毎朝、旦那の世話が疲れます
「起きなさいー!!!」
高校の制服を着た少女の大きな叫び声が響き渡る。
「うわあー!? 地震か!? 戦争か!?」
まだパジャマを着ている少年が、少女の大声に驚き布団から飛び起きる。
「ハッ!? なんだ、希か。」
少年の名前は夢乃望。望は、毎朝のことなので少女の顔を見ることに飽きていた。
「なんだじゃない! 遅刻しても知らないからね!」
少女の名前は、夢花希。望の幼馴染の隣人さんである。希は、望の部屋を出ていく。
「やれやれ、毎日、元気なこって。」
望は、時計を見て時間を確かめようとする。
「なにー!? 8時!? 遅刻じゃないか!?」
現実を突き詰められて慌てふためく望。毎日、登校時間と戦うのが望の日課だった。
「おじいちゃん、おばあちゃん。しっかり望を起こしてあげないとダメじゃないですか?」
希は、望の部屋から、望の祖父と祖母のいる居間にやって来る。
「おはよう。希ちゃん。いつもご苦労様。旦那の世話が焼けるね。」
「朝ごはん食べていくかい? 今日は希ちゃんの大好きな、お芋の美味しいのがあるんだよ。」
「ダメだ。常態化している。」
愕然とする希。それもそのはず、望のおじいちゃんとおばあちゃんは、のんきな性格で望の世話は希に任せっきりだった。
「遅刻しちゃうから、もう、行きます。お芋だけはもらっていきます。」
希は、望を待っていると自分も遅刻してしまうので学校に向かうことにした。しっかりと大好物のお芋はもらっていくのであった。
「おはよう、じいちゃん、ばあちゃん。」
望が制服に着替えて、家族のいる居間にやってきた。
「おはよう、望。」
「ご飯ができているわよ。」
望の両親は、望が子供の頃に事故で亡くなってしまった。それから望は祖父と祖母に引き取られて育てられた。カワイイ孫、可哀そう孫ということで、祖父も祖母も望の態度を厳しく叱らなかった。
「あれ? 希は?」
望が部屋の中を見回しても、希はいなかった。
「先に行ったぞ。希ちゃんに捨てられないようにな。」
「どうせ遅刻なんだから、朝ごはんは食べていきなさいよ。」
「俺が、ダメ人間になったのは、じいちゃんとばあちゃんの性だ。」
望は、甘やかされて育ったので、厳しい躾はされていないので、自由奔放な性格に育ってしまった。
「行ってきます! まだ間に合うはずだ!」
ありもしない希望を抱いて、遅刻が確定している望は学校へと駆け足で向かうのだった。
つづく。