猫の嗅覚も頼りになるよね
俺がルーリアについていくとなると問題になるのがその間にプリンセはどうしているのかということだ。
ドルガバとの協定により、獣人種への偏見などは薄くなっており、さらに俺がいない間に8か月も経っているわけなのでかなり影響が出ている。よって、プリンセを放って行っていても多分問題はない。
そもそもこいつ強いし。変な絡み方されても実力行使で切り抜けられるだろう。
「こいつ連れてったら問題になるか?」
「いえ?プリンセ様は姫ですし、レインさんの昔の服をお借りすれば服装もクリアです。恐らく咎められることはないでしょう。リブレさんと違って容姿も優れていますしね」
俺を引き合いに出す必要あった?
前はもっと丁寧な対応だったのに…。相当怒ってるな…。
「プリンセは一緒に来たいか?」
顔を洗って戻ってきたプリンセに聞いてみる。
「どこにー?」
「エルフ達のとこだ。俺はレインを見つける手がかりを探しに行くんだ」
まだ眠そうな顔で考えるプリンセ。
「じゃあ、行くー。わたし、レインさんのにおいならわかるし」
そっか。
猫って犬に隠れてるからあんまり印象ないけど、嗅覚に優れている。犬は人間の嗅覚の数百万倍であるが、猫は数万倍から数十万倍は優れている。
これはあてになるわ。
「じゃあ、一緒に行くか。いいだろ、ルーリア?」
「えぇ。ファルス、服を見繕ってあげて」
「承知しました」
ファルスがプリンセを抱えて奥へ消えていく。
…なんでレインの服の場所を把握してるんだろう。
「お腹がすきましたわ。何か作っていただけます?」
我儘かよ。
これ、あれだな。前は猫被ってたな。たぶんこいつはこれがデフォルトなんだろう。
ファルスがいなかったらどうなるかわからんなこいつ。
俺もまだ食べてないからいいんだけどさ…。
朝食を作り、食後のお茶の時間に少し情報の整理をする。
「で、エルフ達に伝えに行くってことは昨日の会議で方針は決まったんだよな?どうするんだ?」
「えぇ、まずは…」
話が長かったので割愛。
要点だけまとめると、昨日王様が知らせた通りに避難を開始する。もちろん希望者から優先し、全員が逃げ出せるペースを維持する。城の人間は多くが残り、避難誘導などに対応する。二つ名持ちは基本的に最後まで残り、幻想級を退ける方法を模索する。
「なるほどなー」
すぐに逃げ出すやつもいるだろうけどぎりぎりまで残ろうとするやつもいるだろうから、そこは国が管理するってことか。
城の人間が先に逃げないのは正解といえば正解か。国民を捨てて逃げたとか言われかねんからな。
で、可能性のある二つ名持ちはここを守れる可能性を追う、か。俺たちが無理なら一般人は無理だろうし、最悪逃げるのもできるだろってことかな。俺はキラに抱えて逃げてもらおう。
「エルフ達への助言みたいなのは?」
「ありませんわ。そんなことをすれば意固地になって絶対に動かなくなること間違いありませんから」
「だけど、エルフってのは土地を大事にしてるんだろ?」
どっちにしろ動く気がしないな…。




