30話 勇者と魔王
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≪レイア視点≫
私は、勇者マシューの新パーティメンバーとして抜擢された、神官レイア。
勇者マシューと剣士エルヴァン、それに僧侶メディアの話は、騎士団長だった父からいつも聞かされていた。
僧侶メディアは、心の奥に野心を持っていると。実力は並み以下だが、その心はとても強いと聞いた。
剣士エルヴァンは剣士としての素質は自分以上だと、ただ、少し遠慮がちな性格なのが残念だと聞いていた。
問題は、勇者マシューだった。
父が剣の修行を付けている時にでも、女の人をずっと見て集中力が無いと言っていた。その事を咎めると、自分が勇者だと、喚き散らしたそうだ。
私も父の手伝いをしていた時から、マシューに何度も口説かれた事がある。
父の剣の修行も終わり、勇者マシューが旅に出たと聞いたときは、しつこく口説かれるという日々がようやく終わると、喜んだものだ。
マシューが旅に出て暫くすると、剣士エルヴァンが裏切ったと、マシューが報告して来た。あろう事か、指名手配してくれと。
その話を聞いた父は「在り得ない」と憤っていたのを覚えている。
私も正直信じる事は出来なかった。エルヴァンはいつも一歩引き、自分の主張をあまり言わない人だった。そんな人が裏切った? そんな馬鹿な。
更に暫くすると、剣士エルヴァンが魔王だったという噂までたった。
ある日、国王に呼び出された私は、勇者マシューのパーティに入るように命令された。
私は拒否したが、マシューからの要望と言われて、全てを察する事が出来た。
私は毎日、マッシュ―の部屋に呼ばれる事になった。
その部屋では、私以外の女性メンバーと勇者マシューが性交しているのを毎日見せられた。
マシューが満足すると、私に近付き「いつでも加わって良いんだぞ?」といやらしく気持ちの悪い顔で、私の頬を撫でてくる。
私には父という後ろ盾があったから、マシューも手を出せなかったのだが、先日、魔王エルヴァンが国に宣戦布告をしたと、父はエルヴァンを止める事を条件に、マシューが私に手を出さないという約束をした。
けれど、マシューは父がエルヴァンを倒すために出た後、私を押し倒そうとした。
「逃げられないぞ!! レイア!!」
「約束が違うじゃない!?」
私がそう言うと、マシューはいつもの嫌な顔で「そんなもん知るか。どうせ騎士団長はエルヴァンに殺される。うるさいのがやっと消えたという事だ」とズボンを脱ぎ始める。
私は部屋の隅に逃げるしかできない。……助けて!! お父さん!!
マシューが私に襲いかかろうとした瞬間、部屋の扉が蹴破られた……お父さん? いや、違う……。
剣士……、いや、魔王エルヴァン!?
≪エルヴァン視点≫
俺がマシューの部屋の扉を蹴破った時点で、下半身を露出させたマシューが部屋の隅に逃げていた女を襲おうとしていた。
俺はマシューを蹴り飛ばし、女を立たせる。
「あんたがギャビンの娘だな……。助けに来てやったぜ」
「え?」
ふむ。見た目は悪くはない。マシューが好きそうな顔をしている。まぁ、そんな事はどうでもいいか。
俺に蹴り飛ばされたマシューは、起き上がり俺を睨みつけている。その周りには、聖女シリと新顔の女二人。そして、この国の第一王女のマリーがいた。
「お盛んだな。変態勇者。で? 今度は強姦未遂か? 本当に勇者の資格がない奴だな」
俺はマシューを呆れた顔で見る。マシューは下半身が露出している。
「おい、マシュー。その股間にぶら下げている者が聖剣か? ふーん。随分立派な聖剣だな。ほれ、構えてみろ」
俺は、剣を抜きマシューに付きつける。
「魔王!! 貴方は女神クリスティナ様が任命した勇者様に剣を向けるなんて!!」
シリが何かをほざく。
「黙れ。ビッチ聖女。マシューはこの国が勝手に作り上げた勇者だろう? いつ、女神様に任命されたんだよ」
「な、なんですって!! 私は聖女よ!! 跪きなさい!! 崇めなさい!!」
バカか、この女。なんで、お前みたいなクソ聖女を崇める必要があるんだよ。それにだ……。
「マリー王女? あんた、隣国との政略結婚する予定だったらしいが、純潔じゃなくていいのか? あぁ、この国も今日滅びるから、関係なくなるか」
俺は、見事な程に性に溺れた馬鹿王女を見て笑う。
「な、なんて無礼な!? 勇者マシュー!! 奴を殺しなさい!!」
マシューは、下半身を露出させたまま、俺にとびかかる。
「そんな汚いもんを近づけるなよ」
俺は、マシューの股間を蹴り上げる。……が、硬いものを蹴ったような気がしたのでマシューを見ると、鎧を着ている?
真っ白な鎧で、光の力を感じる。いつ着替えたんだ? まぁ、いいや。
「へぇ、それが聖鎧ってやつか。それなりの力で蹴ったつもりなんだが、一応、聖鎧なだけあって強度はあるようだな」
「黙れ!! エルヴァン!! 殺してやる!!」
勇者がそんな言葉使うのかよ。
「そうかい。元々、勇者と魔王は殺し合う運命だからな……」
そう言って、俺はマシューに再び剣を向けた。
「マシュー。元親友としての最後の言葉だ。ここから先は、殺し合うだけだ。何か一言あるか?」
俺が、そう聞くと、マシューは汚い笑みを浮かべた。
「そうだな。俺は勇者に選ばれ、お前は全てから嫌われる魔王に成り下がった。お前は俺に討たれてこそ価値が出る。大人しく死んでおけ。親友!!」
まぁ、そうだろうな。今から思えば、こいつは昔から自分がそう思い込んだ事は、そう動かないと気が済まない性格だったな。
「それが最後の言葉でいいな」
俺は、さっきまで盛っていたと思われる格好のマリー王女
を見た。
「しかし、王女に手を出したのは問題だったと思うぞ? 隣国はこの国をよく思っていないと、修業時代に騎士団長であるギャビンに教わっただろう? 王女は、隣国との戦争を回避するための人質になる予定だった筈だ。だが、お前が王女の純潔を奪った事で、王女の価値はなくなった。つまり、隣国がこの国に戦争を仕掛ける口実にもなっちまったわけだ。その事はどうするんだ?」
俺がそう聞くと、マリー王女とマシューの顔が青褪める。他の二人もこの事を知らなかったようだ。驚いた顔が面白い。
「う、うるさい!! 魔王を倒せば、すべてが丸く収まるんだ!! 黙って死ね!!」
「はぁ……。お前は下半身に脳でもついているのか? お前を殺せない理由が更にできちまったじゃねぇか。悪いが、死ぬ方がマシなほどの目に合ってもらうぞ? 親友」
俺はマシューに斬りかかるが、マシューは余裕の表情をしている。あ? 聖鎧を過信しているのか?
俺の斬撃は聖鎧もろとも、マシューの腹部を斬り裂く。
「な!? いでぇえええええええ!!!」
マシューは、腹部の痛みに膝をつく。
「な、なぜだ!? せ、聖鎧が斬りつけられた!! 女神の加護があるんじゃないのか!?」
マシューやマシューの周りにいる女は聖鎧が斬られた事に驚いている。シリの表情は真っ青になっている。
「どういう事だ!? シリ!!」
痛みで冷や汗をかきながらシリに詰め寄るマシュー。
「し、知らない……。それには女神クリスティア様の加護が付いている筈……。ど、どうして?」
「それは、貴女がすでに聖女じゃなくなったからですよ」
青褪めたシリとシリを睨みつけるマシューと女達。そんな奴等に声をかけてきた人物がいた。
俺はその意人物の方に目をやると、クリスとファム。それに知らない女性が立っていた。
「シリ様……いえ、シリ。貴女にクリスティア様の加護など存在しません!!」
「な……!? あんたは……。大巫女ノエリア!!?」
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