新旧、嫁対決
「望と一夜を共にしたの。」
朝から希に出会ったイバラはありのままを言う。
「な、何ですって!?」
イバラの言葉に衝撃を受ける希。
「の、望ー!?」
希は望の家に入って行く。
「よう、おはよう。」
なんと寝坊助の望が起きていた。起きて家族と食事を食べている。
「よう、おはよう。じゃないわよー!? なんで、あんた起きてんのよ!? なんで、あの女が、ここにいるのよ!?」
朝から血が頭に上っている希は怒涛の質問攻めで捲し立てる。
「えっと!? それはだな!?」
予想していた以上の希の興奮状態にパニックに陥る望。
「イバラちゃんは、うちで住むことになったのだ。」
重い空気の中、望の祖父が話を切り出す。
「そうなの。イバラちゃんは一人暮らしで何かと大変だからね。」
祖母もイバラを擁護する。
「おじいさん、おばあさん、大好き。」
イバラは祖父と祖母に可愛がってもらうのが上手だった。
「クッ!? 悔しい!? 女狐め!?」
愛想を振りまくイバラの態度にイラつく希。
「希お姉さん! 大丈夫だよ! イバラちゃんは良い子だもん! 昨夜も美杉と一緒に寝てくれたんだよ! いっぱい、よしよしって頭を撫でてくれたんだ! 子守歌も歌ってくれるんだよ!」
既に美杉もイバラに懐柔されていた。
「ということは!? 望と一夜を共にしたというのは!? 騙したな!?」
「同じ家に住んでるんだもの。私の言葉に間違いはないわ。」
純情で直線的な希の思考・行動は、ひねくれているイバラには扱いやすかった。
「イバラちゃんの作った朝食も美味しいのう!」
「私が起きたら、お風呂掃除、庭掃除、ゴミ出し、全て終わっていて、とても助かったわ。おかげでゆっくりできたわ。ありがとう。イバラちゃん。」
「どういたしまして。あとでお肩を揉みますね。」
祖父と祖母はイバラの境遇に同情しているので、とてもイバラを可愛がる。
「なによりもすごいのが、寝坊助の望を起こしてきたことだ。」
確かに毎日望の部屋に行って希が起こしていたのに、今日は望が起きている。
「なんで、あんた起きてるの?」
「寝てたら、黒花がやってきて「起きないと、キスするぞ。エヘッ。」って、襲ってきたんだ! 怖くて目が覚めた。」
望は起きなければ良かったのにと、少し後悔している。
「お引き取りを。もう、あなたは必要とされていません。」
勝ち誇るイバラ。
「悔しい!? これで勝ったと思うなよ! 私にもご飯を寄こせ! パクパク、美味しい!?」
結局、希は望の家に居座り朝食を食べるのだった。
つづく。