始まりは一本の電話から # 3
案内された通り、ドアの中に入ると、外に出た。
普通なら裏庭に出るはずだが、ちがった。
目の前には高い白い建物が立っていた。
・・・ざっと見て二十階はありそうだ。
「あの建物の中に入ってください」
アロとサリーナは建物の中に入った。
その建物は、右側に市役所のように受付があり、受付にいる人はアロとサリーナを怪訝そうににらんでいた。
そして、メラニーは左にある通路を通って、二番目のドアで止まった。
「この部屋にアリーナ・インプラッシュがいるので、入ってください。あ、あとあんまりたくさんしゃべらないでください。アリーナは忙しいので」
彼女はそう言うと、スタスタと建物を去っていった。
サリーナがドアノブに手をかけると、アロがサリーナの後ろについた。
しかし、サリーナはドアノブを手にかけたまま、アロを見た。
「アロ、いいよ。私一人で行くから」
アロはそれを聞くと、ドアから離れ、退屈そうに壁に寄って立った。
サリーナは「ふう」と一息入れて、ドアを開けた。
そこは個室だった。
メラニーは「アリーナの部屋」と言ったが、多分この部屋は来客用だ。
この部屋には白い机と白いいす二脚しかなかった。
しかも、壁は真っ白で、余計にいすに座って寄りかかっているアリーナが目立った。
アリーナはとてつもなく顔が整っているうえに、服のセンスが良く、とてもいい印象を受けた。
「なんですか?話って?」
サリーナが部屋に入るなり、アリーナが嫌そうな顔をした。
サリーナは、右眉をピクリと動かした。
これはサリーナがイラついている時の癖の一つだ。
(ダメだ、こんなところでイラついては。ちゃんと、この人に用件を伝えなくては・・・)
サリーナはいすに座ってアリーナに向き合って話し始めた。
「あの・・・昨夜、私の家に電話がかかってきたんです」
「はあ・・・」
アリーナはめんどくさそうな顔をした。
サリーナはそれを見てまた眉をピクリと動かしたが、電話のことを全てアリーナに話した。
「と、いうわけなんです。アリーナさん、お願いします。やってください」
「はあ?また任務なんて、めんどくさいなあ・・」
サリーナはムッと、した。
(何か嫌な予感がする・・・・)
アリーナは言葉を続けた。
「もう、毎日任務で疲れた・・・。そうだ、アンタの家に電話がかかったんだから、私の代わりに任務、やって。」
「はあ?!」
サリーナは、思わずいすから立ち上がった。
サリーナはイライラマックスだった。
(スパイの仕事丸投げするなんて・・!それに私、やりたくてここに来たわけじゃないのに・・・。)
「だって、相手はアリーナさんに向けて言ったんですよ?関係のない人がやったらただじゃ置かないですよ?」
「そういうのは私がなんとかするから。」
(なぜそこは自信を持つのだろうか・・・)
「でも、世界を守るのがスパイの仕事でしょ?」
サリーナは必死になって訴えた。でもどうやらアリーナは頑固のようで絶対に譲らなかった。
「もー、いい?命令よ!ちゃんと私の代わりをしなさい!」
(なんで、スパイのこと何も知らない私がやらなきゃならないの?)
すると、なぜだか外から大きな話声が聞こえた。
アリーナはいすから立ち上がって、外の通路に出た。
外の通路では、アリーナの先輩スパイがアロに対して、文句をたくさん言っていた。
アリーナはアロを中に入らせ、サリーナに「あんたには相棒がいるんだからいいじゃない!」などと言って、ますます仕事を押し付けた。