落ち着いていきましょう
「キラはまぁ、適当に頑張ってくれ」
「投げやりだね」
「投げやりにもなるだろ。なにせ、結局突破口がない」
そう、策を講じてはいるが、どれも幻想級に対応するものであり、撃退するためのものではないのだ。
「正直、キラにどういう指示を出せばいいのかわからん」
「了解。じゃあ、僕が自分で判断して動くけど、いいかな」
「あぁ。ただ、どこかヤバそうなところがあったらカバーに入ってくれ」
「任せてよ」
まぁ、主に必要になるのは俺だろうが。
「じゃあ、各自行動開始で」
族長たちは地面に降り、エネミーの相手。
ケインとレイン班は分かれて幻想級へ攻撃。
キラはどっかに姿を消した。
さて、俺は?
オーシリアに頼んでおいた小島のようなところに腰を下ろし、幻想級を見ながら状況を整理する。
ここまで落ち着くタイミングがなかったからな。
一度冷静になれば見えるものもあるはず。
「えっと、現在幻想級のHPの6割から7割は削れている……」
これは、予想以上の成果と言っていい。
この世界で2番目の上位者を相手にしているのだ。
出来過ぎているだろう。
「ただ、今のところ攻撃手段はレインとケインしかいない……」
一応、銃とかもいけるとは思うのだが、ほぼ黒い靄に防がれてしまうので収支はマイナスだろう。
どうしても他に案がなくなったらしなければならないが。
「課題はヘイトの分散だな。レインにこれ以上無理はさせたくないし……」
ここ数十分、レインは靄を避けながらの戦闘を強いられている。
そのおかげで他の奴が楽に行動できていると言っても、流石にレインの負担がでかすぎる。
これに関してはマジでどうしたらいいのだろうか。
唯一、ケインにはヘイトが向く可能性はあるが、それも恐らく難しい。
レインの方が攻撃の手数が多いし、ケインの熱線銃は火属性も入っているから本来の半分しか効果がないだろうからな。
今までもそうだったのだが、自分が攻撃できないというのは非常にもどかしい。
今回は更に、こちらが追い詰められているというのがわかっているだけに非常にもどかしい。
今まではこちらが有利だったため、俺が手を出さなくてもどうにでもなるというのがわかっていたが、今回はめちゃくちゃに不利だからな。
マジできつい。
こうやって考えているだけではなにも役に立てている気がしない。
探求スル者の名が泣く。
考えろ……。
些細なことでいい……。
片手で小刀をいじりながら考える。
ん?
今の今まで必死過ぎて忘れてたけど、こいつ魔法無効化できるんだよな……。
……。
まさかの突破口って俺か?




