16話 自分も家族愛を実行
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殺し合う運命だな……。
俺が静かにそう言うと、王子が立ち上がり俺に剣を向ける。こいつはさっきから俺に剣を向けているが、斬る気はあるのか? さっきからポーズしかとっていないような気がするんだが。顔だけは決め顔なのがムカつくな。
「おい! 王子様。斬りかかってくるなら、いちいちポーズを取らないでさっさと斬りかかって来いよ。その方が俺も返り討ちに合わせやすいだろ?」
俺が挑発気味に、王子に近付くとクリスが俺を止める。
「ダメ。これは何もできない馬鹿王子だから、ポーズをとる事しかできない。追い詰めたら泣いちゃうかもしれない」
クリスが王子に向かって指をさす。おかしいな……。国王は剣士としても名をはせていると聞いた事があるし、息子である王子も剣の腕が凄いと聞いていたんだが? クリスにその事を聞くと衝撃の事実を聞かされる。
「それはハッタリ。国王も弱い。騎士達がヨイショしているだけ」
マジか……。あんなのでも、尊敬したりしていたんだがな。まぁ、戦えないのなら相手にしても仕方が無い。
俺は王子を無視して、親父の元へと歩いて行く。俺が近付くたびに親父は冷や汗をかき、目には涙を浮かべる。
「何をそんなに怯えているんだ? お前がさっき言っていたじゃないか。暴力という行為は家族愛なんだろ?」
俺はそう言って、もう一度蹴る。しかし、家族愛の筈なのに、なぜ親父は泣いているのだ? 抵抗してくれないと面白くもない。……良い事を思いついた。
「ポチ!!」
俺がポチを呼ぶと、ぼろ雑巾のようになった、騎士の一人を咥えたポチが、俺の元にやってくるとクリスを見て頭を下げる。クリスはポチを撫でている。
俺にすら逆らっていたポチが、クリスには大人しい。なんでだ?
「純粋な者同士、心を通わせる」
……。クリスが何かを言っているが、気にしないでおこう。
「ポチ。よく聞けよ。この町にある建物すべて破壊して来い!! 外壁もだ!!」
俺がそう言うと、親父の顔が完全に青褪める。この町の外壁の意味を知っているからだ。
「え、エルヴァン!! 止めさせろ!! この町が滅びるぞ!!」
王子は親父が言っている意味が分からないのか、首を傾げている。自分の国の町の事くらい調べて来いよ……。本当に馬鹿王子だったんだな。
「滅ぼすつもりだけど? とはいえ、俺も一応人間だから、無抵抗な奴をこの手で殺すのは忍びないからさ、近くの山の魔獣達にも協力してもらおうと思ってね」
俺がアッサリそう言うと、親父達の顔は絶望した顔へと変わった。
その顔を見て、俺は少しだけ考えが変わった。
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