不幸の卵
希望から疎外されて
明日の行方はわからず
昨日をどこかに置き忘れ
今日という日に威圧されて
電車に乗ると動悸がして
他人と話すと汗が止まらず
孤独こそ自己防衛だと思い込み
目をつぶり
耳を塞ぎ
心を閉ざして
自分の内側に潜りこんだその先にあったのは
一個の卵だった
黒くずっしりと重いその卵に
僕は不幸と名付けた
幸福とは縁遠い人生だった
愛した人には捨てられて
嫌いな奴に利用され
優しさを食い物にされ
心をずたずたにされ
夢を否定され
目標を踏みにじられて
毎日死ぬことだけを考えて
暗い部屋で流した涙のぬくもりひとつで
僕はこの卵を温めてきたのだ
幸福なんて糞食らえ
お前たちのいう幸福など欲しいものか
この卵がいつか孵って
誰もが目を背けるような化け物が生まれたとき
僕は僕だけの幸福を知るのだ