働かざる者食うべからず
「どうですか、うちの料理は」
「率直に言って神です」
夕飯の席で、俺は米をがっついていた。
第六界では模索しているものの、米というものは確認できていない。
小麦に似た何かがあるのでそれで炭水化物は補えているのだが、もうそれはそれは米が恋しい。
2回目の第七界は米しか食わない。
今、決めた。
「それは良かった。うちの者たちも喜ぶでしょう」
「そういえば、ここの人たちはなぜ全員メイド服なんですか?」
方針を決めて、夕飯までの間。
屋敷の中をうろうろする時間があったのだが、見事にメイドさんしか見なかったのだ。
流石に訝しんでスルー・アイまで使って屋敷を見て回ったが、執事さんすらいなかった。
「仕える者はこの服装で女性が正式なものだと閻魔が言っていたものですから……」
至極不思議そうに俺の疑問を解消してくれる領主様。
うん、アンリさん。
いくら神だからって自分の趣味を持ち込み過ぎじゃないですか。
なんともグッジョブである。
「あとどのくらいこちらには滞在する予定で?」
「そうだな、5日くらいかな」
「では、その間、うちのメイドたちを鍛えてやってくれませんか」
「は?」
あ、素が出た。
だが、心優しい領主様はそんな小さなことは気にしない。
「うちもメイドたちを鍛えてはいるのですが、私もそれほど長い時間は相手していられませんし、身内同士では限界があります。ですから、是非お2人に鍛えてやって欲しいのです」
「いや、リオンはわかるよ? 強いしさ。だけど、俺は違うだろ」
「何を言っておられる。メイドの攻撃を鮮やかに防いでいたではありませんか」
「いや、あれも俺じゃないからな……」
俺も反応はしていたけど、実際にステッド・ファストのを出したのはオーシリアだし。
なにより面倒だ。
「もちろん、いいですよー。ね、弟君?」
「へっ?」
リオンが思っていた数倍乗り気だな?
「お世話になっているんですから、そのくらいは働かないとですよー。ね?」
「それは一理あるな……」
リオンに論破される日が来るとは……。
「私も体動かしとかないと鈍っちゃってるからねー」
「そっちが本音か……」
だが、お世話になりっぱなしというのもな。
「わかりました。俺になにかできるかはわかりませんが、頑張ってみることにします」
「それは良かった。どうぞよろしくお願いします」
翌日。
「「「お客様、よろしくお願い致します」」」
「はーい、任せてねー」
庭に勢揃いしたメイドさんたちと上機嫌なリオンがいた。
勢揃いと言ったが、100人程で、全体の3分の1程度らしい。
残りの人たちは普段通りの業務を行っているとか。
つまり、この屋敷だけで軽く300人くらいのメイドがいるらしい。
そんなにいるか……?




