21、協力者を集めよう
入学したばかりの一年生が三年生の教室へ行くと目立つ。
じろじろ見られるのを我慢しながら、私は三年Aクラスを訪ねた。アルベルトがいるから本当は嫌なんだけどね。
「あのー……」
「レイシー!俺に会いに来たのか!?」
しまった。ジェンスもこのクラスだったか。飛びかかってきたジェンスを右から左に受け流して、私は近くにいた女子生徒に声をかけた。
「あの、フレデリカ・エヒメン様はどちらでしょう?」
「なんだ?私に用か」
がっしりした体格の、中性的な印象の令嬢が私の前に立った。
フレデリカ・エヒメン。
ゲームの中では三年の監督生だった生徒だ。私が凍死要員二人を救ってしまったため、三年の監督生の席を埋めてしまった。
ゲームの中でのもう一人の三年の監督生はDクラスのピーター・コーチ。
その二人を教室から連れ出して、私は本題を切り出した。
「昨年と一昨年の朗読会についてお聞きしたいのです」
私がそう告げると、フレデリカとピーターは目を瞬いた。
「なぜ、我々に?三年の監督生に聞けばいいだろう。あそこにいるキミの婚約者とか」
フレデリカが指さす方向には、柱の陰から恨めしそうにこちらを見るジェンスがいる。
「目を合わせないようにしてください。二、三年の監督生には頼らずにやり遂げたいのです。お二人はとても優秀な方だとお伺いしたものですから、ご意見をお聞きしたいと思いまして」
「ほう。それは光栄だな。私でよければ協力するよ」
「僕も。できることがあれば言ってくれ」
フレデリカとピーターが請け合ってくれたので、私は笑顔でお礼を言った。
協力者二人、ゲットだぜ。愛媛と高知。せっかくだから香川と徳島も探そうかしら。
「レイシー!一年の教室まで送るっ……ふぐっ」
「なんだ。来ていたのかレイシール。三年の教室に何か用か?」
「もう済みましたわ。お兄さま、ごきげんよう」
Bクラスから出てきてジェンスを絞めるお兄さまに手を振って、私は三年の教室を後にした。
「おい、ホーカイド」
一年の教室に戻る途中で、担任の教師に声をかけられた。ステファン・クシマフ先生よ。たぶん、福島。
「朗読会のメンバーだがな。遅くとも、会の十日前までには決定して提出するように」
そうなのよね。まずは朗読者を各学年から選ばないといけないんだ。一応、「参加したい人は一年監督生まで」と呼びかけてもらっているが、まだ立候補はない。まあ、そのうち集まってくるだろう。
私はその時、まだ楽天的に考えていた。