寝ぼけるのもほどほどに
「いやぁ、思いがけない事態だったなぁ」
「そうだね」
「ほんと、わしとしてもあんな戦闘になるとは思わんかったぞ」
夜の街を光を避けながら歩く。
これ見えてる人がいたらやばいよな。
幼女2人連れて人目避けて歩いてる奴だからな。
魔法の効力を信じるしかない。
「プリンセ、さっきはありがとな」
プリンセを撫でながらゆるゆる歩く。
「うみゅ、わたしが暴走しちゃってごめんねー」
「なに言ってるんだよ。俺はプリンセが怒ってくれて嬉しかったぞ?」
「ふにゅー」
ちょっと強く撫でるとかわいい声出して静かになった。
率直に尊い。
「おい、わしも! わしも頑張ったぞ!」
「はいはい、オーシリアも頑張ったな。ありがとう」
「うむ、もっと褒めてもよいぞ」
「よしよし、偉いぞー」
オーシリアに関してはプリンセに張り合ってるだけみたいだ。
少し褒めると満足げな顔をする。
帰り着くと、俺もプリンセも疲れていて何も考えずにお風呂に入ってそのまま布団に入ってしまう。
改めて考えるとお風呂に慣れてるのがおかしい気もするが、まぁそこはそれ。
眠いし。
「あ痛ぁ!」
翌朝、俺はいきなり大声を出して起きる。
痛たたたた!
何だ!?
「プリンセか!」
手を布団の中から引き抜くと俺の手に噛みついたプリンセごと出てきた。
なにゆえ!?
「あむあむ。おいしい……」
寝ぼけて俺の手を食べてるのか!?
ぺいっとプリンセを剥がすとちょっと口をモグモグさせてから「ふゅ……」とか言ってまた眠りに落ちた。
かわいいんだが恐ろしい。
多分昨日は疲れすぎてて夜ご飯を食べてないからお腹が空いてて、食べ物の夢でも見ているのだろう。
「リブレさん、その傷はどうしたの?」
「なんでもないよ。気にせずご飯をお食べ」
「? うん!」
俺が作った朝ご飯の匂いにつられて起きてきたプリンセに手の傷を気にされたが、本当のことは言わなかった。
世の中、知らない方が良いこともあるのだ。
この場合、ご飯を食べたら解決するだろうしな。
「主、けっこう苦労しておるんじゃな」
「それは言わない約束だろ?」
そんなのこの世界に来てから苦労しかしてないわ。
オーシリアは俺が噛まれて起きたときには既に起きてた。
杖なので睡眠は出来るが、必要ないのでコントロールが簡単らしい。
ちなみにオーシリアにトイレはするのか聞いたところ、顔を真っ赤にして「杖はトイレなぞせん! 女性にそんなことを聞いてはいかんぞ、主よ!」と言われた。
俺は「いや、お前性別の概念ないじゃん、杖だし」と思ったが、あまりの剣幕に一応謝った。
今思えば、なぜ謝ったのか不思議でならない。
「とうとう今日か……」
今日の夜にエルフの町に突入することになる。
狙うはルーリアと行った一番でかい建物だが、地下への行き方がいまいちわかってないのでそこは探り探りやるしかない。
しかし、今日の夜に行くからといって特に準備すべきこともない。
大体昨日に済ませたからな。
だらだら過ごして昼からまた寝るとしよう。




