アポなし訪問は無理がすぎる
「まぁ、それは今は置いておこう」
現行犯でならどうにかしようとも思えるが、現段階では何を言ってもどうにもならないだろう。
そんなことより今は自分たちのことだ。
「会いに行くタイミングについては先に連絡とかしなくていいのか?」
偉い人だとアポなし訪問とか印象を悪くするだけ説あるが。
「そうだねー。パパが私が行くって連絡はしてくれているらしいけどねー」
「具体的な日にちは俺たち次第だもんな。まずは守衛さんに話を通すとこからか」
で、何日後に伺いますって伝えるのがいいかな。
それでもかなり適当だけど。
「領主が住んでる街はここからどのくらい離れてる?」
「地図上ではこの辺りになりますので、最速で3日ほどでしょうか」
この世界には天気がないから悪天候で足止めを喰らうこともない。
4日後には着くか。
「目新しい情報も出なくなったから、ここの街に留まる意味はあんまりない。明日には出発しよう。その前に、トロワは俺がすっぽり隠れるフード付きのローブみたいなのを買ってきて欲しい」
「かしこまりました」
「リオンもそれでいいか?」
「そうだねー……」
「{面倒}をありありと出すなって。これから何回連続でこんなのが待ってると思ってるんだよ」
「そんなこと言っても弟君ー……。嫌なものは嫌だよ?」
「それはそうなんだけども。顔には出すなよ?」
「わかってるよー。今だけだよー」
脱力して俺にしなだれかかってくるリオン。
横に何人も座れるソファーに横向きに座っていたわけだが、今はリオンの頭が俺の肩の上にある。
うーん。
鼻腔をくすぐるくすぐるリオンの髪の匂いよ。
男性と女性が同じシャンプーとか使っても同じ匂いにはならないよな。
なんでこんないい匂いするんだろう。
「とにかくだ」
「あー」とか言ってるリオンを押しのけながらまとめる。
「次の街に行ってもまた情報収集はしてもらう。だが、向こうに近づけば近づくほど情報も得やすくなるが、向こうに届きやすくもなるから、くれぐれも無理はしなくていい」
俺たちのことをやり過ごそうとしてくれているなら、それが一番まである。
好意的じゃないのは確定してるんだからな。
だが、何か隙を見せたらそこにつけこんで何かしてくるかもしれない。
「特に3人は深入りしないこと。いざとなったら俺かリオンが出るから。無理はせずに帰ってくること」
「「「はい」」」
「リオンの顔が割れてるってことはないんだよな?」
「ないと思うけどー……」
「ただでさえ、目立つ容貌してるんだから無茶苦茶に動き回るなよ?」
「やだなー。そんな可愛すぎて目立つから気を付けろよなんてー。本当のことを言ってもご褒美なんてないよー?」
なんでこんな時だけしっかり言葉の裏まで汲み取るんだよ。
翌朝、俺は4日ぶりにしっかりと寝ることができ、起きて周りを見回してから戦慄する。
ダブルくらいのサイズのベッドの上。
オーシリアがいるのは当然として、別の部屋で寝ているはずのリオンの姿がそこにはあった。
こいつ……!
どうやって入ってきやがった……!




