63日目 口約束
「本日は時間を割いていただき、ありがとうございます」
「あぁ、私にはそういうのはいらないわ。98位のキラさん?」
2,3週間待ってやっと8位の人に面会できたけど、まさか女性だったとはね。
「失礼ですが、お名前をお聞きしても?」
「ごめんなさいね。トップ10は個人情報をできるだけ外部に漏らさないようにしているの。下手に名前が広まったりしたら良からぬことに使われるかもしれないから」
確かに、序列持ちは名前が広まりやすいからその名を騙る人たちも多いと聞くね。
トップ10はそれぞれ別々に動いているらしいから、変なやつが名を騙って何かしたら、無実を証明するアリバイがないわけだからね。
「それは失礼しました」
「いえいえ、それで本題をどうぞ」
「実は、僕の友人が大変なことになっていまして」
「ほう?」
「幻想級の討伐に成功したのはご存じかとは思いますが、その際に眠りについたまま起きない人がいるんです」
「あぁ、知っていますよ。76位の方ですね」
パラパラと資料をめくる。
「あぁ、リブレさん、でしたか。上位二つ名らしいですね」
「彼です。幻想級の影響で眠り続けているんです。どうにか出来ないでしょうか。もしくは、どうにか出来そうな人に心当たりはありませんか?」
ダメもとだ。
でも、二つ名とはそういうものなんだよ。
誰か出来る人がいてもおかしくないんだ。
「う-ん、そうですねぇ……」
またもパラパラと資料をめくる8位さん。
「こちらとしても、序列入りしていない人は把握できていませんからねぇ」
「そうなんですか」
二つ名は協会が全部管理しているものだと思っていたけど。
「神様が気まぐれにお決めになるものですからね」
「あ、そうか」
忘れてたよ。
普通の人は、神様に会う事なんてないんだったね。
リブレ君が神様に名前なんてつけたり、普通に話したりしていたからそういうものだという印象がついちゃってたよ。
「ただ、現6位の方なら可能性はあるかもしれませんね」
「! ぜひその方を紹介してはくれませんか?」
「無理です」
即答かぁー。
「76位の方1人の命より、優先事項の高い案件を任せています。流石にそれを放棄することは出来ません」
強く断言される。
これは、無理そうだね……。
「じゃあ、その案件が終わったら紹介してもらうということは可能でしょうか」
「確約はできませんね。そちらが終わったらまた他の問題がありますから。そもそも、この案件がすぐに終わる目途がついていませんしね」
「現6位の方をもってしてもですか」
「それほどのものなのです」
「……では、確約でなくても構わないです」
「……話は通しておきましょう。しかし、忙しい方ですから、何かなくとも引き受けてくれるとは限りませんよ?」
「はい」
この辺りで手打ちかな。
これ以上粘っても無理だろうからね。
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