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23、中庭の攻防






「……で、舞台をこうすれば、と思うの」

「なるほど。いいかもしれません」

「教師に許可を取れば可能だろう」


 私の思いつきを打ち明けると、ティアナとルイスも頷いてくれた。


「しかし、かなりの人数に協力していただかなければならないのでは?」

「そうね。だから、二人にも協力してくれる人を探すのを手伝ってもらいたいのだけれど……」

「もちろん、それは構いませ……構わないけれど、その前に肝心の朗読者を決めなくてはいけないわよ」


 ティアナが困ったように眉を下げた。

 立候補者はいまだゼロである。朗読会、予想以上に不人気なイベントだぜ。もはや、なんのために行うんだ?一年監督生への嫌がらせか?

 ここまで不人気だと、ゲームでレイシールが立候補したのは、自己顕示欲ではなくてむしろただの親切だったのではないかという気がしてきた。悪役令嬢のアイデンティティがクライシス。


「うーん。こちらから声をかけてみるしかないわね。二人は、詩が好きな生徒に心当たりない?」

「詩が好きな方はいるけれど、全校生徒の前で令嬢に詩を読めというのはちょっと……声を張り上げなくちゃいけないだなんて」


 そうよね。令嬢は基本、声を張り上げちゃいけない生き物だもんね。

 つくづく思うけど、詩が好きだからって人前で朗読するのはまた別ものなのよね。おい、聞いてるか、ニチカ。


「よし。ちょっと校内を一周して適当な人間を狩ってくるわ」

「狩り……?」


 とにかく人手を集めるのが先決だ。

 私はティアナとルイスを残して、資料室を後にした。


 各学年二人ずつ、計六人の朗読者。その他に、最低でも十人はほしいわね。

 できれば、大人しく朗読を聞いてくれなさそうな連中を手伝わせた方がいいのではないかしら。

 やることがあった方が楽しいだろうし……「だから、アンタは朗読会に出ればいいのよ!」「で、でも、私、そんな人前でなんて……」


 やだ、恐喝。

 あー。いつの間にか中庭まで来てしまっていた。そこではニチカ・チューオウが女生徒Aにオラオラと迫っている。

 うむ。見過ごせぬ。


「おやめなさい。嫌がっているじゃありませんか」


 私が令嬢モードをONにして二人の前に登場すると、ニチカが親の仇を見るような目で私を睨みつけた。


「出たわね!悪役令嬢!」


 そんな「出たな妖怪!」みたいな言い方しないでほしいわ。


「ニチカさん。そちらの方は注目を浴びることを望んでいないご様子ですわ。朗読会は皆で楽しむもの。無理矢理に詩を読ませるだなんてあってはならないことです」

「え~ひどいです~!私は彼女が勇気がなくて朗読会にでれないっていうから、励ましていただけなのに~」


 おい、どうした。突然ぶりぶりになったぞ。


 あ、そうか。ゲームだと、ここでアルベルト他三名が現れて、さんざんレイシールを扱き下ろしてニチカを庇うんだ。なんだ、攻略対象待ちなだけか。突発性ぶりぶり症候群でも発症したのかと心配したわよ。


「おい、何をしている?」


 はい、来ましたよ。お待ちかねの攻略対象ご一行様。

 ニチカの顔がぱっと輝いた。

 仕方がなく振り向いた私の目にも、アル平と愉快な仲間達が立っているのが見えた。ただし、ゲームと違うのはルイスがいないことと、お兄様とジェンスがいること。

 ルイスは資料室に置いてきたし、元凍死要員二人が生き残っているからな。


「レイシー。何しているんだ?可愛いな」


 安定のジェンスが駆け寄ってくる。ありがとう。お前も目つきは悪いがイケメンだよ。


「アルベルト様!私、彼女に朗読会に出てほしくて!」


 ニチカはぶりぶりしながらアル平に近寄っていく。

 ニチカが離れた隙に、私は女生徒Aを自分の背に庇っておいた。たぶん、この子はとっても気が小さいんだろうし、いきなり監督生の上級生男子にじろじろ見られちゃかわいそうだ。

 安心させるように微笑んでみせると、女生徒Aは涙を浮かべてふるふる震えながら私を見上げた。





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― 新着の感想 ―
[一言] 最初からニチカが朗読すればよかったのに。監督生が朗読者になっちゃいけないって決まりがあるのかな。だったら、ゲーム内のニチカが自分が最初から朗読者にならずに別人を立てたこと自体は納得できるんだ…
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