36、立夏祭
今思うと、一年生が朗読会を任されている間、二、三年生の監督生は立夏祭の準備をしていたのね。
ということは、もしかしたら私も来年は立夏祭の準備をすることになるのかもしれない。
制服姿の生徒達が集まる会場を見渡して、私はそう思った。
「レイシー、飲み物を取ってくるからここで待っていてくれ」
ジェンスはそう言って私から離れ、お兄様もお友達の方へ行ってしまって私は一人になった。お兄様は次期公爵として挨拶したりされたりいろいろあるんだろう。
そう、次期公爵は忙しいのよ。こんな学園の一行事であっても、隙を見せてはいけないし他の貴族と繋がりをつくったり情報を得たりしないといけない。
それなのに、ゲームの攻略対象どもは何を庭でふらふらしとったんじゃい。
私がゲーム内のヒロイン待ち野郎どもを思い浮かべて憤っていると、不意に会場中に「きゃあああ」と悲鳴が響いた。
何事かと目を向けると、麗しの君フレデリカ様が登場したところだった。
「すごい人気ね、フレデリカ様」
ひょこひょことやってきたティアナが苦笑いを浮かべる。
フレデリカ様もティアナも髪に花を飾っていない。こんな魅力的な女の子達を放っておいて世の男は何してんのかしら。と思うのと同時に、彼女らに相手が出来たら出来たで、「結婚するのか、オレ以外の奴と……」みたいな気持ちになりそうな気もして複雑だ。乙女心は複雑なのよ。私が嫉妬しないですむぐらい素晴らしい相手を見つけてほしいわ。つまらない相手には渡さん。
「ところで、マリヤを見なかった?」
ティアナに尋ねられて、私は首を横に振った。
「いいえ。見ていないけれど」
「そう。どこにいるのかしら」
ティアナは会場をくるりと見渡して首を傾げる。
「テッドと一緒にいるんじゃない?」
マリヤは人ごみが苦手だから、きっとテッドが守っているのだろう。そう思って言ったのだが、ティアナは首を振った。
「いいえ。さっきテッドには会ったのだけど、彼もマリヤを探していたのよ」
おや。じゃあマリヤは今、一人でいるのかしら。少し心配ね。
「もう少し探してみるわ」
ジェンスが戻ってくるのを見て、ティアナはそっと離れていった。
次期公爵のお兄様ほどではなくても、私も一応、次期サイタマー侯爵夫人になる身だからね。ジェンスにくっついてお友達に挨拶とかしないとさ。
そういえば、ニチカは今頃、庭に出るタイミングを計ってたりしているのだろうか。
誰が庭で佇んでるんだろうなぁ。別に関係ないからいいけどね。




