子供は勇敢です
「俺の想像の5倍くらい治安悪かったんだが」
なにせ出会い頭に「金払うから周りの女よこせ。女どもは愛人にしてやる」とか言われたんだ。
想像の斜め上過ぎた。
「そういった地域、という事でございます。もちろん、こちらでも人身売買は許可されておりません。しかし、禁止するような法も存在しなかったと記憶しております」
大抵こういう説明を担当するアンが手綱を握っているので代わりにドゥが説明してくれる。
禁止されてないってことは実質黙認か。
ここは実力主義というより、金があれば許されるという統治の仕方をされているのかもしれん。
つまりだ。
俺たち強くね。
個人には抱えきれないほどの金を持っているのだ。
最悪どうにかなるかもしれない。
「あれって訴えられたりしないよな?」
別に金品を奪ったわけでもなく、ただ返り討ちにしただけである
。
しかし、証明しろと言われれば出来ない。
向こうを贔屓されたらきついな。
「そういう時は力で黙らせればいいんだよー。その意識は全体にあるからねー」
「そうしないために考えてるんだけどな……」
荷馬車に揺られることそこから4時間。
次の領主の治める一帯の街に入った。
まぁ訝しげな視線を向けられるわ向けられるわ。
非常に居心地も悪く、感情が眼に痛い。
{敵意}ではないのが救いか。
そんな中、俺たちに声をかける勇気ある第一街人がいた。
「ねぇ、ねぇ! お姉ちゃんたち! お姉ちゃんたちはどこから来たの?」
子供というのは勇気の塊である。
「うーんと向こうの方だよー。色んなところに旅して回ってるんだー」
「じゃあ、じゃあ、珍しいものいっぱい知ってる?」
「もちろんだよー。いーっぱい知ってるよー」
「聞かせて聞かせて!」
女の子を皮切りにリオンのもとに子供がわらわらと集まっていく。
こういう求心力は凄いな。
見目麗しいというのも関係してるんだろうな。
「では、私は本日の宿を確保して参ります」
「あぁ、頼んだ」
そういう役に収まったらしいトロワが出掛けていく。
こうなると俺は手持ち無沙汰だ。
愛想がいいわけでもなく、目付きが悪いので子供たちも話しかけたりしてこない。
別に悲しくはないんだけど、なんだろうこの虚しさは。
リオンはその間にも子供たちに今までの経験談を語ってあげている。
「うちのパパが、弟君にお前なんかに娘なんかは渡さん! って怒っちゃってー。でねー……」
今は俺が話題になっているようだ。
「ねぇ、お姉ちゃん」
「なにかなー?」
「おとうとくんってあそこにいる人のこと?」
「そうだよー」
「なんでおとうとじゃないのに弟君って呼んでるの?」
子供は気になったことをズバズバ聞いてくれる。
いいぞ!
もっと言ってやれ!
「そんなのなんとなくだよー」
こいつ言い切りやがった!




