2話 炎の四天王
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俺は数日間、アグラーが用意してくれた部屋で、今後の事を考えていた。
真っ先に考えたのが、俺がここに居る事で、アグラー達、魔族に迷惑にならないか、どうかだった。
「エルヴァン。部屋に籠ってばかりでは体に悪いだろう。少し散歩でもしてきたらどうだ?」
「そりゃ、良い。と言いたいが、俺は人間だ。村の人達が怖がるんじゃないか?」
「大丈夫だ。村の皆には、お前の事は話してある。ついでに見回りもしておいてくれ」
俺は仕方なしに家を出る。相変わらず、変な感じだ。上を見ると天井があるのに、まるで昼のように明るい。
俺は、自分が入ってきた方へと歩いて行く。後で聞いた話だが、地獄の大穴には特殊な転移魔法がかけられているらしく、本来は地獄の煉獄という火山の火口に転移するはずだったらしい。
「そこに落ちていたら、楽に死ねたんだけどな」
俺がそう呟くと、鼻で笑われる。
「なんだ?」と振り返ると、角の生えた十五歳くらいの女の子が立っていた。
「あんたね。元勇者の仲間の人間は!? 魔王四天王の娘である私があんたを退治してあげる」
女の子は俺に殴りかかる。いや、遅いよ。
俺は、女の子の拳を掴む。
「ぐっ……。離せ!?」
「いや、離したら、また殴りかかるだろ?」
「当たり前だ!!」
全く、アグラーの奴、村人皆に話してあると言っていたが、普通に襲いかかる奴もいるじゃないか。
俺は、女の子の手を離す。女の子は、懲りずに俺を殴ろうとする。
今度は喰らってやるか。魔族とはいえ女の子のパンチだ。少し痛いくらいだろう。
女の子の拳が俺の頬に直撃する。
痛い。まぁ、それだけだ。
「お、お前!? どうして、効いていないんだ!?」
「ん? いや、痛かったぞ。満足したか? 俺はアグラーから見回りを頼まれているから、俺は行くぞ」
俺は村の外周を回るように村を回る。
村人が、俺をジロジロ見ている。やはり人間は恐怖の対象なんだろう。俺は少し早足になる。
「ちょっと!! そんなに早く歩いたら、疲れるじゃない!!」
ん? 俺は声がした方を振り返る。そこには、先程の女の子が立っている。この子なんでいるんだ?
「どうして、ついてきているんだ?」
「あ! 私はファム。あんたは?」
「人の質問に答えろ。俺はエルヴァンだ」
「じゃあ、エルって呼ぶね」
「いや、馴れ馴れしいな。それよりも、俺の質問に答えろ」
「そうだ。パパが今日帰ってくるらしいよ。あんたの運命もそこまでだよね」
「パパ? さっき四天王の娘と言っていたな。誰の娘なんだ?」
「炎の四天王よ」
ヴルカーノか。一度だけ戦った事があるな。強かったな。
「パパを知っているの?」
「まぁな。一度だけ、偶然出会って戦った事がある。ものすごく強かったよ」
「そうでしょー」
ファムは物凄く嬉しそうだ。こうして喜んでいる姿を見ると、魔王を本当に倒さなきゃいけないのか? と疑問に思ってしまう」
俺はファムと別れた後、アグラーの家へと帰る。
「アグラー。村に異常はなかったぞ」
俺がアグラーに見回りの報告に行くと、アグラーは誰かと話をしていたらしく、邪魔をしてはいけないと思い、部屋を出ようとした。
アグラーじゃない方の奴が、俺を見て驚愕した顔になる。
「お前が何故ここにいる!?」
「え? お前は、ヴルカーノ!!?」
ヴルカーノは俺を殺そうと掌に火球を生み出す。俺は剣も持っていない。これは死んだな。
そう思い目を瞑る。
「ヴルカーノ。やめるんだ」
「魔王様!? こいつは勇者パーティで一番危険な奴だ!!」
ん? 俺が危険?
「ちょっと待て。俺は勇者達に、邪魔者扱いされて、追い出されたんだぞ?」
俺がそう言うと、ヴルカーノは驚いた顔になり、同時に納得したような顔になる。
「そういう事か。今日、戦った勇者達が弱かった理由は、お前が不在だったからか!?」
「弱かった?」
ヴルカーノに詳しく聞くと、最近マシュー達は、炎の魔石を手に入れるために、ヴルカーノが管轄している火山洞窟を攻略しているらしい。そこで、一度出向いて戦ったのだが、あまりにも弱すぎて、見逃してやったそうだ。
「待てよ。少なくてもマシューは俺並みに強かった筈だぜ?」
「いや、今日戦った勇者は、恐ろしく弱かった。何なら明日にでも、お前も行ってみるか?」
「俺がか?」
「あぁ。今でも、あいつらを仲間と思っているのなら、この村から出ていけ。もし、この村に留まるのなら、俺達に協力しろ」
俺は考えた。裏切られたとはいえ、あいつらは昔の俺を庇ってくれた親友であり、元恋人だ。そこまで、恨めるだろうか……。少しだけ考えた後、答えは割とすぐに出た。
「よし。お前等、魔族に協力しよう。よく考えたら、俺はもう人間世界に戻れない」
俺は、ヴルカーノと共に炎の魔石がある、ボルカノ火山へと転移した。
次の話から、勇者に対してざまあしていく予定です。
少しでも面白いや、続きが気になると思っていただければ幸いです。
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『クジ引きで選ばれた勇者』も連載しています。こちらもぜひよろしくお願いします。
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