この女の1番の不幸は?
「やめなさい!」
クロムの望への攻撃を止めたのは、イバラだった。
「た、助かったのか!?」
望は、自分を助けてくれたイバラを見る。
「なぜだ!? なぜ止める!?」
クロムには、イバラが攻撃を止めるのが不思議だった。
「少なくてもクラスメイトよ。手を出さないで。どうかしら? 学校の中で魔法を使って攻撃するのは、お互いにやめましょう。」
イバラは、望に呼びかける。
「お、おお。学校の中くらいは平和に暮らしたな。」
望もイバラの停戦の呼びかけを受け入れた。
「勝手に決めるな! 私だけでも、こいつを倒してやる!」
しかし、クロムはイバラと望の休戦約束を反故にしようとする。
「おまえ、死の世界へ連れていくぞ?」
イバラは、凄んだ目で、かなり低い声で、膨大な魔法力を放出して警告する。
「クッ!? なんなんだ!? たかが魔犬ヘルハウンドの魔法力だけで、これだけ威圧的で死を感じるオーラが出せるものなのか!?」
クロムはイバラの闘気に気圧された。
「わ、分かった!? 停戦に応じる!? 応じればいいんだろ!?」
クロムは、クラスメイトを悪夢の世界から解き放った。
「それでいい。」
イバラは、落ち着き普段通りの口数の少ない姿に戻った。
「覚えていろよ! 放課後になったら勝負だ!」
クロムは去って行った。
「ふ~う、疲れた。」
望は、ぐったりと疲れ切っていた。
「望お兄ちゃん、イバラちゃんが助けてくれたんだよ。」
「イバラちゃん?」
美杉は、望にイバラは良い人だと言う。
「あり得ん。あんな暗そうな地味で陰気臭い奴が人助けをするなんて。」
しかし、望は今までのイバラの行動から信じられなかった。
「イバラちゃんは良い人です! お姉ちゃんの言うことを聞きなさいー!!!」
「おまえは妹だろうが!?」
少し望と美杉の中がぎくしゃくしてきた。
「望! きっと美杉ちゃんは、悪夢の魔法にかかっているのよ!? きっと、自分のことを良い女だと売り込めと暗示をかけているのよ!?」
希は、美杉との間にイバラが割り込んでくることが嫌だった。
「誰がそんなことをするか。」
イバラは、何事もなかったように不愛想に教室の窓から遠くを見つめていた。
「ただいま。」
学校も終わり望は自宅に帰ってきた。
「お邪魔しています。」
「黒花イバラ!?」
望が自宅に帰って来ると、イバラが祖母祖父と美杉と仲良く夕飯を食べていた。
「なぜ!? おまえがここにいる!?」
「美杉ちゃんに夕飯に呼ばれたので。」
イバラは考えた。あの女を不幸にするにはどうすればいい? それは希の幸せを奪うことだと。
つづく。