表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
15/27

重くない権力

私は足と拳で車を叩きつぶす。

車の破片が私の頬を斬るが、血は出ない。なぜ

なら私は、全身が金属だからだ。でも、金属だ

からこそ、できた傷は一生残る。

傷ついていく体を横目で見る。

ーー私は金という価値しかない。

いらない感情を出してしまった。そのせいで、夜空から出現した大鎌をぶんまわす男に瞬時に対応が

できなかった。


私は大鎌で打たれた。


次の瞬間、俺は横目で、球が飛ぶように、円々姫

がぶっ飛んでいるのを捉えた。

「円々姫!!」

円々姫は地面に突撃する。 体が衝突に耐えきれず

気体を吐く。

「おいおい おい!大丈夫か!」

こんなに焦ったことはない。人生の一度も。

俺は父と一緒に円々姫に駆け寄る。傷ついた

肩に手を置いて、円々姫をぶんぶんと振る。

「生きているか! 死んでないよな!」

「カンニング様って、双子だったんですか?」

まずい。意識までぶっ飛んでいる。

傷は顔から腹部まで広がっている。金属だから

だとしても、これはひどい。額の100に元気がない。

「金は弱いな」

「なんだと!」

「相手が分からないまま、挑発に乗ったのが悪かった。俺が目にした光景は異常だった。

複数のヘッドライトが集まる一点に、大鎌を

もった男は立っていた。

赤いマントに、赤いマスク。

こいつから殺気が感じる。 いや、正義の

殺気というべきか。

「お前は誰だ」

「死神ヒーローのボン・ドルクだ!」

ーー円々姫をぶっ飛ばした死神が、ヒーローだと!

「こいつだ」

「え」

父はドルクを見て、怯えていた。

「こいつだ。天使のボスのグル。

史上最悪の最級のヒーロー」

「そう!僕は最級なのだ!」

ドルクはヒーローらしい、変なポーズをする。

ボーズと同時に、こいつの数がエフェクトみたい

に飛び出す。


1 0000 0000 0000 0000 (1兆)


この数を見た時、俺は鬼のときのように

恋はしなかった。

なぜなら、このあと数が

1 0000 0000 0000 0005/10(十分の一兆五)

になった時、確信したからだ。

この数はこいつが人を殺したーーいや、ヒーロー

だから・・・悪人を倒した数を語っている。きっと、

0.5は、円々姫を半分倒したことを示しているだろう。

ーー許せない

さっきから、壁から殺気を感じる。こいつら、不意打ちをする気だ。

「さあ、僕の仲間たちよ。あの悪人に

向かって突っこんでいけ!」

この言動に反抗する者が現れた。

「待て」

殺気を帯びていた壁から男が現れる。

男は俺たちの前に出る。

その男の正体は・・・

「ようき!」

「先輩、ひどいじゃないですか。僕を置いて

逃げるなんて。でも、このヒーローのほうが僕は

嫌いです。」

殺気は不意打ちなんかではなかった。

大切な化け物の殺気だった。

「・・・ようき」

背中だけでも分かる。こいつのぼろぼろさが。

ーーおとりになってくれて、ありがとう。

ようきの顔の半分は、血で染まっていた。それを

初めに知るのは、そいつと正面に立つドルクだろう。

「お前もこいつらの仲間か?」

ようきは言う。

「バディーです」

俺はようきの隣に並ぶ。

「俺たちとたたかうか」

「バディー が来たところで僕に勝てるわけがない。

なぜなら、僕たちは天使と一緒に左国と右国を

統一した死神だぞ。権力でお前たちを消すこと

だって、できる」

ニュースで新たな支配者とか言っていたけど、こいつ

らのことだったのか。天使のボスの支配力が広がっている。

しかし、ドルクの考えには納得できないな。

「死神ヒーローくんは、地位や権力が好きなのか」

「そうだよ。世界は権力で、できている」

「いや、違う 世界は…」

俺はドルクがぶっ飛ばした円々姫の手を

取る。すると、円々姫は俺の手の中で100円玉へ

と変化した。変化する瞬間の円々姫は、うれしそうだった。

「家族だ」

父が人間を愛したなら、俺にとって、金は家族だ。

結局、世界は金だ。

100円玉をコイントスする。宙に回転している

間、俺は左手にテストを持ち、腕を交差させる。

「百金!」

これで三度目の変身になる。

9割が化け物で、1割が人間になった。

『神様は軽いですよ』

百金をした直後に脳に浮かんだ言葉がこれ

だった。

「お目覚めか、円々姫」

『おはようございます、カンニング様』

こいつは神様は軽いと言った。なら、死神もか。

ーーいい戦法を思いついちゃった。


父の死をかけた争いが、今始まる。


「今度こそ行け! 僕の仲間たちよ!」

光演出から解放された車たちは、軌道を

変え、突っ込み始めた。

「先輩、僕は何を撃てばいいのですか?」

「お前は俺の父を守れ。そして、草むしりの

処分を頼む」

「はい!」

ようきは父の方へ、俺は車たちに向かって駆ける。

「おりゃ、おりゃ、おりゃ!お前の体を引いてやる!」

一台が団体から外れて、俺に向かって突進

してきた。俺を完全にばかにしている。

ーーこういう協調性のないやつが、社会を汚く

するのだ。

いらない情報は必要ない。

カンニングと同じだ。

そして、今から行うことは「草むしり」だ。

俺は突進してきた車のフロントガラスを

殴って割る。

「ーーッ!」

フロントガラスから手を伸ばし、驚く運転手

の顔をつかむ。そして、車から引っぱり出す。

「お前は処分行きだ!」

俺はこいつを後方に捨てる。

「ぎゃゃゃゃゃゃゃーーッ!」

俺は優しいからこいつを殺せない。だから、罪はやつに着させる。

「草むしり」・・・人は草をむしっているだけで、実際に草を殺すのは、ごみ集収所という場所だ。

「やっと届きました。先輩からの雑草が」

ようきならやってくれる。飛んでくる死神に銃口を

向け、撃つ。

ようきの爆発音とともに、俺は車たちに衝突する。

「どりゃ、どりゃ、どりゃ、どりゃ、どりゃーッ!」

フロントガラスにつっこんで、引っぱって 引っこ抜く。

爽快だった。この両手で権力のあるやつをむしることが。

ようきもそうに違いない。

ーー父はこんな俺の姿を見て、がっかりするだろうか。

「あれが由の変身した姿か」

父はようきにそんなことを聞いた。ようきは俺

から届いた大量の死神を撃ち殺していた。

「そうですよ。先輩はこの変身で、自分を殺

して、化け物になりたいと言っています。息子に

がっかりしましたか」

「いや。お前たちが由を受け入れてくれた

たことを感謝している。おかげで、由に殺されかけたが」

ようきは足元に転がる死神を見て言う。

「一人ぐらいは先輩を本名で呼ぶ人がいて、

いいと思いますが」

「そうだな」


車の群像を斬りさく大鎌を横目で捉えた。

ーーやっと来たか。ヒーロー。

俺は大鎌を受け取める。

「ドルクはそんな俺を見て激する。

「鎌を頭で受け取めるとは、見事ともいえねえな!」

「いいだろ、これで!」

そう、俺は鎌を頭で受け取めたのだ。首を曲げ

ながら、圧力をかけられるこの状況は痛い。

本当に顔が100円玉で良かった。

鎌と顔の間に火花が散る。首が折れるかもしれ

ない。だとしても、俺はこのまま行く。

「僕の権力に押しつぶされろ!」

「権力は軽いんだよ。今回は、物理的だが」

俺は頭をこのままにして、ドルクの足に手を

伸ばす。 そして足をにぎる。

「きゃ 何をする。えっち!」

鎌が一瞬だけ離れる。 それを見据えて、

俺は足を一歩踏み出し、体をひねる。

ーーえっちとはひどいな。これが俺の戦い方なのに

ベルクの足を持って、俺はぶん回る。

「お前の権力をぶん回してやる!」

「うわわわわわーッ!」

これぞ、雑草でいっぱいになったごみ袋を回す戦法。

すごく目が回るが、一緒にドルクも回っている

おかげで、車たちは近づきたといはず。それにドルクも目が回っているはず。

「僕はまだ負けていない !」

「まだ、言うか」

「だって僕たちは破壊神にたのんで、明日の

お前たちの文化・体育祭をつぶしてもらうのだから!」

俺は回転のスピードを上げる。

すると、ドルクが持っていた大鎌が回る勢い

に負けて飛んでいった。

赤いマントも、赤いマスクも、服も、下着も。

今のこいつは、権力があるというか、落ちこぼれた男だな。

俺は回転をやめ、こいつを地面に叩きつける。

「ここで反省しろ。落ちこぼれのヒーローめが」

上半身裸のドルクはぐったりと倒れた。

ドルクの度でかい数が崩れた瞬間だった。


数は最高記録だったのに、変な方法で勝ってしまった。


父とようきが俺を迎えてくれた。

「おつかれさまです、先輩」

ようきが俺の肩をぽんぽんたたく。こいつは頭

から血が出るまで頑張ってくれたんだ。後で俺なり

の言葉で精一杯ほめてやろう。

『私もほめてくださいね、カンニング様』

「お前も頑張ったからな」

自分の100円玉の頭とようきの頭をなでてから、父に話しかけた。

「文化・体育祭を許可したらしいな」

文化・体育祭とは 二日前の優先権決定戦

で合点になった結果、文化祭と体育祭を同じ

日に行うというものだ。

その祭が、明日だったとは。

「そうだよ 由が死神に勝ったことの祝いと考えればいい」

その日に、破壊神が俺たちをつぶしにくるらしい

けど、それはだまっておこう。

そして、父はこうも言った。

「俺が生きている以上、戦争は終らないぞ」

「それは大丈夫だ。俺たちには家族がいる」

家族同様の円々姫、化け物のようき、それに

俺らのボス・イケメン顔を隠したひつじだっている。

そんな確信があるから、父にこう言った。

「俺たちと一緒に戦争を終らせよう」

人工的な光と壊れたヘッドライトの光が、俺たちを

隠していった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ