衝撃の使い道
「そんなこと、俺が出る幕はないぜ?」
「えぇ……」
俺が風呂で考えていた懸念を伝えると、アンリさんに一蹴された。
「というか、そんなに暇じゃない。バンフリオンちゃ……」
「んー?」
「……バンフリオンは既にトップクラスに強いし、前ので油断もなくなっている。俺が心配するとしたらそこだけだが、もはや本来なら心配もいらないくらいだろう」
まぁ確かに、俺がアンリさんに心配される謂れはないな。
リオンももはや心配いらないと、そういうことか。
となると、俺は本当に自分の身の心配をしなければいけないわけか。
「大丈夫だよー。リブレは私がちゃんと守るからー」
「頼りにはしてるよ。ただ、頼りきりというのもな」
自分でどうにかできる範囲はしていかないと。
リオンにつきっきりで守ってもらうというのもおかしいし。
「アンたちも守らなきゃだからな」
「「「ご主人様……!」」」
ここまでついてこさせといて放り出すのはおかしいだろう。
なんだかんだ、俺も嫌いじゃないしな。
「うーん、リブレに守ってもらうというのも捨てがたいよねー……」
「いや、そうなることはないぞ?」
なに言ってんだ。
余計な労力使わせるな。
「アンリさんに貰ったお金はどのくらい残ってる?」
「そうですね、泊めていただいたりしたこともございましたので、割と残っている方だとは思いますが……」
そう言ってアンが金貨の入った袋を出してくる。
「……今、どこから出した?」
「メイドですから」
さらりと流すアン。
このやり取りも久しぶりだな。
うーんと、金貨これだけだと家とか買えるのかな。
どういう相場なんだ?
「給料は引いてるよな?」
「一応、相場ほどは貰っております」
「え、食費とかは俺のから引いていいって言ったよな?」
「そうですね」
俺が必要なものは同時にまとめておいてくれって言っておいたのだ。
「となると、何に使ってるんだ?」
ん、これ聞いていいのか?
「ご主人様のための下着の研究であったり……」
「おい」
「……そのくらいですかね」
「それが全てか!?」
ドゥとトロワによる説明により衝撃の使用用途が発覚した。
どんな高級なの買ってんだよ!
「もちろん、ご主人様の下着も最高級のものですので」
「おかげさまで履き心地は素晴らしいよ!」
「お前、メイドに何させてんだ……?」
「何もしないように苦労してんだよ!」
アンリさんからも疑われてしまった。
「残りのお金で家は買えるか?」
「少々手狭なものであれば問題ないかと」
「そんなに大きなものじゃなくていい。むしろ小さくていい」
とりあえず住む場所を決めて、その後の生活費とかはまた考えよう。
「ん、何言ってんだ?」
「何だ? 俺たちの新生活にけちつけようってのか?」
「なんでそんな喧嘩腰なんだよ……。いや、なんか金の心配してそうだったからな」
「お、お金くれるのか?」
貰えるものは貰っておく根性。
「いや、あげるっていうか、報酬だな。前のは旅費と手付金みたいなもんだ。今回はバンフリオンをちゃんと無事に返してくれたことに対する報酬だ」
「なるほど」
手付金という概念が俺にはなかったな。
金持ちは違うぜ。




