1話 出会い
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「どこまで続いているんだろうな」
暗く長い通路を歩きながら、俺はマシューやメディア達と旅をしていた頃を思い出す。楽しかった……。でも、あいつらからすれば、楽しくなかったんだろうな。そう思うと、涙が出てくる。
昔は、あんな奴等じゃなかったのにな……。
俺は、昔っから問題ばかり起こしていた。所謂、悪ガキだった。
いつも、大人達に殴られ、親から殴られ、それを庇ってくれていたのが、マシューとメディアだった。
昔っから迷惑ばかりかけていたんだな。愛想をつかれてもおかしくないか……。やっぱり俺は生きてちゃいけないんだろう……。
暫く歩いていると、遠くの方に光が見えた。
「光? まさか、この洞窟はどこかにつながっているのか?」
俺は、光に向かって走り出した。
辿り着いた先は、村だった。
「こんな洞窟の中に……村?」
空を見れば、まだ洞窟の中なのか天井が見える。それなのに昼のように明るい。
「どうしてこんな所に村が。しかも、どうしてこんなに明るいんだ?」
俺は村を調べようと歩き出した……が、背後に何かがいる。剣か何かを突き付けられている。背筋が冷たくなる。冷や汗が止まらない。
「貴様……人間だな。この村に何の用だ?」
俺は両手を上げ、振り返ろうとするが、「動くな!!」と前にも槍を持った……オークと思われる者が槍を突き付けてくる。
「そうか……。ここは魔族達の隠れ家か」
まさか、自分の故郷の近くに魔族の村があったとはな。気付きもしなかった。
最後はこいつらに拷問でも受けて死ぬ事になるのか。
「なぁ。拷問は嫌なんで、さっさと殺してくれないか?」
俺が目を閉じて、槍を突き付けているオークにそう頼むが、なかなか突き刺してくれない。
「どうした? 俺は人間だ。お前等の敵だぞ? さっさと殺してくれ」
俺は、再度オークに頼み込む。
「お前は、何故抵抗しない? なぜ殺されようとする? なぜ諦める?」
背後に立つ者が、俺に質問してくる。諦めるか……。
「俺は、このまま生きていても、国から指名手配されている。このまま生きていても、どのみち絶望の中で死んでいくだけだ。同族に捕まって、拷問を受けて見せしめに殺されるくらいなら、ここで死んだ方が良い」
俺がそう答えると、背後からの殺気が消えた気がした。
「おい。こっちを振り向け」
背後の者にそう言われたので、俺は振り返る。
俺の背後にいたのは、魔族と思われる角が生えた老人だった。
「いくつか質問をしたい。ワシの家に来るがいい」
そう言って、歩き出す。オークと共に老人について行く。
老人の家は質素だが、広かった。
老人は椅子に座り、オークがお茶を出してくれた。
「さて、人間。名前は?」
「俺はエルヴァン。剣士だ」
「そうか……ワシは魔王アグラーだ」
「魔王だと!?」
俺はつい立ち上がってしまう。
俺達の旅の目的が、故郷の近くにいたなんて。
「座れ!!」
オークが叫ぶ。俺は素直に座る。
「ははは。まさか、討伐対象の魔王が、俺の故郷の近くの洞窟にいたとはな」
俺がそう言うと、アグラー達は首を傾げる。
「何を言っている? ここは魔族領だぞ?」
「馬鹿な!! 俺は自殺の為に、故郷の近くにあった、呪いの洞窟の地獄の大穴に身を投げたんだ!!」
「地獄の大穴だと!? あんなところから飛び降りてどうして生きておるのだ!?」
「地獄の大穴を知っているのか? なぜ生きているのかは、俺が聞きたいさ」
俺は地獄の大穴に身を投げるまでの話をアグラー達に話す。魔族にこんな話をしても仕方が無いと思うが、なぜか話をしたくなった。
俺の話を聞いてオークはオレの肩に手を置く。アグラーは目に涙を浮かべている。
「人間も愚かだろう? さっきも話したが、俺は勇者パーティにいた。お前等が憎む対象さ。抵抗はしないから、苦しまない方法で殺してくれ」
俺がアグラーに頭を下げると、アグラーはオレの肩に手を置き「お前の傷が癒えるまで、この村に住むと良い」と席を立とうとする。
「待て!? 俺は、お前ら魔族……、魔王を殺そうとしている勇者の一味なんだぞ!?」
「だが、裏切られたのだろう? ならば、もう勇者パーティではないだろう? 隣の部屋を貸してやるから、ゆっくり休むと良い」
そう言って、アグラーは部屋を出ていく。
オークが、俺が使う部屋へと案内してくれた。
「ここで、落ち着くまで休んでおけ。話をしている時のお前の顔は、とても辛そうだった」
オークは、俺に気を使い一人にしてくれた。
辛そうな顔か……。
今日中にもう一話投稿できたらします。
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『クジ引きで選ばれた勇者』を同時連載しています。もしよろしければ、そちらもよろしくお願いします。
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