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氷の惑星  作者: 深堂 古月
<氷の惑星>
2/2

<地の惑星>から来た少年

第二話です。

 私は熱星の光を見上げ、再び地面に視線を戻す。<氷結の不死氷獣産塔>を機能停止してから二時間。次の標的は、<氷の氷刃投 洞窟>と言う<魔悪の建物>だった。


「此処から歩けば二時間……<飛翔>すれば十分……」


 私は何方を選択するか迷って居た。別に急ぐ事は無いじゃないか、と<歩き側>が私に囁く。早く行けば直ぐに<地の惑星>に移れるよ? と<<飛翔>側>が私に囁く。


 結果、私は<飛翔>して十分で行く事にした。私は<風気>を体内で発動させ、自分の体を空に持ち上げる。そして、<加速><方向転換>の呪文を全身に広げ、<氷の氷刃投 洞窟>へと向かった。


 切っ掛り十分で、洞窟に着いた。着く一分程前、少年が私が<飛翔>して居るのを見たが、気の所為だと思うだろうか。まあ、良いか。何か面白い事を、此の洞窟の中でやって居るからね。


「クスクス」


 私は、暗い洞窟から放たれる氷刃を避けながら、此れから起こるであろう楽しい事を想像して、小さく笑った。


  ◇


 私は次々と襲い掛かって来る氷刃を、素手でバリバリと叩き割って行く。流石に此処依低級の<氷結の不死氷獣産塔>依は硬い氷だなぁ。


 <魔悪の建物>にも級と言う物が存在する。

 下級<<中級<<<上級<<<<<超級<<<<<<<伝説級。

 上に上がるに連れて、強さは格段と強く成る。<氷結の不死氷獣産塔>は下級だが、普通の下級依も弱かった。此処、<氷の氷刃投 洞窟>は中級。


「……飽きた、飛ばそう」


 私は呟くと、一気に氷刃を無視して<心臓部屋>へと辿り着く。<氷の氷刃投 洞窟>の<心臓>は洞窟の薄暗さと同じ色をして居た。


「『<氷の氷刃投 洞窟> 魔紋・封』」


 私は何かに急かされる様に、此処を封印した。『封』の紙が<元心臓>を覆う。


 ヘッドフォンが、「心臓破壊」と言う曲を奏でる。ふふ、<心臓>よ、済まぬな。


 <心臓部屋>を出て暫くすると、何故か罠が張って有った。<魔悪の建物>が張った物では無い……人間が、意図的に張った物だ。引っ掛かると、網に入れられて何処かの目的地へ移動する様に成って居るな。誘拐する為か、或いは……。


 面白い。引っ掛かろう。


 私は意図的に引っ掛かり、瞬間、私を網が襲う。そして、数分移動すると、或る部屋に着いた。


「<安全部屋>、ね……」


 <安全部屋>とは<魔の建物>に有る部屋の事だ。其処に居ると、獣達や不死は、入った者が何処に居るのか解らず、入った者は安全に成るのだ。そして、外に出る為の抜け道、其の他の抜け道有り。だが、其様な都合の良い部屋が沢山有る訳も無く、見付け難く成って居る。


 無論、私が編み出した<空間気>を使う<地図>を使えば容易く見付けられるのだが。


「少年、態々彼様な罠を張って、如何したのさ」


「っ?!」


 一見私以外に誰も居ない様な部屋。けれども、其処にはきちんと一人、少年が身を潜めて居た。彼は観念したのか、姿を現す。綺麗な茶髪に青色の瞳、色白な肌。迚も整った顔立ちをした少年だ。彼は私の姿を見て驚いた顔をして居る。当たり前か。



  ◆


「っ?!」


 俺は目の前の美女に吃驚とした。

 艷やかな黒髪に前髪白メッシュ。虹彩異色症(オッドアイ)の瞳は迚も眠そうで、灰色と薄紫だ。色白な肌は、迚も触り心地が良さそう……って俺は変態か! そして、彼女は兎に角美しい。此れ程迄に美しい女は初めて見た。「綺麗」の言葉では表し切れない程。


 相手が何故かこっくりこっくりと船を漕ぎ始めたので、俺は慌てて相手に話し掛けた。



  ◆


「俺の名前は秋羅。お前は、誰だ?」


 私は少し考えてから言った。


「………田中太郎」


 あ、性別間違えた。


「田中花――」


「其様な見え見えの嘘、初めて聞いたわ!」


 少年が突然突っ込んで来た。むむ、見え見えなのか? まあ、仕方無い。此奴も本名言ってる様だし、本名を名乗ろう。


「神楽だ」


 私はニヤリと笑ってそう答える。


「そして、此の網外して呉れないか?」


 すると、少年は未だ警戒して居るのか、首を横に振る。うう〜ん、じゃあ、仕方無いか。刹那、私は網をバラバラにした。驚いて居る少年に、私は一寸(ちょっと)した決め台詞を言う。


「御免よ、縛られる側は趣味じゃ無いんだ。……何時でも相手の事は縛って上げられるけど」


 私の言葉に少し青褪めた少年は、何かをブツブツと呟いた。声に出て無くても、其の唇の動きで判る。ふむふむ、「嗜虐者」……サディストとも言う。ふはは、笑えるな。私が嗜虐者な訳無いじゃないか。ねェ♪


「まあまあ少年、落ち着こう」


 私が落ち着かせようとすると、少年は不機嫌そうに言った。


「少年じゃ無いってぇの。秋羅。先程(さっき)言っただろ、名前」


 ふぅむ、少年の心理とは難しい物だ。少年は名を名乗ったら名前で呼ばれたいのか、良い事を知った。


「よしよし、まあそう言うなしょうね……秋羅。先ず、私はお前に聞きたい事が有る。良いか?」


 秋羅が首肯したのを確認し、私は問うた。


「秋羅、お前は何故私を此処に連れて来た。態々<安全部屋>に罠で連れて来て」


「先ず、お前と話がしたかった。お前が<飛翔>して居たからな。そして<安全部屋>は快適だし氷刃が来ないし、罠が人工的に作られて居るのを見たお前の反応を見たかったからな」


 私は答えに納得する。恐らく、秋羅は其処迄長く<氷の惑星>で過ごして居なくて、未だ此の寒さに慣れて居ないのだろう。だから<安全部屋>が快適だと言い、氷刃を警戒して居るのも理解出来る。そして、味方か解らぬ者に警戒無しに話し掛けるのは馬鹿だからな。


「じゃあ、次。お前が()の惑星生まれだ? ()れ程の期間、<氷の惑星>に居る? 何の目的で此処に来た」


「……<地の惑星>生まれだ。俺は二ヶ月前、此処に来た。そして、<漆黒手帳>の持ち主に会いに来たんだ」


 ……<漆黒手帳>か。


「何故、<漆黒手帳>の初代持ち主に会いに来たんだ?」


「……俺の兄ちゃんが、<地の惑星>で<魔悪の建物>、<地の破壊人形産屋敷>で行方不明に成ってて……。其の機能を止めたいんだけれど、機能を止められるのは<漆黒手帳>の持ち主だけだと聞いて……」


 兄の為に頑張る弟、か。ふぅむ、悪くない。嘘を言ってる訳でも無さそうだ。私が微笑んで居ると、秋羅が勇気を振り絞った様に言った。


「よし、次は俺が質問する番だ。お前は、()の惑星生まれだ?」


 其の質問に、賢明だ、と言ってから私は答えた。


「私の生まれた惑星は、お前の知らぬ惑星。今は秘密だ」


 私は微笑む。秋羅は純粋だ、生まれた惑星の質問に正直に答えるなんて。嘘を言っても良いし、隠しても良いのに。


「……如何言う事だ? 神楽は<飛翔>して居たんだから、<風の惑星>生まれじゃ……」


 私は眉を顰める。


「そう思うな。視野が狭く成るぞ」


 秋羅は首を傾げ、次の質問をして来た。


「<漆黒手帳>に付いて、知ってるだけ教えて呉れ」


「……全部は言えないが、良いな?

 <漆黒手帳>は漆黒の見た目をして居て、表紙には持ち主の名前が書かれて居る。

 <漆黒手帳>を<心臓>に翳し、呪文を唱えると、機能は停止する。

 <漆黒手帳>は一つしか存在しない。

 <漆黒手帳>は一人の主人にしか仕えず、絶対に主人は変更しない」


 秋羅は、ポカーンと口を開け、(ほう)けた様に言った。


「神楽、詳しいんだな」


 私はニヤリと笑う。


「まあ、そう言う立場だからな」


 秋羅は一瞬眉を顰めたが、直ぐに聞いて来た。


「<漆黒手帳>の持ち主に、心当たりは有るか?」


 私はクラリと首を傾げる。


「心当たりも何も、持ち主は私だぞ?」


「……は?」


 秋羅は「此奴馬鹿か?」と言う顔をした。失敬な。


「見せろと言うんなら、見せてやろう」


 私は<漆黒手帳>を取り出す。秋羅は目の前の出来事が理解出来て居ない様だ。バタバタと暴れて居る。……むむ、騒がしい。


「信じられ無いのなら、<安全部屋>から出ると良い。氷刃は飛んで来ないぞ」


 秋羅は私を疑り深く見詰めてから、そっと<安全部屋>の外に出た。


「うわっ……本当に、飛んで来ない」


 秋羅は又部屋に戻って来る。


「神楽……お前、何歳だ?」


 私の全身から<絶対零度>が発されたのは、言う迄も無い。



  ◇


 私の<絶対零度>が治ると、秋羅は改めて話し掛けて来た。


「神楽。<地の惑星>に来て、俺の兄を助けて欲しい」


 其の真剣な目を見て、私は欠伸をし、伸びをし、最後にやっと答えた。


「断る」


「おい! 答える迄色々と長いし結局断るのかよ?!」


 秋羅が(すか)さず突っ込んで来るので、私は断る理由をきっちり教える。


「良い?

 一つ、私は最初に<氷の惑星>で全ての<魔悪の建物>の機能を停止しなければ成らない。

 二つ、私が秋羅に付いて行って兄を助けたとしても、私に利益(メリット)は無いし、逆に不利益(デメリット)しか無い。

 三つ、面倒臭い」


 私が全ての理由を言うと、秋羅が言う。


「なあ、最後の理由酷く無いか?」


「そうかい? 面倒臭いは立派な理由だと思うけれど。人は気分で動くからね、余程な真面目じゃ無い限り」


 私が欠伸をし、「じゃあさようなら」と立ち去ろうとすると、其れに焦った秋羅が必死に言った。


「待て! じゃあ先に<氷の惑星>で全ての機能を停止した後で良い! 何でもするから、取り敢えず俺を連れて行って呉れ!」


 其の言葉に、私はボソリと「計画通り」と呟いた。


「何でもすると言ったね?」


「あ、ああ」


 急に乗り気に成った私を見て、秋羅が戸惑う。


「じゃあ、私の手下に成って呉れ」


 数秒してから、秋羅は反応する。


「手下って……は? え?」


 秋羅は困惑顔だ。うん、面白いねェ♪


「手下って言うのは、主人の為に狩をしたり、寝床を探したり、番犬に成ったりするんだよ。詰まり、私に仕えるって事だ」


 断らない様に、最後に一言を付け加えて置く。


「まあ、断るなら<地の惑星>はずっと後回しだ」


 ぐぬぬ、と秋羅は唸り、最終的には頷いた。私は契約書に印鑑を押して貰い、手下を手に入れた。


「さあ、行こうか」


 私は単独の<飛翔>を使わずに、箒のルディを呼び寄せる。


「やあやあルディ。御免よ、先程は使って上げられなくて。さあ、君の出番だ」


 私はルディを可愛がってから、箒に跨り、秋羅も跨る様促す。


「準備は良いかい? さあ、冒険に出発だ!」


 次の瞬間、ルディが猛スピードで飛んだ事に依、飛行初めての秋羅は気絶仕掛けた。

ヒーロー登場です。

何と無くヒロインに弄ばれて居ます(≧∇≦)

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