3話 嘘で魔王を名乗る事になった
ざまあ始まりませんでした
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俺は、ヴルカーノと勇者を待つためにボルカノ火山にやって来た。
「熱いな……」
「お? そうだろう?」
「なんで嬉しそうなんだ?」
俺がジト目でヴルカーノを見ていると、ヴルカーノは笑いながら、俺の背中をバンバン叩いてくる。痛いんだが。
俺が痛がってヴルカーノを睨んでいると、ヴルカーノは俺を怪訝な顔で見ている。
「ファムから聞いたが、お前の体はどうなっているんだ? 龍人の俺が結構な力を入れて叩いているのに、お前は少し痛がるだけ……。お前、以前、俺と戦った時よりも強くなってないか?」
こいつは何を言っているんだ? 俺と戦ったのは、つい一か月前だろうが。そんな短期間で強くなれるかよ。
「そんな事よりも、本当にここに来るんだろうな?」
「それは、俺よりもお前の方が知っているんじゃないのか? 元仲間」
そうだな。勇者にとって炎の魔石は魔王を倒すためには必要なはずだ。しかし、ここで疑問が出来たな。
「ヴルカーノ。答えられたらでいいんだが、アグラーを倒そうと思ったら、魔石は必要なのか?」
「なに? お前は、魔王様を狙っているのか!?」
「違うよ。俺達が国から言われていたのは、炎・水・土・風の魔石を集めて、魔王を討てと命令されてたんだよ。しかし、アグラーに会って思ったのが、アグラーは戦えないんじゃないのか?」
俺が見た魔王は、好々爺だった。戦う力があると思えなかった。
「お前、よく見てるなー。確かに魔王様は、もう戦えないが、俺達にはあの人が必要だ」
確かに、まだ数日しかあの村にいないが、アグラーは随分と慕われているのは、隣の部屋にいてもよくわかった。
あの村には、いや、魔族には、アグラーは必要だな。
「嘘をつくか?」
「嘘だと?」
「あぁ。人間側は魔王が誰か顔も知らないはずだ。ならば、ヴルカーノ、お前が魔王を名乗ればいい。そうすればお前が矢面に立つ」
「そりゃ無理だ。俺はもう勇者達に四天王と名乗っちまった。そうだ!!」
ヴルカーノは俺を見て笑う。そして、驚くべき事を提案してくる。
「お前が魔王を名乗れよ。お前を裏切った連中も、驚くと思うぜ?」
「はぁ!? 俺は人間だぞ! 俺が魔王を名乗るという事はお前等は人間に屈したと取られてもおかしくないんだぞ!!」
俺の言葉に、ヴルカーノは何かの球を取り出し、球に対して何かを話しをしている。
「おい。それは何だよ」
「あ? 他の四天王に、人間のエルヴァンが魔王を名乗らせる事を相談していたんだ」
「え? その球っころでか?」
「あ? 人間の国は連絡用の魔宝玉もないのか? お前等、どうやって連絡なんかをしているんだ?」
「え? 書簡で連絡だが……?」
俺がそう言うと、ヴルカーノは吹き出す。
「人間って時代が一世代前なのか!? ぎゃははははは!! まぁ、いいわ。他の三人も、お前の事を知っていたみたいだぜ?」
「なんでだ!? お前には会ったことはあるが、他の三人は会った事はおろか、見た事すらないぞ!?」
「ははは……。お!! 勇者一行が入って来たみたいだぞ」
「なに? お前そんなことも分かるのか」
俺が驚いていると、ヴルカーノが更に笑い出す。
「当たり前だろう? ここは重要な拠点だ。監視魔法があるに決まっているだろう?」
監視魔法か。もしかして、他の四天王が俺を知っているのもその監視魔法とやらが、関係あるんだろうか?
「よし、早速嫌がらせをしに行こうか?」
「お前……。嫌がらせって」
ヴルカーノは俺に仮面を渡してくる。
「ほら、一応顔を隠しておけ」
「あ、あぁ」
俺は素直に仮面をかぶり、ヴルカーノに剣を借りる。
俺は、崖から勇者を見下ろせる場所で、あいつらを観察する。ヴルカーノは監視魔法で俺を監視しているそうだ。
「ふん。やっぱり信用されてないんだな。まぁ、仕方ない」
勇者は、四人で歩いている。前からマシュー、両サイドにメディアとシリ、後をだるそうに歩くのが、クリスか……。
「はは……。両手に花か。いや、クリスもいるからハーレムかな?」
まぁ、いいか……。
俺は、マシュー達の前に下りた。
「だ、誰だ!? 魔王軍の奴か!!」
マシューが剣を構える。は? なんでこいつこんなに及び腰なんだ? 今まで、自信にあふれた態度だったじゃねぇか?
メディアもシリも調子が悪いのか、顔が少し青い。
俺は調子の悪い三人を見て一つの仮説を立てる。
「はぁ……。昨日の夜、楽しむのは勝手だが、万全の態勢で臨めよ。仮にも、ここは四天王がいる、魔石が守られたところだぞ?」
俺がそう言うと、三人は驚愕した顔になる。
「じゃあ、お前等がやる気になる事を教えてやろうかな?」
俺は徐に仮面を外す。
「俺が魔王だ……」
クリスを除く三人が、俺を見て驚愕していた……。
少しでも面白いや続きが気になるというかたがいれば幸いです。
今日中にあと1話か2話投稿します