隙をさらすな、食われるぞ
「ようこそいらっしゃいました、バンフリオン様。門での様子を見ると、腕はなまっていないようで何よりです」
「そちらもおかわりないようでなによりですー」
「ところで、そちらは?」
挨拶を終えた領主様が俺に視線を向ける。
「弟君です!」
「いや、断言すな!」
俺が自己紹介しようとした出鼻を挫かれ、ツッコミから入ってしまう。
「弟……?」
ほら、領主様が混乱してる!
「リオンの言ってることは気にしないでください。俺はリブレといいます。なんというか、リオンの付き添いのようなものなので気にしないでください」
「わしはオーシリアじゃ。わしは主の所有物なのじゃからなおのこと気にせんでよいぞ」
オーシリアの発言に場の空気が固まる。
え。
「弟君、そんな小さな子を……」
「誤解だ!」
リオンの震える声で俺が置かれた状況を察し、俺を取り押さえるべくジリジリと近づいてきていたメイドさんに注意を向けながら必死に事情を説明する。
そうだった。
アンリさんはなぜかわかってたっぽいが、他の人はオーシリアの正体を知らないんだった。
端から見れば幼女に自分を主とか呼ばせている即刻逮捕案件なんだった。
久しいな、この説明するの。
そういえば。
「オーシリア、お前今は杖になれるのか?」
「む? いや、なれないのじゃ。本体はあくまでもあの杖で、それはこっちには来ておらんからの。精神部分のわしだけ来ておる状態じゃから、この姿のままじゃな」
そうだよな。
そうだと思った。
つまり。
オーシリアが本当に杖であることの証明が出来ない。
「リオン、信じてくれよ」
「弟君を信じたいのは山々なんだけどねー。これだけは聞かせてくれる?」
「なんだ?」
「弟君は幼女が好きなの?」
「幼女は慈しむ対象ではあるが、恋愛対象にはなり得ない。ちなみにだが、こいつはこう見えてたぶんリオンより長生きだ」
キッパリと断言する。
何度でも言おう。
俺は、ロリコンでは、ない。
「うーん、なんか微妙な表現だなぁー……」
リオンは一瞬思案顔になるが、すぐにパッと笑顔になる。
「まぁ、いいやー。オーシリアちゃんって何歳なの?」
「む、えっとじやな。少なくとも1000年単位では生きとるんじゃないかの。詳しいことはよくわからんのじゃが」
「そんなに長生きなんだー。凄いねー!」
すぐに切り替えが出来るのがリオンのいいとこだな。
俺からすればリオンの年齢も中々だった気がするが。
「ふむ、興味深い。君の存在に違和感があるのも関係しているのかね?」
なんだそりゃ。
領主様が俺に興味があるような視線を向けている。
{興味}が一番に視えるってことは悪意はないようだし、リオンも友好的な人って言ってたから問題はないんだろうけど。
「すみません。その辺りはお教えすることは出来ないです」
頼る人もほぼいない状況で、ただでさえ装備が欠けている俺が自分の情報を明かすことは悪手だ。
どこから誰に漏れるとも限らないからな。




