最終話 魔国エルヴァン
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これで本編は完結です。
魔王エルヴァンがギ―ア王国を襲ってから二年の月日が流れた。
ギ―ア国王は、あの日から一週間も経たないうちに、四天王や騎士達によって処刑された。
国王は、最期の最期まで傲慢な態度を変えなかったそうだ。ちなみに最期の言葉は「ワシを殺せばこの国が滅びるぞ!!」と叫んでいたらしい。
実際に、ギ―ア王国は隣国による侵略により滅びる事になっているが……。
国王の死後、貴族によるギ―ア王国の再建が行われ、国王の弟? が新国王に就いたのだが、たった数か月で滅びる事になった。
魔族や一部の人間は、避難していた……というより、新国王に追放されていたため、皮肉にも無事だった。というか、表向きはそういう事になっている。
実際は、クリスの未来視により、ギ―ア王国が滅びる事はわかっていた。
そこで、俺達は一つの賭けに出た。
魔族と協力して、国の再建をするのなら、この未来を変えれるように努力しようと。もし、新国王が魔族を追放させた場合、助けずに見捨てようと決めた。
クリスの話では、未来を変えるという事は意外と簡単にできるそうだ。
ギ―ア王国が滅びるまでの間、俺達は各地にバラバラになった魔族を集めたり、別の人間国に協力を求めたりと各地を奔走した。
隣国も俺達の動きに気付いていたらしく、ギ―ア王国が滅びる数日前に使者を送ってきている。
使者は、ギ―ア王国が滅びた後の事を交渉しに来て、俺達の……魔族の国を作る事に協力的だった。
理由を聞いてみると、隣国はすでに亜人達との交流を進めていたそうだ。だからこそ、魔族に偏見が無かったらしい。
ギ―ア王国を邪魔だと思っていたのは、国王の傲慢さにいい加減、頭に来た事が原因だそうだ。
だからこそ、あの国があるよりも魔族の国があった方が良いと思ったらしい。
だが、建前上、人質は必要なので、マリー王女を奴隷として連れて帰ったらしい。
俺は、魔王としての最期の仕事をする事になった。
クリスと話し合った結果、魔王である俺は滅びるべきという話になった。
そして、今より一年ほど前。
傲慢になったという体で、魔王エルヴァンをアグラー含む四天王が討つという茶番が起こり、魔王エルヴァンは戦いの末に滅びた。
その後、アグラーが国王となり、ギ―ア王国は魔国エルヴァンとして再建される事になった。
名前については、俺という復讐者を忘れない為に決めたらしい。……というのが表向きな理由で、実際は、後始末をアグラーに押し付けて、隠居する俺に腹を立てたヴルカーノが嫌がらせで俺の名前を付けたらしい。
俺は、表向きに滅びた後、アグラー達が住んでいた洞窟の村でひっそり暮らす事にした。
当初は俺一人で住む予定だったのだが、今では、いろいろな人物がここで住んでいる。
マシューの仲間達もここに住んでいる。
マシューの仲間達は、あくまでマシューの性処理をしていただけなので、大した罪もなく解放されたのだが、国に居辛くなり、他の国に逃げたらしい。……が、一度ついた悪評というのはなかなか消えないらしく、行く国、行く国で体を要求され続け、疲れ切ったらしく、地獄の大穴で自殺しようとしていたところを仕方なく助けた。
その日から、ある人物達の世話役となり働いて貰っている。
ギャビン親子もここに住んでいる。俺としてはギャビンには魔国エルヴァンの兵士達を鍛えて欲しかったのだが、ギャビンが拒否したため、この村で暮らす事になった。今では親子で仲良く畑を耕している。たまに魔国から兵士を鍛えて欲しいと依頼があるらしいが、そこのところは俺には分からない。
俺は、エルと名前を変え、この村でファムと一緒に住んでいる。ファムは俺の妻として、ここに一緒に来た。ファムを嫁に出したくないヴルカーノが、駄々をこねて大変だったのはまた別の話だ。
俺のここでの仕事は、主に魔獣や動物の狩りで、スローライフを送っている……が、実はもう一つ仕事がある。
これはファムにも内緒の仕事で、ファムには洞窟の立ち入り禁止区域の監視だと言ってはいるが、実はここである人物達を匿っている。
俺は暗い階段を下りていく。階段の先には小さい部屋があり、ここでマシューの仲間の二人が働いている。
「よぅ。二人共、仕事には慣れたか?」
俺がそう聞くと、二人は面倒くさそうな顔で、俺に愚痴を言ってくる。
「今となっては、アレのどこに惹かれたのか、当時の私に聞いてみたいわ」「うんうん」
二人はそう言いながら、食事の用意をしている。
「エルさん。今日は、三人死んでいましたから、食事は三食でいいですよね?」
「あぁ。蘇生されるのは明日になるだろうからな。で? 誰が死んだ?」
「おっさんとおばさん、それに聖女様かな?」
「へぇ。アイツは今日は生き残ったのか。おばさんの様子は?」
「うん。今日は安定しているみたい。あ!! 今度は別の魔法具を要求して来たよ」
「そうか……。直接聞きたいな。一度会いに行くか」
俺はそう言って、奥の扉をあけ、更に地下に続く階段を降りる。
階段を下りた先には、明るい部屋と、薄暗い牢獄があった。ただし、明るい部屋にも鉄格子はついている。
俺は牢獄の方に歩いて行き、息を切らしている物体に声をかける。
「よう。親友……元気か?」
物体の名前は、偽勇者のマシュー。
「え、エルヴァン!! ここから出してくれ!! もう嫌だ!!」
涙ながらにマシューは、ここから出たいと泣き叫ぶ。まぁ、俺もこの中に入りたいかと言われれば、正直嫌だ。
「そう言うなよ。あの人を狂わせたのはお前……いや、お前達だろ?」
狂った人物……。メディアの母親は、マシューから最期の話を聞いた後に発狂した。この人からすれば娘のメディアが全てだったのだろう。
後から、アルフさんに聞いた話なのだが、メディアがマシューについて行ったのは、うちの家族が関係していたらしい。
うちの家族は、俺をとことんまで壊したかったらしく、随分前から、俺を裏切りマシューに抱かれろと、金を渡し命令していたらしい。
その事を知ったメディアの母親の憎悪は、俺ではなく俺の家族とマシューに向いた。真相を知ったからと言って、その話に乗ったのはメディアだ。同情は出来ないが、母親には同情が出来る。
俺に対して行っていた態度も、メディアに言われていたからというのもあったみたいだからだ。
とはいえ、狂ったのを治す事は出来ないので、出来るだけ要望に応えてやる事にした。
シリに関しては、「メディアを殺すのに加担したから、復讐の道具にしたい」と頼まれたので、現聖女のノエリアに頼み、ここに連れてきてもらった。
そのおかげか、俺や、上にいる二人とは普通に話せるようになった。
一度、「復讐を止めて、外に出るか?」と聞いたのだが、出ずにあいつ等に復讐したいと言っていたので、クリスに協力してもらい、この空間限定で超速再生と自動甦生と虚弱魔法(特定人物指定)をかけて貰った。
そのおかげで、ここにいる連中は抵抗できずにメディアの母親に殺され続けるしかないのだ。まぁ、死んでも生き返るがな。
マシューも最初は抵抗しようとしていたが、今となっては、泣きながら俺に助けを求める事しかできない。
上の二人には、「愛をくれてやるから助けろ」とか寝言を言っていたらしい。本当に救いようのない奴だ。
「まぁ、今日は死なずに済んだんだ。明日もがんばれよ。親友」
マシューは泣き叫んでいるが、まだ言葉を発する事の出来る分、マシかもしれない。今日生き残ったもう一人、俺の兄貴は、普通に話をする事も出来なくなっているようだ。たまに、俺を睨むような素振りをするが、メディアの母親にその事を伝えると、次の日には集中的に痛めつけてくれるようになった。
他に死んでいる三人は……。まぁ、明日になれば生き返るだろ。
「じゃあな。また、来るよ。あ!! おばさんが新しい魔法具を求めていたから、楽しみにしておけよ」
そう言って、俺はメディアの母親の部屋へと向かう。こいつらには、おばさんの気が済むまで苦しんで貰うとしよう……。
おばさんの要望を聞いた俺は、家に戻って来た。魔法具か……。また、ナトゥーラに特注で作ってもらわなきゃだめだな。
俺は少し休もうと、寝室に入ると、ファムと……クリスがいた。
「クリス。何をしているんだ?」
クリスは、クリスティーナという事が全世界にばれてしまったために、各地の教会を回る羽目になったらしく、今は忙しい筈だ。最近も、結構遠い国に出張したと聞いたのにここにいる。
「第一夫人が休暇で帰って来た。労え」
クリスはそう言って、ベッドで寝始める。ファムは困った顔をしている。
「いや……第一夫人って何だよ。俺の妻はファムだけだ」とそう言うと、クリスは思いっきり不機嫌になる。いや、お前女神だろう……? 逆にファムはクリスに対し勝ち誇った顔をしている。煽るなよ……。
こうして、俺の復讐は一部継続中だが、とりあえずは終わった……。けれど、この二人のおかげで、暫くは静かに暮らせないようだ……。
グダグダになりましたが、何とか完結できました。
今後は、番外編として、その後の事や、マシュー達がどう思っていたかなどを書くかもしれません。その時はまたよろしくお願いします。
少しでも面白いや続きが気になるという方がいれば幸いです。
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他にも連載していますのでよろしくお願いします。
クジ引き https://ncode.syosetu.com/n2043en/
親友が…… https://ncode.syosetu.com/n1660ez/
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