天国で生まれた妹
「い、妹!?」
望は、自分に妹がいたことを初めて知った。
「俺は一人っ子で妹はいないはずだぞ!?」
「この子は、天界でできちゃいました。」
「ねえ。」
両親は、死後に天界でも愛し合い、子供を授かっていたのだった。
「そんなバカなことがあっていいのか!?」
望は、いきなりの妹の存在を受け入れることができなかった。
「美しい杉のように育ってほしいという願いを込めて美杉、夢乃美杉だ。」
「美杉ちゃん、望お兄ちゃんに挨拶しなさい。」
「美杉です。お兄ちゃん。」
両親に促され恥ずかしそうに、はにかんで挨拶をする小さな妹。
「ど、ど、どうも。」
初めて妹に挨拶をされて戸惑う望。
「おい。家族の感動の再会中に悪いが、神様がお待ちかねだ。行くぞ。」
渋谷天使が家族の話に割って入ってくる。
「え? は、はい。またね。」
「望! がんばれよ!」
望は両親たちに見送られ、渋谷天使に連れられて神様の元に向かう。
「ようこそ、夢の国へ。」
「あなたが神様!?」
「はい。私が渋谷神です。よろしく、望。」
神様は、意外にも普通に神様といった感じだった。
「あなたを神の国に招いたのは私です。それに望も夢の国に行きたいと願ってくれましたからね。」
確かに望は夢の国に行きたいと願ったのだった。
「神様、どうして俺を夢の国に招いてくれたんですか?」
望は疑問だった。なぜ自分が神様のいる夢の国に招待されたのか。そのおかげで亡くなってしまった両親や、存在すら知らなかった妹にも会えたのだから。
「それは、あなたが人間として生きているからです。」
「はい?」
「あなたは神の生み出したアダムとイブのように喜怒哀楽の感情を表現して、神の望んだ人間らしく生きているからです。」
「まったく意味が分かりません!?」
神の言葉は、望の弱い頭では理解できなかった。
「最近の人間は、歩いていてもスマホ、食事をしている時もスマホ、電車に乗ってもスマホ。今の人間は、スマホに支配されています。」
神様は嘆いていた。人間は自ら生きることの喜びを放棄していると。
「望、あなたは他人と会話したのはいつですか?」
「今朝、じいちゃんとばあちゃんと希としました。あと夢の国で、亡くなった両親と妹? それに渋谷天使とも会話しました。」
望は、多くの家族や友達など多くの人々の優しさに溢れていた。
「望、あなたは幸せですね。」
「え?」
「最近は、誰とも会話を交わしたことのない人ばかりです。一日、一週間、長い人だと1年以上。」
「なんですとー!?」
人間に何らかの異変が起こっていた。
つづく。