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はじまり
出された紅茶をひと口。ふくむと、フワリと香りの佳さに包み込まれる。
「印度の真珠」と命名された紅茶らしい。そう告げた本人は、忙しそうに何やら事務仕事をしている。
ここはさまざまな時代の、さまざまな物を置いてある店。古物店、アンティークショップ、ギャラリーなどと呼ばれるような、そういう場所。そこで私は店主に出された紅茶を飲み、店のレジ兼作業場兼のカウンターでのんびりと寛いでいる。
周囲をぐるっと見渡すと、本当にさまざまなものが所狭しと置かれている。ジャンルが統一されていないので多少混沌とはしているが、掃除はなされているため不潔感はない。ミステリアスな空気感を醸し出しているが、不快感や不安感はなく、むしろ妙に惹かれる場所。
それが、ここ <古物 アンゲルス・ノーヴス> だ。