12話 王子
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王子は俺に向かい剣を突き付け、騎士達に俺を拘束するように命令する。
「その狼藉者を捕まえろ!! 殺しても構わんぞ!!」
王子様がそう言うので、俺は一番近い騎士に近付き、騎士の一人の首を絞める。
「な!? いつの間に!! その手を放せ!!」
「何を言ってるんだ? お前は今、俺を殺せと命令したじゃないか。殺す命令をしたのに殺される覚悟はないのか?」
俺がそう聞くと、王子は顔を真っ赤にしている。
「それなのにお前は騎士を離せと言う。何か? 俺に無抵抗で殺されろとでも言うのか? それがお前の言う正義なのか?」
王子様は正義という言葉を使っていないが、この国が正義という言葉が好きな事を知っている。恐らくはマシューから、俺が悪とでも聞いているのだろう。
俺がここまで言うと、王子様に少しの迷いが見えているようだ。さて、一番聞きたかった事を聞こうか?
「なぁ、王子様。俺は国から指名手配されているわけだが、俺の罪とは何だ?」
王子様は、俺を睨みつけ、何かの紙を読みだす。
「貴様にはいくつかの罪状がある。まず一つはメディア嬢に対する婦女暴行罪!! 次の罪は、勇者マシュー殿に対する暴行罪!! 更に聖女シリ様に対する侮辱罪!! 最後に魔導士クリス嬢の誘拐罪!!」
要するに、マシューのパーティに対する何かってわけだ。アホらしい。
「私が誘拐されたって何?」
無表情のクリスが首を傾げながら、俺の腕に抱きついてくる。なんでこいつがここにいるんだ? こいつは村でのんびりしている筈なんだが。
「王子。私は別に誘拐されてない。マシューの目線が気持ち悪かったし、私はエルヴァンと一緒が良いからマシューの所から自らの意志で出て来ただけ」
王子はクリスの言葉に少し混乱しているようだ。
「おい。クリス。お前は関係ない。引っ込んでろ」
俺がクリスの腕を強く引っ張ると、クリスは黙って俺の後ろに隠れる。
「そうか!! クリス嬢はお前に操られているのだな。魔物を使役するような奴だ。そのくらいは可能な筈だ!!」
「は?」
王子は自分の推理が正しいと言わんばかりに、胸を張っている。ちょっと待て。こいつってこんな性格だったのか? 俺がマシューの所にいる時には、一国の王たる威厳を持つ国王の血を引く、立派な王子だった筈だ。
俺が、呆れながらも王子を見ていると、クリスが不思議そうに「どうしたの?」と聞いてくる。
俺はクリスに王子の事を聞く、と「エルヴァンは真面目過ぎたから、マシューや王子の本質が見れなかったの。今は、前と違って、ちゃんと人の事を見れている」と真顔で言われた。
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