逆に、 0点男は知らん。 」

一度、ドルクは視線を落とし、ひつじと向き直る。

「お前はどうする。戻るか・逃げるか」

ひつじはそんなことを言うドルクから何かを

感じたらしかった。

「ドルク、優しくなったな」

「ターゲットのカンニングに言われたんだよ。

権力は軽いと。

僕の人生を全否定された気分になった。

で、お前はどうする」

ひつじはひつじの仮面を外す。現れた美男に

死神たちは驚くことはなかった。

知っているから。

「我は戦う。ドルクたちが天使の仲間だという

事実が壊れない限り。」


死神たちは鎌を構える。

ひつじは、胸を張り、歌う。

「ひつじの歌」

「ひつじが一匹。ひつじが~1匹。 ひつじが一匹。ひつじが一匹。ひつじが一匹。ひつじが一匹。

・・・・・」

ーーーこいつ、すごい。

自分が世界で一匹しか存在しないことを

自覚しながらも、教えた風に自分を数えている。

頭が痛い。

まるで、脳裏にひつじがふくらんでいく気分だ。

死神が十数匹倒れた。でも、まだ、ドルクは立っている。

「僕は負けない!」

対抗する術を死神は考える。

そして、思い付き歌う。

「死神の歌。

死神が一匹。死神が一匹。死神が一匹。死神は一匹。」

ひつじも対抗する。

「ひつじが一匹!ひつじが一匹!」

「死神が一匹!死神が一匹!」

歌の対抗戦が行われている頃、

俺は父の200億円の豪邸の前にいた。


夜景にそびえ立つ大きな建物。

4階まであったが2階までに減った。

隣には、運動ができる建物がある。

その隣には、泳ぎ場まである。

ここでは、たくさんの人間が学ぶ。

200億円の豪邸の正体、それは

「俺たちの学校」

今思えば、正体不明の校長が父だと考えると

しっくりくる。

文化・体育祭を許可したのも父だし、

「にせものの俺」として学校に来たのも父だったからだ。

結果的に、父はこのセ国の大統領でありながら、

この学校の校長でもありながら、悪魔のボスという

十分すぎる副業男だったわけだ。

「俺が行く場所は校長室だな。

確か、校長室は1階にあったはず」

玄箱で外靴を脱ぎ、中靴にはき替える。

廊下を歩く。誰もいない学校は本当に静かだ。

「見つけた」

俺は校長室の扉の前に立っている。

そして、その扉を押す。

「死」を身近に考えていた父の部屋だ。

そう分かったのは、

白い空間にただ一つ机があるだけだったからだ。

机の上にはテストよりは大きい紙があった。

紙には、セ国の地形の図と逆三角形のセ国

の断面図が書かれていた。

不思議だったのが、立体図だった。

妙に、曲面が凸凹だ。

ーーこれが、形見?

「私の生徒にしては、上来出ですよ。カンニング君」

 背後から声が聞こえた。俺を生徒として、

それも「君」と呼ぶのはあいつしかいない。

ーー少し先生としての自覚はできたか。

「久しぶりだな、つるき」

「こんばんわです」

俺はつるきの方に体を向ける。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ