城下町の違和感
森の洞窟へと出かけた二人。その意図とは…?
「おぉー。暗いなー」
「当たり前じゃないですか、洞窟なんだから。馬鹿ですか」
いや、そこまで言わなくても……。
「シャイニー・ポイント」
俺とレインの人差し指が光りだした!
「この魔法じゃ二人の指を光らせるのが限界ですけど。ないよりはましでしょう?」
「めっちゃ助かる」
「じゃあ頭撫でてください」
「え? あ、あぁ」
撫でるとにへへーって感じで笑ってくる。二人だと懐いた感が強いな……。
バサバサバサッ!!
「ふぇやああぁぁぁぁぁ!!」
すごい声でたな!
「なんですかぁぁぁ!」
「蝙蝠だよ。そりゃ洞窟だからな」
「いやそれにしたって落ち着きすぎじゃないですか!? 普通蝙蝠って嫌ですよ?」
「いやここにいるのはわかってたからな。わかってたらそんなに驚くことでもないだろ?」
「なんでわかるんですか……」
「昨日来た時に周りの果実が食べられてたのみたし」
「それだけじゃ蝙蝠だとはわかんないじゃないですか」
「最後まで聞け。そして葉の裏に隠れてる実はあまり食べられてなかったからな。蝙蝠は超音波で目標を認識するからな。葉の裏とかは認識しにくいんだよな」
「チョウオンパってなんですか?」
あー。そっからなのか。
「要するにヒトには聞こえない音だよ」
「そんなのほんとにあるんですか?」
失礼な!
「で? 結局なにを取りにきたんですか?」
「そこらへんにある黄色な石を探してくれ」
ひょいとレインが石を拾う。
「これなんですか?」
えーと……。
「それはな……。蝙蝠の尿が染み込んだ石だ」
「え。ひぃええ!?」
またヘンな声でた。
「あ! 落とすなよ!」
「こんなの持ってられないですよ!」
それはそうか。
「まあ袋にいれて持って帰るからいいけど」
「で、君は硝石を持って帰ってきたわけだね。でもなんでだい? 僕が硝石を買ってきたのはなんの意味があったのかな?」
「確かめたかったんだ。ちょっと気になることがあってな」
通常、硝石は緑礬と明礬をあわせて蒸留すれば硝酸を発生させるものだ。
だが俺の見立てが正しければ店のものではそんなものは発生しない。
「レイン、釘あるか」
持ってきてもらった釘に生じた液体をかけてみる。変化なし。
次に洞窟でとった硝石を同じ手順で蒸留し、釘にかけてみる。若干溶けた。つまり硝酸ができたってことだ。
「キラ、王様に今市場で出回っている硝石まがいのものは使用禁止にしてくれと伝えてくれ。体への影響が未知数だ」
「今使われているのが硝石でないというならなんだと言うんだい?」
「わからない」
多分この石は元の世界にはない。
「だが問題はそこじゃない。問題はなぜ硝石でないものが硝石として一般に流通しているのかということだ」
「つまり何者かが意図している可能性もあるということだね?」
「理解が早くて助かるよ」
「わかった。すぐに伝えてくる」
キラが去ったあと、
「リブレさん、僕まだわかってないんですけど……」
あーそういや説明してなかった。
「今肉の保存に使われていて、人体に影響が少ないと言われている物があります。それが今偽物だということがわかりました。さてどうだ?」
「大問題じゃないですか」
そういうこと。これじゃ迷宮に行く前に犯人捜しやらされるんだろうなー。
まぁ。今日は寝よう。明日考えればいい。
「リブレ君、王が原因を突き止めてほしいとおっしゃっているよ。これを解決すれば迷宮に行かなくてもいいかもって」
帰ってくるのはえぇよ!
どちらにしろ面倒だろそれ!




