33話 国の終わり
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拘束したマシューとレンリー王子の遺体を引きずり、俺は国王の待つ玉の間へと向かう。
すれ違う兵士や騎士達は、なぜか俺に襲い掛かる事もなく、ただただ冷めた目で見ているだけだった。
中には、マシューを射殺さんとばかりに睨みつける者もいる。
「おい。下半身脳。随分冷めた目で見られているが、まさか、城の侍女達にまで手を出してたんじゃねぇだろうな。
「むーむー」
喋れないように猿轡を付けているせいで、喋れないみたいだな。
とはいえ、城で働く侍女の中には、婚約者のいる貴族も含まれていると聞いた事がある。もし、マシューが勇者の権威を盾に好き放題やっていたのなら、婚約者や貴族の親に殺されても仕方ないかもしれないな。
そんな目の中、俺達は王の間に辿り着く。
王の間に入ると、国王や宰相が驚いた顔をしていた。
「よう。ギ―ア国王。前に言った通り、この国を終わらせに来たぜ」
「ま、魔王エルヴァン!? その手に持っているのは……勇者マシュー!!? それにレンリー!!」
流石の国王でも、自分の息子の死体を見るのは良い気分ではないだろう。
しかし、ちゃんと教えてやらなければいけないな。
「おい。間違えるなよ。マシューは偽物の勇者。レンリーが本物の勇者だ」
「な、なんだと!?」
「お前達は間違ってたんだよ。レンリーを甘やかしてはいただろうが、それ以前に偽勇者であるマシューに好き勝手やらせてたんだ。どう責任を取るかくらいわかるだろ?」
俺がそう言いうと、王の間の外からどよめきが聞こえてくる。いつの間にか騎士達や兵士達が集まっていたようだ。
俺達が訓練を受けていた時から、マシューの素行は悪かった。その当時、聞こえてきた声は、マシューの勇者としての資質を疑う者ばかりだったからな。
「そ、そんな筈はない!! 宰相!! どうなっておる!!」
どうなっているもクソもないだろうが。野心から勇者を仕立て上げただけなんだからよ。
国王はその事を知らなかった振りをしているが、知らないわけがないだろう。
そういえば、王都の方はどうなっているかな?
王の間のバルコニーからは、王都が見えるようになっている。俺はバルコニーに出て王都を一望する。
王都も魔獣達により廃墟の町になっていた。ここから見る限りは、そこまで人間は死んでいないようだ。四天王がうまくやってくれたのだろう。
「さて、ギ―ア王。分かっているな。あんたの最期の仕事は……国民の前で処刑される事だ」
俺は、国王にそう言った。宰相が逃げようと部屋の外に出たようだが、部屋の外にいた騎士達を見て高笑いをして、命令した。
「き、貴様ら!! 魔王を殺せ!!」
宰相が喚いているが、騎士達は動こうとしない。それどころか、騎士の一人が宰相を斬った。
「が……な、何を……?」
崩れ落ちる最初に目もくれずに、騎士達は俺と国王を見ている。
「騎士達に何をした? まさか……洗脳か?」
「洗脳じゃないさ。マシューが、約束を反故にした。それだけで、あんたなら分かるだろう?」
俺がそう言うと、国王の顔が青褪める。
「もう一度言うぞ。あんたの最期の仕事は、愚王として、国民の前で処刑される事だ」
「ま、待て!! まお……いや、勇者エルヴァン!! 貴殿こそ真なる勇者だ!! お前の望みは何でも聞く!! 魔族にもこの国に住む権利をくれてやろう!!」
俺は国王を殴る。
「俺を勇者というな。お前等にとっての勇者は、ここで死んでいる勇者レンリーだ」
俺がそう言うと、国王は、土下座をし始める。
「す、済まない!! 女神様からの信託があったのだ!! ワシの意志ではない!!」
ここで、更に嘘か……。ある意味、ここまで愚かだと清々しいな。
「あぁ。無知な国王に一つ教えてやろうか? お前が用意した魔導士クリスの正体は女神クリスティーナだ。あいつから信託があったと言ったな……言ったよな?」
「ま、まさか……。クリスが? そ、そんな馬鹿な!! あの娘は……ま、待て……あの娘をお前達に用意などしておらん!!」
何を言っているんだ? 自分が任命したから、クリスは俺達と一緒にいたんじゃないのか?
まぁ、その事は後からクリスに聞くとして、今はそんな事は問題じゃない。
俺は青褪める国王の髪の毛を掴み、顔を上げさせる。
「ひぃ!!」
「そんなに死にたくないのか?」
国王は首を何度も縦に振る。こんな奴に、威厳を感じていたのか……。
「残念だが、お前の生き死にを決めるのは俺じゃない。それを決めるのは、この国の民と、お前達に住む場所を追われ、家族を殺された魔族だ。そいつらに命乞いをするんだな」
そう言って、髪の毛を放してやる。
「ま、待て!! エルヴァン!! お前は人間でありながら、人間の王であるワシを裏切るのか!?」
俺は国王を哀れんだ目で見下す。まだ、そんな事を言っているのか? どこまで愚王なんだ。それに……。
「裏切ったのはお前達じゃないか。なぜ、俺を指名手配した? マシューがそう言ったからか? お前達が仕立て上げた偽勇者の言葉を、無視は出来んかっただけだろう?」
俺は国王に詰め寄る。本音を言えば、興味はないのだが。
いや、むしろ感謝しているかもしれないな。おかげで魔王になって魔族達に出会えた。
「そ、それは……」
俺は、騎士達に頼み事をする。
「済まないが、こいつを捕らえてくれないか? 拘束具はここにある」
俺がそう頼むと騎士達が困惑する。国王を捕まえろと言っているのだ。流石にそれは嫌なのか? と思ったが、どうやら違うようだ。
「何故我々に? 我々は人間で、魔族達の敵だ。国民を奴隷にするとも聞いたのに……、我々が国王を逃がすかもしれないぞ?」
騎士の一人が懸命に俺にそう聞いてくる。
「逃がすのなら、それでもかまわんさ。どのみちこの国は、魔族が貰う。それに奴隷といっても、強制労働をさせるつもりなどない。王族の代わりに魔族が支配する国になるだけだ。平民や罪のない者には、今まで通りの暮らしをして……、いや、王都は壊滅状況だから今まで通りとはいかんな」
俺がそう言って軽く笑うと、騎士が動こうとしてくれた。
「済まないな。地下の牢へでも入れておいてくれ。マシューやマシューの仲間達、マリー王女も一緒にだ」
俺が静かにそう言うと、騎士は国王を捕らえ、地下へと連れて行ってくれた。
俺は騎士達に、監視を頼むと、アグラーの元へと一人で戻った。
アグラーがいる家に着くと、アグラーとアルフさんが俺を待っていた。
「来たか……エルヴァン」
「エルヴァン君……」
俺は二人に頭を下げた後、二人の前に座り、これからの事を話す事にした。
本日中に最終話の投稿もする予定です。もしできなかったとしても、明日の朝には投稿する予定です。
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