32話 自称・真の勇者として
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「さて、マシューも捕らえたし、後は国王だけだな。クリス! そこにいるマシューの女達も拘束しておいてくれ。こいつ等にも、マシューと同じ生き地獄を見せてやる」
俺がそう言うと、女たちの顔が青褪めていく。きっとこいつらはマシューの甘い言葉に騙されたのだろう。とはいえ、こいつらはマシューの性処理に使われただけだから、適当に恐怖を与えたら解放するつもりはしているが……、クリスが俺を見て頷いている。察してくれたか、心を読んだかのどちらかだな。
「わかった」
クリスは、女達に拘束魔法をかける。女達は「勇者に騙された!!」「助けて!!」とわめいていたが、再び殺気をぶつけてやると、黙った。
俺がマシューの足を持ち、引き摺って国王に会いに行こうとすると、ギャビンの娘が俺に話しかけてくる。
「あ、あの……お父さんは……?」
ギャビンの娘……たしか、レイアと言ったか? レイアは心配そうに俺を見ている。
そうか……。ギャビンの目的は俺を止める事。そして、俺はここにいる。娘として父親を心配するのは当然か。
「大丈夫……とは言えないな。生きてはいるが……。クリス!!」
「何?」
俺はクリスにギャビンの腕を斬り落とした事を伝え、治療してほしいと頼む。
「分かった。騎士団長はこの先に必要?」
「あぁ。彼は、国王やマシューや俺と違い、芯の通った人間だ。魔族が中心になるこの国でも、きっと必要となる」
クリスは少し考えてから「分かった」と部屋を出ようとした。……が、その時、扉から高笑いを上げた男と騎士達が部屋に入ってきた。
「やはり、こんな貞操概念の無い屑に勇者を名乗る資格などないのだ!!」
男は聖剣を拾い上げ、掲げる。
「そう!! 私こそ、真なる勇者なのだ!! 勇者レンリー様なのだ!!」
「お兄様!!」
そういえば、こんなのいたな。マリー王女がレンリー王子の元へと駆け寄るが……。
「マリー。貴様には失望した。あのような低俗な勇者に身体をささげるとはな。私が王になった時には、貴様は王族から廃嫡し、平民となって生きるがいい」
「そ、そんな!!」
「貴様には王族、王女としての役割があったにも拘らず、肉欲に溺れた。そんなモノ王族には要らん!!」
レンリー王子にしてはまともな事を言っている。マリー王女は、涙を流しながらその場に崩れ落ちる。
レンリー王子は、俺に聖剣を向け、高らかと宣言してくる。
「魔王エルヴァン!! 貴様を倒し、真の勇者としてこの世界に光を取り戻す。女神クリス様!! 私に光あれ!!」
「え? ヤダ」
クリスは考える事すらなく拒否した。
しかし、レンリー王子はクリスの拒否を完全に無視をして、聖剣を構える。
聖剣は薄っすらと光っている……が、マシューよりも光っていない。
「クリス。レンリー王子にも勇者の素質はあるのか?」
「ない」
考える素振りすら見せずに否定するクリス。
という事は、聖剣は勇者じゃなくても扱えるのか?
「そもそも、聖剣というのは、神の力が宿った剣の事。別に勇者じゃなくても使える。エル。どうにかして聖剣を奪う事、出来ない?」
別に可能だとは思うが、そんな事をして一体何の意味があるのか……。というより、神の力を持つというなら、魔王である俺が持っても大丈夫なのか?
まぁ、考えていても仕方が無いからな。奪い取ってみるか。
「かかって来い!! 魔王エルヴァン!!」
「はいはい……」
俺は、レンリー王子に向かっていく。剣は必要が無いので地面に突き刺す。
レンリー王子は俺を警戒しているのか、全く腰の入っていない素振りで聖剣を振り回す。
隙だらけだ……。これなら簡単に奪えそうだ。
聖剣を持つレンリー王子の腕を掴み、腹に一撃蹴りを入れる。それだけでアッサリ聖剣を手放した。
……。いや、そんなに簡単に手放すなよ。
俺は聖剣を持ってみた。光の力というが、そんなものが本当にあるのか? しかし、しっくりくる剣だ。
「エル。聖剣を掲げてみて?」
クリスがそう言うので、俺は聖剣を掲げてみる。
「馬鹿め!! 貴様のような、心が汚れ切っている魔王に、聖剣が反応するわけがない!!」
レンリー王子は、腹を押さえながら、俺を憎々しい目で睨んでいる。……が、俺の持つ聖剣はレンリー王子やマシューの時よりも遥かに眩い光を放っている。
見た事のないくらい光る聖剣に、レンリー王子はおろか、拘束されたマシューですら驚愕の顔になっている。
「ば、馬鹿な……。なぜ魔王が聖剣を……?」「まさか……魔王エルヴァンが本物の勇者?」「ん? っ!!? あれは!!?」
レンリー王子が連れてきた騎士たちは混乱している様で、あろう事か、俺を勇者という変な奴までいる始末だ。
「ば、馬鹿者!! 騙されるな!! エルヴァンは魔王だ!! 殺せ!! 魔王を殺せ!!」
レンリー王子が騎士達に命令を出す。……が、騎士達は動こうとしない。何故だ? まさか、本気で俺を勇者だと思っているのか?
俺が疑問に思っていると、騎士の一人がレイアの元に駆け寄る。ファムが守ろうとしてくれているが、どうも様子がおかしい。
「レイアさん!! なぜ、貴女がここに!? 貴女は、騎士団長に守られていた筈では!!?」
レイアは、今までの事を騎士に説明する。説明を聞いていた騎士達は、怒りの表情を見せている。
その怒りの目は、なぜかマシューではなく、レンリー王子に向かっている。
レンリー王子は、その目に怯えながらも騎士達に罵声を飛ばす。
「おい!! 私の命令を聞け!!」
「黙れ!! 騎士団長とレイアさんの身の安全が約束されていたから、貴様の命令を聞いていただけだ!! 騎士団長がいなかったら、こんな腐った国、当の昔に捨てているわ!!」
ん? どういう事だ?
俺は近くにいた騎士に話を聞く事にした。
騎士の話では、騎士団長であるギャビンだけは、侵略も何もしていない魔族達を襲う事に反対していたそうだ。だが、国王はギャビンの言葉を一切聞く事もなく、逆にギャビンを脅し始めたらしい。
しかし、ギャビンがそんな脅しに屈するとは思えない。
「騎士団長は、我々部下達の命を天秤にかけられたそうです。そして、我々には騎士団長の命を交換条件として、レンリー王子を守る事を約束されられました。それだけならば、反乱でも起こしましたが、国王達はレイアさんや我々の家族すらも脅しの材料にしてきました。我々が裏切らない限りは、レイアさんを含めた我々の家族には、マシューやレンリー王子に好きにさせないというのが約束でした」
俺はその話を聞いて、溜息を吐く。
「お前ら王族はどこまで腐っているんだ。もういい。終わらせよう」
俺はそう言って、聖剣をレンリー王子に返してやる。
「せ、聖剣!!」
レンリー王子は聖剣を大事そうに拾う。騎士達も俺の行動に驚いているようだ……が、俺はそこまで優しくない。
「ほれ。レンリー王子。勇者だったら、魔王である俺に一人でかかって来い。魔王として……お前を勇者として終わらせてやる・・」
俺は地面に刺していた自分の剣を抜き、構える。
レンリー王子は、顔を青褪めさせながら、後退る。
「逃げようとするなよ。今回は逃がさないぞ。お前が生き残る道は俺を殺す事しかないんだ。勇者と魔王は殺し合う運命。それだけだ」
俺は、勇者レンリーに明確な殺意をぶつける。レンリー王子の下半身が小刻みに震え、股間にシミが出来る。
「来ないなら……こっちから行くぞ?」
俺は一瞬で踏み込んで、レンリー王子の聖剣を持っていない方の腕を斬り飛ばす。
「いぎゃああああああああああああ!!」
当然、これだけでは終わらない。いや……ここで、終わらせよう。勇者と魔王の争いを……。
俺は、叫ぶレンリー王子の心臓を一突きにする。レンリー王子は、泣きそうな顔で俺を一瞬だけ見て、息絶えた。
「ふぅ……。これで、勇者と魔王の争いは終わった」
次は……この国を終わらせる。
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