4話 嫌がらせの開始
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「……え、エルヴァン!?」
「おぅ。久しぶり」
俺はマシューに剣を突き付ける。俺は口角を釣り上げ、マシューを睨みつける。
「あ、あんた!! 誰に剣を突き付けているのよ!!」
メディアが俺に向かって叫ぶ。
「え? 勇者?」
俺がアッサリ答えると、顔を真っ赤にして怒り出す。
「エルヴァンさん、貴方、自分がやっている事を分かっているのですか?」
「自分のやっている事? マシューに剣を突き付けている事か?」
「そうです!! この世の勇者様に剣を突き付ける!! それがどれほどの大罪か分かりますか!!?」
俺はシリのセリフに噴き出す。
俺が笑っていると、クリスが怪訝な顔で俺に尋ねてくる。
「エル。どうして笑ってるの? 故郷に帰ったんじゃないの? 私はそう聞いてたんだけど?」
クリスが故郷の事を言うと、クリス以外の三人の顔が青くなる。
「あ? あははははは。クリス。良い事を教えてやるよ。俺はすでに犯罪者だぜ? 国中に指名手配されてんだ」
俺は、マシューを蹴り飛ばす。
「ぐぁあ!!」「マシュー!!」「勇者様!!」
俺が犯罪者と言うと、クリスは首を傾げる。
「え? 私は、エルが戦う事が怖くなって、逃げたと聞いたけど、それだけで犯罪になるの?」
「クリス!! 魔法でそいつを攻撃しろ!!」
マシューが吠える。が、クリスは無視している。
「ねぇ。エル。故郷で静かに暮らす事にしたんじゃないの?」
「故郷はなくなったよ。追い出されたんだ。勇者の敵として、人間の敵と言われてな」
「ふーん」
クリスはマシューを見ている。
「馬鹿やろう!! 裏切り者の言葉なんて信用するな!!」
「そうよ!! そうよ!!」
クリスは、メディアに冷たい目線で睨みつけている。
「エルがいるのに、マシューとえっちしてるから、おかしいと思っていたら、エルを裏切っていたのはメディアなんだね」
クリスが冷めた目でそう言うと、メディアは顔を背ける。
「最近はシリも含めて三人で、えっちしているからおかしいと思っていたけど、エルを裏切って笑っていたのは、あんた達なんだ」
ここまで言われて、初めてマシューが怒りの形相で俺を睨みつけてくる。
「成る程。クリスにも嘘をついてたんだな。はぁ~。一応、昔は庇ってくれたりしていたから、信用をしていたし、今回の事も許すつもりだったんだがなぁ……」
俺は、マシューに近付く。
「よくよく考えたら、お前等に裏切られて、お前等のせいで故郷からも裏切られて、お前等のせいで国からも裏切られて、ここまでされてさ……。どうして、お前等を許そうと思ったんだろうな……。教えてくれよ、勇者マシュー」
「うるせぇ!!」
マシューは立ち上がり、俺に斬りかかってくる。
「この裏切り者がぁ!!」
俺はマシューの剣を掴み止める。
「な!!?」
自分の攻撃を止められて、顔が真っ青になっている。
「お前の斬り方、こんなに遅かったか? 力もないし」
俺が、マシューを見下していると、ヴルカーノが現れる。
「おい。エルヴァン。お前なんで顔出してんだよ」
「え?」
「いや。俺は、お前に気を使って、仮面を渡したのに……、どうして仮面を外して、正体をバラしたんだ?」
「あ……」
ヴルカーノに言われて、ようやく仮面の意味に気付いた俺は、呆然としていた。その顔を見て、クリスが笑いだす。
マシューは、腰を抜かしながらも後退っていく。ヴルカーノを見て、怯えているようだ。メディアとシリも同じだ。
「え、エルヴァン!! 戻ってきて!! 今度は、私が愛してあげるから!!」
元、恋人が何かをほざいている。え? お前等のおかげで、何もかも失ったけど、それで靡くとでも、思っているの? バカじゃないの?
「ぎゃははははははは。エルヴァン!! アグラー様から聞いた、元恋人ってこいつか!? 趣味悪!! 面はともかく性格が不っ細工だな!!」
ヴルカーノが、メディアを指差して笑うと、メディアは顔を真っ赤にして怒り出す。
「魔族風情が、人間様の……「ヴルカーノ!!」」
「おぅ?」
ヴルカーノは、俺に止められたのを、メディアに未練があると思ったのかもしれないが、そうじゃない。
「ヴルカーノ。こんなビッチの事は「な!? エルヴァン!!」……、どうでもいいんだが、こいつ等をここで殺すのか?」
俺が殺すという言葉を言うと、三人は顔が青褪めて……、あ!! シリが逃げ出した。それを見て、メディアとマシューが逃げ出した。
「お前の裏切りは、国王に報告する!! 後悔しろ!!」
マシューは振り返って、捨て台詞を吐いて逃げていく。
「追っかけて殺すか?」
俺がヴルカーノにそう聞くと、「ほっとけほっとけ」と笑いながら、残ったクリスを見る。
「お前は逃げねぇのか?」
クリスは自分が話しかけられていると気付かずに、溶岩の池をジッと見ている。
「おい。無視すんな!!」
ヴルカーノが怒鳴るが、クリスは聞いていない。
オレの肩に手を置き、助けを求めてくるヴルカーノ。まぁ、クリスは変わっているからな。
「おい。マシュー達は逃げたぞ。お前も行かなくていいのか?」
「え?」
俺の言葉には反応する。
「あいつら嫌いだから、エルと一緒に行く」
「「え?」」
クリスから帰って来たのは予想外の言葉だった。
ヒロイン二人目です。
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