9話 故郷
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魔物を捕獲した俺は、クリスに頼み故郷の近くの洞窟へと来ていた。
俺がロープを引く度、魔物は呻き声のような咆哮を放つ。
「楽しいなー。ポチ」
魔物をポチと呼び、故郷の町を囲む壁に沿って歩く。
ポチ達は、繋がれて不満なのか、唸っているが気にしない。
暫く歩いていると、自警団の連中が走ってきた。
「な!? ま、魔物!?」
家のポチを魔物とは失礼な。
ちょっと、顔がワニに似て、体が猛獣の数倍の大きさで、尻尾が太くて尾びれで、モノが斬れるて、凶暴ってだけなのに。
自警団の一人が、俺に気付く。
「え、エルヴァン!?
お、お前生きていたのか!?」
俺は、自警団を無視する。こいつらは、俺より弱い癖に偉そうなんだよな。そもそも、話をする必要性すら感じないし。
自警団の一人が、俺の肩を掴む。
俺は反射的に、自警団を殴る。
「おいおい。誰に手を出してんのか、わかってんだよな?」
俺が一睨みすると、自警団は何も言えなくなる。
そりゃ、そうだろうな。こいつらを鍛えたのは俺だ。
俺は、ポチを撫でる、が、ポチは俺に噛みつこうとする。
「違うだろー?」
俺はポチを殴る。これは躾だ。
「お前の玩具は……」
俺は、壁を軽く叩く。
「この中に、沢山いるぞー」
俺の言葉に、自警団達の顔が青醒める。
「え、エルヴァン!? お、お前は何を言っているんだ?」
自警団の一人が、俺に意見してくる。
「え? ポチが遊びたいって言うから、故郷に連れてきたんだけど?」
俺が、不思議そうに答えると、自警団の奴等が騒ぎだす。
言いたい事を、ある程度言わせた後、俺は自警団の隊長の頭を掴み質問をする。
「言いたい事はそれだけ? 最後になるかもしれないから、ちゃんと聞いてあげるよ?」
俺は、笑顔でそう答えると、隊長は股間を濡らしながら、「こ、ここには、お前の家族や、め、メディアの家族もいるんだぞ?」と、俺を説得する。
「うーん。残念。お前が今言った連中に何の価値も無いから。いや、寧ろ不愉快な気持ちになったかな?」
こいつ、馬鹿じゃねーの? 家族は俺を殺そうとしたし、メディアは俺を裏切ったんだぞ? 何で俺があいつらの事を、考えなきゃいけないんだ?
ただ、今の言葉は頭にキタので、俺は全力で町を囲っている壁を殴った。
俺の全力の打撃だ。壁は粉々に砕け、町の外から町の中が丸見えになった。
「おー。こんなところに入り口が出来たぞー」
俺はわざとらしい事を言いながら、ポチを連れ町へと入っていった。