一蓮托生とはこのことだ
「なぜいるのかとはご挨拶じゃな、モグモグ。主とわしは一心同体、モグモグ。主あるところにわしありという事じゃ、モグモグ」
「うん、とりあえずその手を止めようか」
なぜそんなにも頑なにお菓子を口に運ぶ手を止めようとしないのか。
「それに答えになってないぞ」
俺が聞いたのは、なぜ杖であるオーシリアがここにいるのかということだ。
俺がこっちに来ているのはわかる。
体があり、精神体もあると仮定して、MPが足りていないんだ。
わかりやすい。
だが、オーシリアは杖だ。
自我のようなものはあるにしても、こっちに来ている理由がわからない。
MP枯渇のような理由がないのだから。
「そりゃ、わしは主専用の精神体じゃからな」
「どういうことだ?」
「ほれ、わしって長生きじゃろ?」
「そうだな」
本人曰くヘスティアさんが第六界作ったころからいるらしいし。
「じゃから、杖としてのわしはかなり長生きなのじゃが、このわしは主のために顕現したものなのじゃ。オーシリアという名前も主につけてもらったじゃろ?」
「そういえば、そうだったな」
なし崩し的に名前つけたんだった。
よく考えたら、そうだな。
なぜそんなに長生きなやつに対して今更俺が名前をつけねばならんのか。
「というわけで、主の死はわしの死と同義なのじゃ」
「う、うん?」
納得できるような出来ないような……。
「でも、俺死んでないらしいけど?」
「正確には、主の精神体と一蓮托生という事らしいのじゃ。こればかりはわしも今回で初めて知ったからのぅ」
「へぇー」
「そんな感じでお前の持ち物なら無下に扱うわけにもいかねえからな。もてなすと言ったら延々と菓子を食ってやがる。どうにかしてくれ」
「普通にご迷惑をおかけしました」
俺が寝ている間、オーシリアはあのペースでお菓子を貪り食っていたらしい。
「で、リオンはそろそろ放してくれないのか?」
「ダメですよー。久々だから弟君成分を補充しないとー」
先ほどから起き上がろうとはしているのだが、リオンの馬鹿力で抑えつけられていてどうにもならない。
いや、膝の上の居心地は悪いどころか最高だし、眺めも素晴らしいのだが、そろそろバカ親が黙っているとも思えない。
こっちで精神体も殺されたら今度こそしっかりアンリさんと対面することになるだろう。
チラッとアンリさんの方を見るが、特に怒っているという様子もない。
「なぁ、アンリさんってこの状況に怒ったりしないのか?」
「?」
「聞こえてるぞ」
何のことかわからないという顔をするリオンの代わりにアンリさん本人から返答がくる。
しまった!
流石閻魔大王、地獄耳!
遠い眼をしてアンリさんは言う。
「俺はな、成し遂げたんだよ……。子離れというものをな……」
哀愁が凄い。
「あー、そういうことねー。パパには、根気よく説得して、子離れを完遂してもらったんだよー」
うーん。
リオンが「説得」って単語を強調していたからな。
それはそれはエグイ説得だったのだろう。
何が行われたかについては考えたくない。




