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告白

作者: 荀

「高校の時好きだったよ」って

伝えたことありますか?


ゆっくりとお読み下さい


布団に入ったけどねれない

下に降りてグラスにみずを注いで

氷を一個みずのなかに落とす

氷の周りの水の揺らめきを眺めて

人が周りに影響を与えあっているような姿を想像する

冬なのに暑くて

明日はデートなのに寝付けなくて

余計なことを考えてしまって

不意に死が過ったりする


こんなふうに目が冴えてしまうのは

昨日のことの所為なのかな?


「高校の時好きだった」


そんな言葉で何を期待したのだろう

何を期待させたかったのだろう


夜中の部屋はうっすら寒くて

けれど布団を被っていると暑苦しくなる

三月の始め

別れの季節がもうすぐやってくる

僕はあまり別れが寂しくない

寂しがったり切なくなったりし過ぎたせいで

もうわからなくなってしまったようだ

心を守るために鈍感になってしまったようだ

まぁ僕の気持ちはさておき

さよならは辛いものだし

みんなが寂しがったりしているのをみると

僕も寂しくなってくる

鈍感にはなったが涙もろくもなってきた


昨日の夜

友達と飲みに行った

大学の友達で

高校でも友達だった

けれど友達以上のなにかであったような気もする

前の携帯電話ってメールを受信するのに検索みたいなのをかけられるのがあった

その頃の僕はその子からのメールを心待ちにしてて

メールの受信検索をして

ドキドキして胸とか体とか熱くなって

手が震えて

そんな時間が大好きだった


付き合いたいなんて

思ってはいたけれど

それがどういうことかなんてまだ知らなくて

関係を壊して前に進むにはなにかが足りなかった

覚悟とか

勇気とか

そういったものが


結局その子とは友達のままで

卒業を迎えた



大学生になって彼女が出来た

告白はちゃんとしてなくて

なし崩しな感じで付き合い始めた

初めての彼女

けれど彼女は優しくて面白くて

なにより可愛くてしかたなかった

今は当時とは気持ちは変わったけれど

変わらず愛している

いつまでも一緒にいたい

今年で四年目でもうすぐ五年目になる


彼女ができて一年後

その子は同じ大学に入ってきた

動揺した

動揺した以外の言葉がつけられない

その子はいつも寂しそうに笑う子で

必要とされているような気がしてしまう

その子は僕のいるサークルに入った

○○くんがいるから心強い

みたいなことを言っていた気がする

僕は嫌だった

だって彼女ができてうまくいってて

そこへ好きだった人が現れたんだから

昔と今が入り混じったような感覚

それでも僕は笑顔は得意だったから

なんとなく過ごしてきた


昨日の夜その子と飲みに行った

その子はその日も寂しそうに笑って

辛かった話とか

楽しかった話とか

高校の話とか

色々話した

白のタートルネックまであるニットを着ていて

潤んだ目は高校の時から変わらない

その目で見られると

どうしようもない気持ちに襲われる

その子はモテるらしい

色々な話を聞く

本人も言う

私モテるから

でもあんまりいい人寄ってこないんだよね

なんて

それまた寂しそうに言った




「高校の時好きだったよ」


僕は言った

まるで告白するかのように言った

まるで告白するかのように心臓が鳴った

その子も告白されたかのように

「えっ」

と声を出して

頰を赤らめた


ああ、これが告白か


そう思った


その子が寂しそうに笑うのが切なくて

自信をつけてあげたかった。

その子のことをまだちょっとだけ好きでどうにかしたくて君にキスをしたかった。

その子のことを断ち切りたくて

別れの言葉を捧げたかった。

僕の優しさも自分勝手も悪意も昔の恋も入り交ぜて放った言葉。


「高校の時好きだったよ」


君にはどう響いたのだろうか


僕はなぜそう言ったのだろうか


君は嬉しそうに笑っていた






どうにでもできるその子との関係。

曖昧にしたまま心を隠せるし、話すこともできる。今からでもやり直せる。

そういう自由を目の前にして、

選択肢を並べて、サイコロを振って、

進むマスを決めて、進むことができる。それが覚悟で、それが勇気なのかな。

過去の後悔は今からでも断ち切ることができることもあるような、

そんな気がしました。

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