49、心当たり
残り少ない時間で急いで昼食をとって、午後の授業をこなした後、監督生は集まってこの問題について話し合った。
「この薬、どうやら「飲ませれば相手の心が手に入る」と詠われているらしいのだが、本当にそんなことがあるのだろうか」
愛の妙薬を手に、アルベルトが疑わしげに眉をひそめる。
まあ、惚れ薬なんて本当にあるとは思わないわよね。ゲームでもレイシールの前科を増やすためにちろっと出てきただけのアイテムだから、実際に使われたところを見たことがないので効果のほどはわからない。
「そんなことはないっ」
ガウェインが急に硬い声を出した。全員が注目すると、ガウェインが青い顔で俯いていた。
「どうした?」
「……西の領地で、三年前に出回った薬だ」
忌々しそうに顔を歪めたガウェインは、「愛の妙薬」がもたらした被害について語り出した。
「その薬を盛られると、判断力が低下し、他人のいいなりになってしまうんだ……そういう意味で、「飲ませた相手の心が手に入る」ってこったろう。ただし、一回や二回飲ませたぐらいでは効果はないようだ。長期間に渡って服用させ、少しずつ心を壊していく。その上で、洗脳する……中毒性があるようで、薬欲しさに命令を聞く場合もあるようだ」
ガウェインの言い分を聞く限り、どうやらこれは「麻薬」のたぐいであるようだ。
「西でこの薬の存在が明らかになった時、俺の親父は徹底的にこの薬の流通経路を潰したが、結局、誰が作ったものなのかまでは突き止められなかった。ことが重大だったので事実は伏せられたが、他の公爵には打ち明けて協力を仰いでいた……まさか、学園に入ってくるなんて」
ガウェインの深刻な訴えに、監督室が重い緊張に満ちる。
おおう。なんだかシリアスになってきちゃったなあ。アホの子ヒロインの乙女ゲームだったはずなのに、このまま社会派RPGになったらどうしよう。
「そういうことなら父にも報告を送り、詳細を尋ねておこう。皆も、今後も他の生徒の間に不審なものが出回っていないか気をつけて見てほしい。それと、ティアナ嬢、君に薬を渡した者の名は?」
「私のクラスのエリシア・フックイー様です」
「そうか。後で話を聞こう。では皆、十分に気をつけてくれ」
アルベルトの指示に、一同は黙って頷いた。
その中で、ガウェインだけが思い詰めたような目で机をみつめていた。




