崩れる前に崩れないものを作れ
「まず一つ目だが、今まで削れているのは全体の3割ってところだな」
「なんだよ。まぁまぁ良い情報じゃん」
見た目ではなにも変わっていないように見えたからな。
具体的な数値で分かればやる気も上がるってもんだな。
「もう1つは幻想級にはもう一段階
上があるってことだ」
「あぁ、それも予想の範疇だ」
大抵2段階進化なんだよな。
イメージでしかなかったけど、カイルさんが視たってことはそれで決まりだろう。
2つともけっこう当たりの情報じゃないか?
「お前さんはこれをプラスに捉えるのか。ここまでやってきてやっと3割しか削れていないんだぞ? 更に、もう一段階手強くなるんだ。このままのペースでいくわけがない」
「そうだな。だが、前よりマシだ」
1人で終わりの見えない戦いを続け、丸1日かかったダンジョンでのボス線に比べればまだやり易い。
「お前さんもよっぽど修羅場を超えてきているよな」
「俺に力がないから危機に陥ってただけだよ」
俺以外の二つ名持ちなら簡単にいってただろうからな。
あれのおかげでオーシリアが出てきてくれたっていうのはあるけど、それにしても危機過ぎた。
「じゃあ、カイルさん、なにか進展があったら教えてくれよ?」
「あぁ、死ぬなよ?」
「任せてくれ。瀕死くらいで何とかする」
「1つも安心できねぇな?」
互いにニヤリと笑って俺はその場を後にする。
この間、たった5分ほどだが、目を離しているうちになにか手遅れになっていたらと思うと怖すぎる。
急いで前線へと駆ける。
俺が戻ると、思っていたよりも混沌としていた。
ケインとエルメのところはまるで暴風が吹き荒れているかのような荒れようだ。
本気になるとこうなるんだな。
そのうち漏らしを周りの兵士や冒険者が処理しているが、大抵手負いの状態で流れてくるのでそう苦労はしていなさそうだ。
ここでは散弾銃が活躍している。
問題は幻想級に対面している人たちだ。
レインは大丈夫そうだが、他の面々はMPの枯渇が原因なのか、疲労の色が濃くなってきている。
基本的に睡眠でしか回復しないので、減るばかりなのだ。
「全員! 最後に一発デカいの撃ったら引いて少しでも寝てくれ! そんな状況じゃないのは百も承知だが、このままでもダメだ!」
一旦MPを回復してもらうしかない。
全員が引いたあと、レインと微調整を始める。
「さっきの山よりちょっとだけ小さいのを何個か作れるか?」
「出来ますけど……。さっきのより大きいのじゃないんですか?」
そこだな。
「たぶん、さっきのより大きくしても結局トンネルを掘られて抜けられるけど、小さかったら迂回してくると思うんだ」
「確かに、迂回してましたね」
「幻想級の移動スピードから考えると、何度も迂回させた方が時間が稼げる。攻撃の手が足りない以上、どうやって遅らせるかを考えるべきだ」
レインだけで攻撃というのも考えたのだが、それだけだと幻想級のもう一段階上が発現した時にヘイトが全てレインに向きかねない。
それは流石に危険すぎるので遅らせるのをメインにする。
「一旦、全員で引いて、立て直そう」
崩れてからでは遅いのだ。




